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#ダークエルフ王国見聞録 その18

著者 へどばんさん pixiv版(https://www.pixiv.net/series.php?id=823771) 柘榴石の首飾りのはなし 鳥獣のはなし 海水浴のはなし
ダークエルフ王国見聞録
dero_ichi 12572view 1コメント
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  • 柘榴石の首飾りのはなし

  • へどばん @Ero_Thrasher 2017-09-02 20:24:34
    納税のために氏族長の町へと出向き、収穫祭を終えてしばらく経ったある日の遅い夜、私はセラの家の居間の端にある机に向かっていた。里長から頼まれていた村史の編纂作業が佳境を迎え、里の者達から聞いた様々な伝承や家系のことを取りまとめていたのである。 #ダークエルフ王国見聞録
  • へどばん @Ero_Thrasher 2017-09-02 20:24:48
    興味深いことが数多くあり、また誇らしげに語られた縁起の整合性を考える必要もあり、これを取捨選択する作業には苦労した。疲れた頭を冷めさせようと、紙束が積まれた机の上にある玻璃の杯を取って中の果実酒をちびりと飲み込む。果実の甘味と香草の香りが口に広がる #ダークエルフ王国見聞録
  • へどばん @Ero_Thrasher 2017-09-02 20:25:01
    滞在中の食事は、里長が工面し、居候先であるセラの家の長、つまり里の郷士長であるフェラフェレスに面倒を見て貰っているのであるが、流石に酒類を無料で貰うわけにもいかず、持ち込んだ金貨や銀貨を用いて時に分けて貰い、時に双子に頼んで町から仕入れて貰っていた #ダークエルフ王国見聞録
  • へどばん @Ero_Thrasher 2017-09-02 20:25:19
    「まだ、起きているのか。仕事熱心は感心だが、早く寝ろ。それに今日も酒など飲んで・・・。体に毒なことばかりではないか」 既に床に就いていた家人達であったが、寝床から薄布の寝巻であるセラがこちらに近づいてそう注意する #ダークエルフ王国見聞録
  • へどばん @Ero_Thrasher 2017-09-02 20:25:34
    起こしてしまったであろうかと詫びると、「そうではないが・・・」と眉をしかめて応え、こう続ける 「ともかく、我々の言葉で“家の床に根を生やす者は枯れる”と言う。明日は私と妹に付き合って沢に釣りに来るといい。出発は朝早くだ。だから早く寝るといい」 #ダークエルフ王国見聞録
  • へどばん @Ero_Thrasher 2017-09-02 20:25:52
    その日に片づけるべき作業はまだ残っていたが、セラがそのように言うのであれば従わざるを得ず、机の上の蝋燭を消し、燭台の灯りを頼りに私の寝床へと潜り込む。それを確認すると、セラは灯りを消し、私の隣の寝床でもそもそと毛皮を動かす気配をさせて再び眠りについた #ダークエルフ王国見聞録
  • へどばん @Ero_Thrasher 2017-09-02 20:26:05
    あくる朝、山行の支度を整えたセラとその妹であるアクゥイラに連れられ、私も釣竿を持って里の東に広がる山地へと沢伝いに入っていく。この沢は里の西を流れる川に流れ込む沢の中でも大きいもので、この沢にも山々から小さな川が流れ込むのだそうだ #ダークエルフ王国見聞録
  • へどばん @Ero_Thrasher 2017-09-02 20:26:18
    渡された釣竿は、薄く削ったしなやかで長い木の枝を手元側では複数重ね合わせ、先に行くほどその枚数が少なくなって細く削られたもので、柔らかく、かつ良くしなる六尺程のもので、そこから馬の尻毛を縒り合せて糸の先に細いテグスが結ばれたものであった。 #ダークエルフ王国見聞録
  • へどばん @Ero_Thrasher 2017-09-02 20:26:36
    糸には重りや浮子はついておらず、鳥の羽根や羊毛を加工して色鮮やかな羽虫の様に魅せた毛針のみが結ばれていた。ダークエルフ達の言葉で“デ・カエリヨ”と呼ばれる鱒釣りのための仕掛けであり、糸の重さだけで毛針を、竿を振った先に送り込む釣り方である #ダークエルフ王国見聞録
  • へどばん @Ero_Thrasher 2017-09-02 20:26:50
    セラが山渡りに長けていることはこれまでに狩猟に同行して良く知っていたが、元は病弱であったというアクゥイラも軽々と岩や木を伝って沢を上がっていき、魚が居そうな場所へと次々と毛針を打ち込んで、十回に一度程の割合で氷雨鱒や銀岩名を釣り上げていく #ダークエルフ王国見聞録
  • へどばん @Ero_Thrasher 2017-09-02 20:27:07
    私は彼らに付いていくのが精いっぱいで、たまたま毛針を打ち込んだ先で釣れた高鮠数匹を得た程度であった。 「ふーむ、ニンゲンと言うのは不便なものであるな。童よりも山歩き・沢渡りの術に劣るではないか」 #ダークエルフ王国見聞録
  • へどばん @Ero_Thrasher 2017-09-02 20:27:24
    巨石の上から私を引っ張りあげるために手を伸ばしたセラが言う。彼女は私の魚籠を除くと、一瞬微妙な顔つきをしながら、 「なに、小さくとも高鮠は味が悪くない。よかったではないか。それより、沢の空気は美味いだろう。どうだ、元気は出たか?」 #ダークエルフ王国見聞録
  • へどばん @Ero_Thrasher 2017-09-02 20:27:41
    ぜいぜいと息を上げながら深呼吸してみると、森の中を漂う空気が清流に冷やされて肺腑に満ち、汗に濡れた肌を内側から冷やしてくれるようであった。セラの心遣いに礼を言うと、「何、客人に倒れられても気分が悪いからな」と言ってそっぽを向く #ダークエルフ王国見聞録
  • へどばん @Ero_Thrasher 2017-09-02 21:13:18
    その拍子に、セラが腰に巻いていた革帯から道具入れが零れ落ち、流れの段差の下側に落ちる。私はセラの手を放して、私が探してくると伝えて巨石に登らず川に入った。水飛沫が上がる段差に顔を付けると、道具箱が見えるが、その横には川床に丸く削られた窪地が見えた #ダークエルフ王国見聞録
  • へどばん @Ero_Thrasher 2017-09-02 21:13:30
    道具箱を川から取り上げ、再び川の中を除くと、その窪地の中には人頭大で長楕円形の鬼御影の石が嵌っていた。これを川床から取り出すと、その容積よりも軽い様に感じられる。これをしげしげと眺めていると、セラとアクゥイラが様子を見に上流側から降りてくる #ダークエルフ王国見聞録
  • へどばん @Ero_Thrasher 2017-09-02 21:13:49
    「私の道具入れは感謝する。しかし、その石はなんだ?そうは見えぬが、何か珍しいものなのか?」 セラの問い掛けに、これが落水で回転して川床を削り、自身も楕円の形になったが妙に軽いのだと伝える #ダークエルフ王国見聞録
  • へどばん @Ero_Thrasher 2017-09-02 21:14:08
    次いで、これを割れないかとセラに尋ねると、固そうな石であるなと言いながら、それを河原の石の上に置き、上から山刀の柄を叩きつける。すると、鬼御影の石が中央で割れ、その中から水と共に、長楕円形に磨かれた柘榴石が小さなものから大きなものまで零れ落ちてくる #ダークエルフ王国見聞録
  • へどばん @Ero_Thrasher 2017-09-02 21:14:23
    これは、書物で知るところの、甌穴というものであり、流れによって川床が石で削られたものである。たまたま、この穴には中に柘榴石の晶洞を持つ鬼御影の石が入り込み、おそらくはその裂け目から水が入ることで外側だけでなく、内側の柘榴石も回転し研磨されたのであろう #ダークエルフ王国見聞録
  • へどばん @Ero_Thrasher 2017-09-02 21:14:35
    おそらくは、この沢に流れ込む何処かの沢の近くに、火山の溶岩によって形作られるという鬼御影の鉱床の露頭が現れており、それが大雨による山崩れなどによって川に流れ込み、ここに至ったであろう。この甌穴と遠き場所から来たこの石の偶然の出会いが作り出した物である #ダークエルフ王国見聞録
  • へどばん @Ero_Thrasher 2017-09-02 21:15:02
    そのように説明すると、セラは零れ落ちた大小の柘榴石と私の顔を見比べ、 「学士殿はニンゲンと思っていたが、もしかしてドワーフの類なのか?い、いや、あのようなむさ苦しき種族に見えるという訳では無いぞ。あ、安心しろ」 と言う #ダークエルフ王国見聞録
  • へどばん @Ero_Thrasher 2017-09-02 21:15:16
    鬼御影の石がこれほど丸くなり、細かな日々が入って晶洞の中に水が沁みこんで中の柘榴石が丸く削られるまでどれほどの時を要したのであろうか。後に聞けば、柘榴石は蝋燭の炎に照らされて鮮やかに輝くことから、ダークエルフにとって炎と勝利を象徴するものであると言う #ダークエルフ王国見聞録
  • へどばん @Ero_Thrasher 2017-09-02 21:15:35
    おそらくはこの沢の全ての甌穴を探し、その中にある石を割ったとて、同じものは見つかるまいとセラに伝える。それを聞いて一瞬残念そうな表情を浮かべながら、 「お前の知識が役に立ったのだな。先程は侮ったことを言って悪かった」 と笑顔で頷く #ダークエルフ王国見聞録
  • へどばん @Ero_Thrasher 2017-09-02 21:15:53
    この柘榴石の玉を魚籠に詰めて、里に戻って里長に報告する。見つけた私に総取りする権利があるらしいが、居候として世話になっているため、一つの大粒以外は全てを里の為に使って欲しいと彼女に献上した。里長は後にあの沢を探らせたそうであるが、同じものは無かったそうだ #ダークエルフ王国見聞録
  • へどばん @Ero_Thrasher 2017-09-02 21:16:07
    私はこの大粒の柘榴石を世話になっているセラに上げることにした。里長に聞くと、里の男性で魔術に用いる装身具の細工を出来る男性が居るとのことで、彼に依頼して首飾りに仕立てることにした。ダークエルフにとって宝玉はしばしば魔術との関係性が強くあるのである #ダークエルフ王国見聞録

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