犬シリーズ③【ダメ犬】

ぺちか @pechika_udon

【ダメ犬①】 ウチにいるのはダメ犬。 『電話鳴ってんで〜』 着信を告げるスマホを片手にたぁくんがキッチンにやってきた。 「ありがと」 それを受け取って通話状態にする。 相手は職場の先輩で。 「お疲れ様です。どうしたんですか？」 休みなのに珍しい。 #犬シリーズ

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【ダメ犬②】 先輩からの電話は付き合ってる彼氏さんの誕プレを一緒に選んでほしいとのこと。 「あー、成程。いいっすよ〜」 待ち合わせの場所や時間を決めて、電話を切る。 『どっか出かけるん？』 「うん。先輩の買い物の付き添い」 『...ふぅん』 #犬シリーズ

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【ダメ犬③】 「何？」 『何でもなーい』 何か言いたそうな顔をしとるのに、聞いても答えない。 ...なんかムカつく。 放っといて出かける準備をすることにしよう。 「そしたら行ってくるわ。そんな遅ならんと思うけど...」 『はいはーい。行ってらっしゃーい』 #犬シリーズ

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【ダメ犬④】 ...何やろ。何かむかむかする。 久しぶりの休みなんやし、もうちょっと一緒におりたがってくれてもええんちゃう？ 何でそんなにあっさりしてんの？ 自分で出かける約束をしたくせに勝手なんはわかってる。 でももう少しぐずってほしい。 ...なんて我侭？ #犬シリーズ

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【ダメ犬⑤】 先輩と合流して、彼氏さんの誕プレを選ぶ。 いろいろ悩んだ結果、シックでカッコいいキーケースが見つかってそれに決めた。 先輩が会計してる間、商品を見て回る。 「...あ」 見つけたのはシンプルな皮のキーチェーン。 ...好きそうだな。 #犬シリーズ

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【ダメ犬⑥】 お礼にってご飯までご馳走になって、先輩とは別れた。 時計を見ればそこそこいい時間。 スマホを見てみても、たぁくんからの連絡は一切ない。 ...何か虚しい。 束縛してほしいわけとちゃうけど、もう少し気にしてくれてもえぇんちゃうの？ #犬シリーズ

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【ダメ犬⑦】 このまま帰るのは何か癪に障る。 ...よし。どっか飲みに行こう。 くるり、と踵を返して近くの居酒屋に向かう。 どれぐらい飲んでたやろう。 さすがにそろそろ帰らんとヤバいよなぁ。 スマホを見てみるけど、やっぱりたぁくんからの連絡は一切ない。 #犬シリーズ

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【ダメ犬⑧】 「ただいまー」 玄関から声をかけてみても返答すらない。 さすがにムカついて、どかどかとリビングに向かう。 「ただいま！」 『あ、おかえり～』 のんびりとした声に私のイライラはMAX。 「何なん！？遅くなっても心配の一つもせぇへんの！？」 #犬シリーズ

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【ダメ犬⑨】 酔いに任せてたぁくんに文句を言う。 「たぁくんのあほぉ！」 ぺし、と手にしてた紙袋を投げ付けて、寝室に引き篭もった。 ばたん！とドアを閉めて、ずるずるとその場に蹲る。 ...やってしもた...。 でも、私は悪くない！...はず。 #犬シリーズ

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【ダメ犬⑩】 『みぃ？』 暫くしてたぁくんが声をかけてきた。 『何で俺が怒られてんの？先に出かける約束したんお前やん』 ...何よ、謝るんちゃうんか。 そりゃ約束したんは私やけどさ。 『しかも先輩相手やのに俺が我侭言えるわけないやろ』 う...その通り。 #犬シリーズ

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【ダメ犬⑪】 「...それでももうちょい心配してくれてもえぇんちゃうの？」 『心配せんかったわけちゃうけど、俺が逆の立場やったら嫌やし、お前もそうかなぁって思ってん』 ごめんな？と謝るたぁくんに、逆に自分の我侭が恥ずかしくなる。 ...子どもか。 #犬シリーズ

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【ダメ犬⑫】 そっとドアを開けると、そこにはニヤついたたぁくんの姿が。 『やっと顔見れた』 「...たぁくんのあほ」 『はいはい。俺が悪かったですよ〜』 たぁくんに抱きついて、頭をぐりぐりと擦り付ける。 これじゃどっちが飼い主かわからんやん。 #犬シリーズ

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【ダメ犬⑬】 ウチにはダメ犬がおる。 マイペースで、自分勝手。 でもそんなたぁくんに振り回されてばっかり。 ...でもそれも幸せって感じてる私はもう手遅れなんやろうかw #犬シリーズ