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BusterT @sdliztl
初めて見る人だ。……とても、普通のひとには見えない。かといってサーヴァントというふうでもない。なんだろう、この違和感は。 「ランチ一つ」、と彼が注文する時に人差し指をすっと伸ばしたとき、袖口からちらりと、ひどく爛れた肌が見えた。……ランチを頼んでいる場合なのだろうかこの人は。
BusterT @sdliztl
「すみません、その」 気が気でなくてつい声を掛けてしまった。しまった、と思ったのもつかの間、人懐っこい笑顔で彼は笑ってこう言った。 「ん?……ああ。見えちゃったか、失礼」 それはどこから見ても、痛みを我慢している人間の顔ではなかった。
BusterT @sdliztl
「見て気持ちのいいもんじゃないから隠したんだけど、まあ、見えたなら仕方ない。お詫びになにかおごるか」 「えっ。い、いいですそんなつもりじゃ」 「いーっていーって、自己満足なんだ。迷惑料だと思って貰っとけって、おれとしてはせっかく人と話もできるわけだし」
BusterT @sdliztl
「おれは“ウエダシンジ”。あんたは?」
BusterT @sdliztl
…… ひらりと手を振って――また袖口から爛れた肌がちらりと見えたのは考えないことにした――、立ち去る背中を見て、わたしは。 そのひとが、“にんげん”ではないことに気づいたのだった。
BusterT @sdliztl
(だって、あのひとは) (あの背中は――) (いばしょがないひとの背中だ)
BusterT @sdliztl
からんころん、とドアベルが鳴る。ちらりと視線を向ければ、雑談をしながら席を見繕う二人組。 「彼女さん、相変わらず活躍してるんだな」 「当たり前だろう」 会話もそこそこに、テーブル席に案内される高校生達の。片割れの横顔を見て、二度見した。 「(…………“あのひと”にそっくりだ!)」
BusterT @sdliztl
他人の空似とは思えない。姿もそうだが、声も笑い方もまったく同じだ。 凝視していては迷惑になるので、姿勢を直して前を向き、飲み物に口をつける。 ……あの人には、“あのひと”と同じような傷痕は見られなかった。 なにとはなしに聞き耳を立てる。……どうにも気になる。“あのひと”のようで。
BusterT @sdliztl
「そうそう、今度の旅行なんだけどさ。適当にパンフかっさらってきたから行き先決めようぜ」 「行動早くね?」 「行動力だけが取り柄だからな」 「つーか俺もパンフ貰ってきたんだけど」 「まじかよはえーよ」
BusterT @sdliztl
やいのやいのとドリンクを飲みながら旅行談義をする二人組の会話を聞いて、わたしはなぜか安心した。 ……“あのひと”とは別人だ、と思ったわけではない。むしろ、聞けば聞くほど“あのひと”にそっくりだ。 でも、あそこに座っている彼は。“あのひと”と同じかと思うくらい似ている彼は――
BusterT @sdliztl
「旅行なら土産も考えたいじゃん。おまえ彩さんになんか買わねーの?」 「当然買う」 「だよな。だったらそこも含めて選ぼうぜ」
BusterT @sdliztl
(……ああ。) (人間だ、あの人は)

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