@yearman 先生による、渡辺哲司(2010)『「書くのが苦手」をみきわめる:大学入学生の文章表現力向上をめざして』の解説
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渡辺哲司2010『「書くのが苦手」をみきわめる:大学入学生の文章表現力向上をめざして』という本を読んだのだけど,なぜこの本をチェックしないままでいたのだろう?という気分。初年次学生に対する調査と授業実践から,文章表現力の向上のための施策を述べている(続
2017-09-08 16:27:01まず書くのが苦手になのは誰か→理系>文系,国語入試なし>あり,男性>女性などが結果として分かった。特に上の3つの他に小論文の有無,研究者の著書を読んだかもある。
2017-09-08 16:29:37次に,「苦手」の正体を分析→苦手度の低い学生は構想と推敲で苦労するのに対して,苦手度の高い学生は執筆で苦労する。要するに苦手な人は構想をよく練らずに書き始め,書くことがなくなっていき結果として苦労する。
2017-09-08 16:32:06苦手意識は過剰か?→自己評価が低い。自分の文章と他人の文章を読むと自分の評価を一段と低くする。同じ文章を専門家が読んだときよりもそれは低い。
2017-09-08 16:33:24どういうレポートが「書けない」か?→大学で課されたレポートから「書きにくい」「困った」レポートの特徴を挙げさせたところ,「出題の意味が分からない」ものが特に目立った。これは要するに成瀬さん @ihuru09 さんたちの研究と同じく「論題」が重要と言うことを意味する
2017-09-08 16:35:52@ihuru09 この書きづらいものに共通しているのが「学生の自由度が高すぎる」ということ。これも成瀬さんたちとけっこう共通していると思う。引用(p.83)「大学教師はごく気軽に,慣習的なやり方でレポート課題を出す。一方の学生たちはその課題の意味が理解できず,困惑する」
2017-09-08 16:37:58@ihuru09 これに対して渡辺氏の挙げた対策は「出題の仕方を工夫し,正確な但し書きを付けたり,小問を設定する」「学生の理解を促すこと,具体的には,レポート出題時に意図や評価の観点・基準を示す」というもの。本質的に大事なのは説明をレポート執筆の前に行うこと
2017-09-08 16:39:35さて,実際に渡辺氏が授業で実践したのは,他者の目を入れる,要するにピアレビュー。一般的なレポートでのピアレビューではなく,匿名性にして同じペア(1つのレポートに付き3名がレビュー)で3回やる。2回目から評価者はけっこう工夫してくる
2017-09-08 16:42:34これをやると文字数が「自然に」増加する。第1稿を書かせるときに「制限字数に満たないからと言って文字を増やすための操作はするな」と強く言ったので字数は少なめなんだけど,第2稿,第3稿と説明を詳しくするのに字数が増えたとのこと
2017-09-08 16:43:54あとは「マップ」と「アウトライン」を入れる。これらは一般的に大学初年次の文章表現科目でやられていることなんだけど,やはり教えると効果があるということ。それでもなお,「どうすれば良いマップが書けるか」ということを技術論的に解決するのは難しく,普段から考えましょうとしか言えない
2017-09-08 16:46:16総じて,レポートに関して担当者が抱えていた疑問を実証的に解き明かしたという点で非常に良書だと言えると思う。今度ひつじ書房から『ライティングの高大接続 ―高校・大学で「書くこと」を教える人たちへ―』という本が出た hituzi.co.jp/hituzibooks/IS… のでチェックだね
2017-09-08 16:48:49注意が1つあるとすると,調査対象は九州大学の学生で,同じ結果がいわゆる「よくない」学校なんかで出るとは限らないこと。特に書く以前の問題が増えてくるように思う(了)
2017-09-08 16:49:58