- pechika_udon
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1 隣に立ちたい、なんて我侭は言わないから。 傍に居させて? 昼前の授業が休講になったから、学食で再来週から始まる実習用の名札を作る。 キャラクターものや動物もの。 どれが子どもたちの気を引くだろうか。 #近くて遠くてでも近い
2017-08-08 13:11:582 「茜、お待たせ!」 「あの教授、話長いねん!ほんま!」 「美香ちゃん、亮ちゃん」 暫くして、2人が(亮ちゃんだけだけど)教授の文句を言いながらやって来た。 美香ちゃんも亮ちゃんも専攻は違うけど、仲の良い友達だ。 #近くて遠くてでも近い
2017-08-08 13:14:193 因みに、美香ちゃんは亮ちゃんに絶賛片思い中。 私は2人が座れるように机の上を片付ける。 「これって今度の実習で使うヤツ?」 「うん。でもどんなのにしようか迷ってて、気付いたらこんななってたw」 机の上にはフェルトで作った名札が5つ。 #近くて遠くてでも近い
2017-08-08 13:16:124 実際に使うのは1つだから、こんなに作る必要ないんだけど。 「しっかし、相変わらず器用やなぁ」 「そんなことないって。これ簡単だもん」 「いやいや器用だよ。私には絶対無理だ」 美香ちゃんはクマの形をした名札を手に取った。 #近くて遠くてでも近い
2017-08-08 13:17:405 「このクマとか可愛い」 「可愛いっしょ?それ一番のお気に入りなんだ」 「茜はクマ好きやからな」 何故かにやにやする亮ちゃん。 ...何よ、その顔。 「アイツに似とるもんなぁ」 き、と亮ちゃんを睨むけど、どこ吹く風で笑ってる。 何よ、もう! #近くて遠くてでも近い
2017-08-08 13:20:166 「まぁまぁ。噂をすれば、だよ」 美香ちゃんの視線の先にいたのは1人の男子学生。 私の幼馴染で片思いの相手でもある忠義。 忠義は私たちを見つけると、笑顔でいる手を振ってきた。 #近くて遠くてでも近い
2017-08-08 13:22:357 「もー、みんな先行かんといてよ」 「しゃあないやん。教授に掴まるお前が悪い」 「え?また忠義何かしたの!?」 「また、とか言うな!何もしてへんわ」 忠義はサボったり居眠りしたり、提出物を忘れたりの常習犯だ。 だからしょっちゅう呼び出される。 #近くて遠くてでも近い
2017-08-08 13:25:088 「何もしてないんなら良いけど」 「まったく。お前は俺のおかんか」 「仕方ないでしょ。おばさんにも頼まれてるんだから」 「そんな俺の世話ばっか焼いとるからモテへんねん」 「うるさい!私は忠義みたいに遊ばないだけだもん!」 「俺は常に本気ですぅ」 #近くて遠くてでも近い
2017-08-08 13:27:079 そう。忠義は本当にモテる。 高校生のときから彼女が途切れたことがない。 まぁ、長続きしないんだけど。 「お前らの痴話喧嘩はどうでもええから、飯食おうや」 「お腹空いたぁ」 #近くて遠くてでも近い
2017-08-08 13:28:4110 亮ちゃんと美香ちゃんが呆れたように、私たちを見てくる。 「「痴話喧嘩なんかしてない!」」 私と忠義の声がきれいにハモった。 #近くて遠くてでも近い pic.twitter.com/rdcQkgqnWO
2017-08-08 13:30:0311 「茜、今日はどうする?」 「そうだなぁ...パスタな気分かな」 「おっけ。ほしたらスーパー寄って帰ろうや」 私たちは用がない限りどっちかの家で一緒にご飯を食べる。 基本料理を作るのは忠義だ。 ...悔しいけど、忠義の方が料理上手いんだもん。 #近くて遠くてでも近い
2017-08-09 06:24:4612 「茜、これ混ぜて」 「はーい」 忠義とキッチンに並んで立つ。 新婚さんみたい、なんて乙女なことを考えて嬉しくなる。 「おーい、手止まってんで」 忠義の声にはっとする。 いかんいかん。ぼーっとしてた。 #近くて遠くてでも近い
2017-08-09 06:26:3213 「ごめんごめん。これこんな感じでいい?」 「ん。じゃあ後は俺がやるから座っとってええで」 「うん。向こう片しとくね」 「頼むわ」 テーブルの上を片付けてたら、忠義のスマホが鳴った。 見るつもりはなかったけど、目に入ってしまったそれ。 #近くて遠くてでも近い
2017-08-09 06:28:3114 ...女の名前だった。 「茜?」 忠義が不思議そうに声をかけてきた。 「...あ、メール来てるみたいだよ」 「ほんま?誰やろ」 料理をテーブルに置いて、忠義はスマホを手にする。 「あ、カナちゃんや🎵」 #近くて遠くてでも近い
2017-08-09 06:30:5015 嬉しそうにスマホをタップする忠義を見ないように、料理を並べていく。 ...私がいるときに他の女と連絡しないでほしい。 なんて、口が裂けても言えないけど。 「お待たせ。したら食おうか」 「...うん」 その日の夕飯は何の味もしなかった。 #近くて遠くてでも近い pic.twitter.com/Vi2EYD0NSg
2017-08-09 06:37:1816 「言えばいいじゃん」 「言えるならとっくに言ってるっつーの!」 「だよねぇ」 そんなことが言えるならここまで拗らせてない! うぅ、と唸って机に突っ伏しす私を美香ちゃんはにやにやしながら見てくる。 #近くて遠くてでも近い
2017-08-09 19:01:2117 「...何?」 「いや、茜って可愛いなぁと思って」 「可愛くなんてなぁい...」 ぐずぐず言ってるとスマホが鳴った。 「大倉くん?」 「んな訳ないでしょ。同じ科の丸山くん」 とん、と画面をタップしてアプリを起動させる。 #近くて遠くてでも近い
2017-08-09 19:02:5118 『やっほー。丸ちゃんです🎵今レポート書いてんねんけど、ちょっとわからんとこあって。もしお暇やったらご飯奢るし、教えてくれへん?できたら今がええねんけど...』 うーん...今かぁ。 特に何もないし、いっか。 #近くて遠くてでも近い
2017-08-09 19:04:3519 『いーよ。その代わりA定奢ってね🎵』 『らじゃヾ(`・ω´・)ゞ』 らっき🎵お昼浮いちゃった。 「ちょっと行ってくるね」 「どしたの?急用?」 「急用って言うか、丸山くんがレポートで教えてほしいとこがあるらしいから行ってくる」 #近くて遠くてでも近い
2017-08-09 19:06:3620 「ふーん。行ってらっしゃい」 「あ、そのままお昼も丸山くんと食べるから、みんなに言っといて」 「え!?」 目を丸くしてる美香ちゃんに手を振って、私は丸山くんの待つ研究室へと向かった。 #近くて遠くてでも近い
2017-08-09 19:07:4821 「いやぁ、ありがとなぁ。お陰様でレポート進んだわ」 「いえいえ。お役に立てたなら良かった」 「役に立ったどころか、茜ちゃんは僕の救世主です」 「言い過ぎだって」 そこまで言われると、逆に恐縮しちゃうよ。 ご飯まで奢ってもらってるのに。 #近くて遠くてでも近い
2017-08-09 19:09:4222 「もうこの話は終わり!食べよ。冷めちゃう」 「そうやね。美味しいうちに食べよ」 私は丸山くんに奢ってもらった学食の一番人気メニューA定食を頬張った。 うーん、やっぱり美味しい。 「ところでほんまに良かったん?」 「何が?」 #近くて遠くてでも近い
2017-08-09 19:12:0323 「茜ちゃんていっつも人文科の人と食べてるやん?急に誘って大丈夫かな、て」 「あー、大丈夫だよ。絶対4人で食べる決まりがある訳じゃないし」 「そうなん?じゃあ時々誘うてもええ?」 「うん。いいよー」 「ほんまに?やった!」 #近くて遠くてでも近い
2017-08-09 19:13:5024 丸山くんは花が咲いたように笑った。 私なんかと食べるのってそんなに喜ぶこと? ...丸山くん、一緒にご飯食べるような友達いないのかな。 #近くて遠くてでも近い pic.twitter.com/HjnvFnkQtF
2017-08-09 19:15:5225 授業も終わって荷物を片付けてると、教室内が不意にざわついた。 何だろ? そっちに視線をやると、忠義が女の子たちに囲まれて立っていた。 「忠義!?」 慌てて駆け寄る。 忠義は私を見つけると、女の子たちに「ごめんなぁ」と優しく笑った。 #近くて遠くてでも近い
2017-08-11 19:27:35