ブラインド・ボトムズ #3(再放送)(完結)

神通さんは今日も元気に中破浴衣姿で魚雷投げてます 2:https://togetter.com/li/1152928
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劉度 @arther456

【ブラインド・ボトムズ】#3

2017-09-22 21:01:24
劉度 @arther456

(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss をお使いいただけると大変ありがたいです。忙しい方はtogetterまとめ版をどうぞ。それでは暫くの間、お付き合い下さい)

2017-09-22 21:02:08
劉度 @arther456

軽巡棲姫は敵を探照灯で照らし続けていた。敵は白昼同然に照らされ続けているが、彼女には見えていない。両目は分厚い装甲に覆われている。彼女が頼りにしているのは、調整された聴覚、艤装の複合センサー、そして背後の指揮官から送られてくる観測データだ。1

2017-09-22 21:03:12
劉度 @arther456

目は見えなくていい。何も見ずとも瞼の裏には、敵で溢れる赤い海が焼き付いている。何十、何百と倒し続けても、なおも迫り続ける敵。「もう、来なくていいのに……何で来るの……ッ!?」ここで自分が踏み止まらなければ、後ろにいる提督が危ない。軽巡棲姫は歯を食いしばる。2

2017-09-22 21:06:05
劉度 @arther456

背後で空気が掻き乱された。振り返った軽巡棲姫は、自身に向かって突き出された、高い魔力を備えたナイフを左腕で受け止める。「何ッ!?」驚愕した敵の声が聞こえた。探照灯の外の闇に紛れて不意打ちをしようとしていたようだが、目の見えていない彼女には通用しない。3

2017-09-22 21:09:08
劉度 @arther456

右手で敵を殴りつける。「くっ!?」確かな手応え。水面を跳ねる音。まだ沈んでいない。これだけ近くにいるなら、艤装のセンサーだけで正確に位置を割り出せる。左手の副砲を向け、斉射!だが敵はそれを避ける。魚雷の投下音。軽巡棲姫はその場から動き、放たれた魚雷を避ける。4

2017-09-22 21:12:06
劉度 @arther456

動きの軽やかさ、そして魔力からして相手は駆逐艦だ。不意を突ければ軽巡棲姫も危なかっただろうが、こうして真正面から向かい合えば、負ける要素はない。「逃がさないわ」駆逐艦の周囲に砲弾をばらまき、身動きを取れなくさせる。「貴方の帰り道は無いの……もう無いのよ!」5

2017-09-22 21:15:11
劉度 @arther456

「逃げるつもりはありません」着弾音の中に、敵の声があった。「不知火は、貴方を確実に仕留めます」その高慢な物言いに怒りを覚える程度の自我は、軽巡棲姫にはまだ残っていた。「生意気な……少し、教育が必要ね!」足を止めた相手に向け、必殺の酸素魚雷を放つ!6

2017-09-22 21:18:03
劉度 @arther456

敵の方から重い水音が聞こえた。また魚雷を放ったのか。刺し違えるつもりだろう。軽巡棲姫は魚雷を避ける。そして爆発音。魚雷が敵の足元で炸裂――。「いや、違う!?」着弾には3秒早い。迎撃された。咄嗟に身構えた軽巡棲姫は、自身に飛来する金属体をセンサーで感じ取った。7

2017-09-22 21:21:22
劉度 @arther456

人一人が入りそうな大きさ。艤装、あるいは何らかの新兵器か。構えたままそれに向けて主砲を放つ!砲弾は狂いなく金属体の中心を貫き、そして巨大な熱量が眼前に出現した。「なっ!?」爆発、それも自身の砲弾のものではない。戦艦の燃料庫を撃ち抜いたかのような大爆発だ。8

2017-09-22 21:24:05
劉度 @arther456

軽巡棲姫がその目を開いていたのなら、何が起こったかは一目瞭然だろう。魚雷を吹き飛ばし、軽巡棲姫に投げつけられたのは、燃料を満載したドラム缶だった。魔力により容量を拡張させたドラム缶には、見た目の数十倍の船舶用燃料が詰め込まれていたのだ。9

2017-09-22 21:27:02
劉度 @arther456

そして爆風を、熱と音の壁を突っ切って、不知火が軽巡棲姫に躍りかかった。その時、軽巡棲姫の身を反らせたのは、蓄積された戦闘経験か。それとも勘か。弧を描いて降ろされた刃は、しかし軽巡棲姫の心臓を突き刺すには至らず、その目を覆う装甲を切り裂くだけに留まった。10

2017-09-22 21:30:16
劉度 @arther456

目は露わになったが、軽巡棲姫はなおも固く目を瞑る。見る必要はない。次々と繰り出される刃を、音で、肌で、神経で感じ取る。見たくない。自分が本当に相手をしているものが何で、今自分がどうなっているのか。閉じた視界を守るため、拳を敵に振り下ろす!11

2017-09-22 21:33:15
劉度 @arther456

体が浮いた。腕を掴まれた、と思った時にはもう投げ飛ばされ、海面に背中を叩きつけられていた。追撃が来る前に転がり、振り下ろされたナイフを避ける。起き上がりながら足払いを放つが、敵はこれを避ける。立ち上がり、顔に向けられたナイフを右腕の艤装で受け止める。12

2017-09-22 21:37:12
劉度 @arther456

鍔迫り合いになった。駆逐艦と軽巡、機関には差があるはずなのに、相手は一歩も引かない。だが軽巡棲姫も引くわけにはいかなかった。後ろにある指揮艦を守るために。「……え?」疑問が頭をよぎる。センサーにはそんな船は映っていない。なら、自分の指揮艦は?13

2017-09-22 21:39:03
劉度 @arther456

《アロー、アロー、神通ちゃん?》頭の中に知らない声が響いた。「誰!?」《あれ?……あー、頭のアレ、外れちゃったのか。ま、丁度いいか》敵と刃を交える軽巡棲姫は、困惑の極みにあった。初めて聞くはずの声なのに、まるで違和感を感じないほど聞き慣れている。14

2017-09-22 21:42:06
劉度 @arther456

《僕たちはこれから撤退するから、最期までそこの輸送部隊を攻撃し続けてね。期待してるよー》「何ですか!あなた、誰なんですか!?」頭の中で何かが切り離される感覚。それっきり、声は聞こえなくなった。そして、送られていた指揮艦からの観測データも。15

2017-09-22 21:45:05
劉度 @arther456

目の一つを失い、軽巡棲姫の動きが鈍る。脇腹をナイフで切り裂かれる。だがそんな事は彼女にはどうでもよかった。指揮艦はどうなったのか。護衛の僚艦たちはどうしているのか。彼女が慕う提督は。真後ろにいるはず。振り返った軽巡棲姫は、その目を開いて船影を探そうとした。16

2017-09-22 21:48:02
劉度 @arther456

戦場はなく、黒い海が広がっているだけだった。視界の端、遠くで2隻の艦娘が戦っている。それを取り囲むのは、見たこともない深海棲艦。今しがたまで見ていたはずの、あの時の戦場も指揮艦もどこにもない。頭痛。封じていた記憶が、現実を目の当たりにして暴れだす。17

2017-09-22 21:51:02
劉度 @arther456

そうだ。戦いはもう終わっている。あの時指揮艦を沈めたのは――。全ての記憶が戻る前に、冷たい刃が彼女の心臓に差し込まれた。背後から不知火のナイフが、軽巡棲姫の心臓を貫いていた。「か、は……?」両腕がだらんと垂れ下がり、黒い艤装が滑り落ちる。18

2017-09-22 21:55:08
劉度 @arther456

体はとうの昔に冷えきっていた。深海の呼び声に苛まれながら、彼女は自分が提督を殺したという事実を上書きするために、瞼の裏に戦場を描き続けていた。それが何者かによって指向性を持たされ、艦娘だけを選んで沈めるようになったのはいつからか。沈む彼女には分からない。19

2017-09-22 21:57:07
Mustang @Mustang_72

そういえば「土方さんがなんでカーミラさんを口説いてるの?」という疑問がちらほら見られるけど、「燃えよ剣」の上巻に 「女は身分だ、高貴であるほどいい」という感じの信念が土方さんにあることが記されているので若干関係ありそうな気がする。あとおっぱい。

2017-09-22 21:59:05
劉度 @arther456

「以上が、コロネハイカラ輸送作戦の報告です。輸送中の戦闘により戦略物資を少々失いましたが、暫く攻勢を凌げるだけの物資は搬入できました。また、敵の棲姫を一体討ち、通商破壊部隊もこの海域から撤退したので、以後の輸送はもっとやりやすくなると思われます」21

2017-09-22 22:01:07