【不完全な人】福間健二 #k2fact176
彼女の詩、彼の詩。たくさん読んだ。仕事。それが仕事だという幸福を小雨くらいにしか感じない帽子をかぶり、ちょっと歩いて、倉庫で読んだ。亀がいて、お祭りに使ったわたあめの機械がおいてある。わたあめの機械さえあればなあ、などとぼくは思ったことがない。(不完全な人1)#k2fact176
2017-09-03 13:02:05三日分の食べものと旋律を確保しても。時速百キロで飛ばすトラック、その振動。争いがないという上佐幌地区も揺れた。わたあめの機械の出番、お祭りは八月十七日。去年も今年も雨が降って、お祭りは体育館でおこなわれた。子どもたちの花火だけは外で傘をさして。(不完全な人2)#k2fact176
2017-09-06 21:06:09生まれたばかりでもお母さんの乳房からミルクを飲まない仔牛たち。制度だ。はじまる。浮かぶ。生きのびて。彼女の詩のタイトル、三つ。終わりではないが、そこまで行けたらいいというもの。花火を怖がる子もいる。あの子。毎朝、気配を感じた。その声は鳥の声だ。(不完全な人3)#k2fact176
2017-09-09 09:41:41夢見たこと、その一部だけが実現して、ぼくを見ている黒い鳥の言うこと。どう理解するか。仔牛たちの、それぞれの屋根の下、それぞれの囲いからのヴァイヴレーション、さっきまで寝ていていまは起きて手持ちぶさたの彼女との共作だ。きのうよりはわかる気がする。(不完全な人4)#k2fact176
2017-09-10 11:40:29上佐幌地区、宇井農場のトウモロコシが届いた。ゴールドラッシュとピーターコーン。生のままかじってもおいしい。ぼくの表現はミニチュアの街を消去して、ゴールドとピーター、どっちが好きかを言っただけ。九月十一日だ。ニューヨークから友だちが来ていた。(不完全な人5)#k2fact176
2017-09-12 12:14:45死の知らせを受けた坂道から見た西の空。ほらっ、いろんな雲。夜、外に出て回復するものとそうじゃないもののミックス。だれかの計算どおりのすれちがいというのはくやしいから、少し演技する。海に、石。九月十二日、瀬戸夏子とヴァレリー・ジューンを発見した。(不完全な人6)#k2fact176
2017-09-13 12:33:37さかさまに置いた。青い、意外な積極性。ゴミを少なくする努力、いまさらかと思いながら、したいことをはっきりさせるためには必要だ。きちんと座りなおしてから立つ。電車とモノレールで通夜に行き、立ち飲みに寄り、最後はバス。ステレオフォニックスを聴いた。(不完全な人7)#k2fact176
2017-09-15 10:44:28ゆるい球、取ればいいだろう。想像ではなく生きている両手で。たとえば北海道の新得に行って帰ってきた。信じないか。新得でも、東京に戻ってからも、興奮が残って眠れなくなるような仕事。久しぶりに、それも二つ。このくらいの味。これ以上濃すぎない方がいい。(不完全な人8)#k2fact176
2017-09-21 15:04:28人のスマホの明かりで。簡単には潜れないゲートをなんとか潜った先の、黄色いマルと白い線。その繰り返しがかすれながら歌を追っている。人のサイコと旅した。だれの歌。どの橋の上からか。破滅型、正岡容を発見。仕事のジャマになったが、容は「いるる」と読む。(不完全な人9)#k2fact176
2017-09-22 09:31:45不完全な人。そう言われてもいい。同じところをグルグルまわっている。歌えない自分と置き換えた黒い涙のせいで、内側ではゆっくりと死にながら。生きていること、それ以上にすばらしいことはないと言いつづけて。不完全な人。いつも、やりのこしたことがある。(不完全な人10)#k2fact176
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