日向倶楽部世界旅行編第15話「トラック泊地・殺人スパイダー恐怖の砲撃」

トラック島の下水道に迷い込んでしまった那珂と提督、とてつもない化け物の気配を感じつつ二人は下水道を進んで行く…
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三隈グループ @Mikuma_company

【前回までの日向倶楽部】 扶桑です、まだ私たちのお話ではないようですね、何々… 「休日を満喫する那珂は、途中で会った提督とともに百貨店で服を購入する。 上機嫌で帰る二人、だがその途中誤って下水道に落下してしまい、二人はトラック島の地下に迷い込む事となる…」

2017-09-19 21:30:18
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日向倶楽部 〜世界旅行編〜 第15話「トラック泊地・殺人スパイダー恐怖の砲撃」

2017-09-19 21:30:40
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〜〜 下水道に迷い込んだ那珂と提督は、ぼんやりとした灯りに照らされつつ、明らかに普通ではないそこを慎重に慎重に進む。 その道中には大小様々な蜘蛛の巣や砕かれた石、ひしゃげた金属製品など、何者かが巣食っている痕跡が大量に残されていた。

2017-09-19 21:31:20
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「ん…?アルミ缶の破片だけが落ちてる…こりゃどういうこった。」 提督は落ちていたアルミ缶を手に取る、上部だけが残るそれは、故障したプレス機に潰されたような形となっていた。 「こっちには針金が落ちてるな…」 考証するかのように彼は落ちてるものを片っ端から調べる。

2017-09-19 21:32:08
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「…虫は大騒ぎするのに、ゴミは平気なんですね。」 「落ちてるゴミとか放っとけないからさ、慣れちゃった。」 警戒しつつ尋ねる那珂に彼は笑って応え、再びゴミへと視線を移す 「しかし、さっきから空き缶ばっかりだな…」 彼の言う通り、辺りには缶の残骸ばかりが転がっていた。

2017-09-19 21:33:10
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「ペットボトルもあるけど、空き缶に比べるとノータッチで綺麗なんだよな…」 ペットボトルも落ちているには落ちていたが、砕かれたり変形したりした空き缶と違いそのままの状態で落ちている。 まるでゴミの仕分けがされたように、この下水道では缶とペットボトルで扱いが違っていた。

2017-09-19 21:34:09
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そんな事を気にしつつ歩いていると、突然那珂が足を止めた 「うわどうしたの」 勢い余ってぶつかりそうになる提督を彼女は制する 「…見て、あれ。」 「ん…?」 提督は鉄パイプで指された方に目を凝らす、そこには何やら大きな影が鎮座していた。

2017-09-19 21:35:11
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「なんだアレ…」 そこにあったのは人の全長ほどもある蜘蛛のシルエット…を綺麗にかたどるように広がる大量の砂であった。 「砂のアート…誰かのアトリエか?」 「それなら良いんだけどね…」 冗談交じりに二人は砂を手に取る、それは黒くザラザラとしていた。

2017-09-19 21:36:08
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「…これどう思う?」 「何かいるか、何かいたか、って話だよな…」 問答をしつつ二人は水音だけが聴こえる下水道の奥をじっと見つめる、那珂は振り返らずに言った。 「…離れず着いて来て下さいね。」 提督はそれに短く答え、歩き出す彼女の後ろにくっついて行った。 〜〜

2017-09-19 21:37:05
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〜〜 二人は再び下水道を進んで行く、ところどころに仕掛けられた糸を避けつつ、払いつつ、その地下迷宮を進んで行く。 そんな時、提督が那珂に声をかけた 「見て見て」 「…何ですか、それ?」 「さっき拾ったんだ、俺じゃ扱えないからさ。」 彼の両手には一本の斧が握られていた。

2017-09-19 21:38:06
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「…災害用の奴だね、ありがとう。」 那珂は鉄パイプを左手に持ち替え、右手にそれを握りしめた。 「ふふっ、お洋服を買ってもらった日に、こんな斧までもらうなんて楽しいね。」 「ハハハ…使う機会が無い事を俺は祈ってるよ…」 「そうだね…!」 軽口を叩きあっていたその時!

2017-09-19 21:39:01
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「…静かに。」 突然那珂が提督の口を塞ぐ、塞がれた彼は眉一つ動かさずに黙った。 「何か…聴こえる…」 那珂は数多の戦いで鍛え抜かれた聴力を研ぎ澄ませる、水音以外に微かながら何かの音が聴こえるのだ、上を通る車でも、物が落ちる音でも無い、それは何か不規則な、生き物の音!

2017-09-19 21:40:06
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音は下水の中で反響し合い、その場所までは分からない、しかし何かが居る! 「…!」 やがてそれの場所に那珂は気付いた!気付き、思案し、提督の目を見て言った! 「…走って、振り返らずに、私の背中だけ見て走って。」 「もご…!」 返事を聞くと、彼女は彼の口から手を離す。

2017-09-19 21:41:07
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そして次の瞬間、那珂は大げさな動きをしつつ走り出した!提督も指示通り走り始める!彼女の背中だけを見て! 「コォォォ…」 同時に空気が筒を通り抜けるような、幽霊の吐息のような音が響き、何かの足音が背後から聴こえ始めた! 「那珂!もしかして…」 「良いから走って!」

2017-09-19 21:42:07
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二人は下水道の中をひたすらに走る!落ちているゴミを蹴散らし、水を弾き、下水道を走る! 「左に行くよ!」 「分かった!」 那珂は来た道を遡るように走る、仕掛けられていた糸は行きがけに崩してある、逃走経路には最適の道! だが追跡者の音は鳴り止まない、来ている!後ろに!

2017-09-19 21:43:07
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遂に二人は落ちて来た場所まで戻って来てしまった!だが追跡者は未だ健在! つまり彼らは、未知のエリアへと足を踏み入れることとなる! 「那珂!今後ろから来てるのって、デカい蜘蛛なんだろ!?」 「見たら貴方は腰を抜かす!そして転ぶ!だから余計なこと考えないで!」 「確かに」

2017-09-19 21:44:05
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やがて丁字路に来た時、曲がり角で那珂は振り返り、提督の肩を掴んで壁に押し付けた! 「…!」 彼は彼女を信頼していた、だから瞬時に理解し、口を閉じ、その場に止まった! それを見て那珂は頷き、持っていた鉄パイプを丁字路の反対側へと勢いよく投げた!

2017-09-19 21:45:25
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投げられた鉄パイプは宙を飛び、先に仕掛けられていた糸を、蜘蛛の巣を突き破る! 那珂は提督に目を閉じさせ、静かに分かれ道を見つめる、直後に人の二倍はあろうかという巨大な蜘蛛がそこへ現れた! 「コォォ…!」 蜘蛛は迷う事なく鉄パイプの飛んで行った方へ、二人の反対へと進んで行った…

2017-09-19 21:46:12
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蜘蛛が離れた事を確認すると、那珂は提督に目を開けさせた。 「振り切れたみたいだな…」 「まだだよ、動けばあいつはこっちに来る…」 彼女は静かに蜘蛛の糸を指差す 「蜘蛛は目が弱くて、糸に伝わる振動から獲物を感知する…」 その言葉の意味を理解し、提督は溜息をついた。

2017-09-19 21:47:15
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「ハァ、この下水道自体があいつの巨大な巣って事か…」 「途中に仕掛けられてた巣で侵入者を捕らえるか感知するか、そんなライフスタイルだろうね…」 小声で話しながら那珂は斧を強く握り締める、遅かれ早かれ奴と再会する事は間違いなく、二人は早急に手を打つ必要があった。

2017-09-19 21:48:14
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「どうする、マンホールを探す?」 そう言って提督は下水道の先を指差す、だが那珂の首は横に振られた 「放って置けないでしょ?」 「まあ、そう言うよな…」 二人は確認を取るように淡々と言葉を交える、ここの異変に気が付いた時からこうなる事は大体分かっていた。

2017-09-19 21:49:17
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那珂は斧を持ち直し、度の無い眼鏡を外して提督に渡した。 「奴が出たらなるべく離れてね。」 足手まといになるな、至ってシンプルな彼女の指示に提督は頷く 「気を付けてな。」 「ふふふっ…」 二人は縦に離れて並ぶと、ゆっくりと慎重に蜘蛛の後を追い始めた。 〜〜

2017-09-19 21:50:19
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〜〜 「…居たね」 一際多く糸が張り巡らされ、辺りには空き缶の破片や石ころが散乱している、そんな場所に蜘蛛は居た。 「あいつ、空き缶食ってやがる…そういう事だったのか…」 提督は不快感を堪えながら呟く、彼の言う通り、その怪物は空き缶や鉄パイプをせわしなく口元に運んで居た。

2017-09-19 21:51:08
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「随分な悪食だよね…さて。」 まずは巣から蜘蛛を誘い出さなければならない、敵のホームグラウンドで戦う訳にはいかないのだ。 故に那珂は左手に鉄パイプを持ち、それを壁に叩きつけた、カーン!カーン!鐘を叩くような心地よい音が下水道内に木霊する。

2017-09-19 21:52:14