みえちゃった。

はち公。 @funkastic_8er

1 33歳。 5歳の男の子を持つシングルマザー。 主人は息子が2歳の頃 交通事故で死にました。 ────が なんて言うのかな 彼がいなくなった気がしないのは 彼がみえちゃった からかなw #みえちゃった pic.twitter.com/kbZPd2I0NA

拡大

はち公。 @funkastic_8er

2 「ヒロ！起きなさい！」 私の朝は5時半から始まる。 早く起きて洗濯して 寝起きの悪い息子を起こして 朝ごはん食べさせて 保育園に行く用意をさせて それから･･･ 「あー！ヒロ！ パパに挨拶！」 物言わぬ仏壇の前で 手を合わせる それが･･･日課 #みえちゃった

はち公。 @funkastic_8er

3 仕事は9時から5時までの フルタイム 家に帰れば またご飯を作ってお風呂入れて 寝かしつけて 「やっと終わった･･･」 そんな毎日 ────そんな中での楽しみは2つ ひとつは 『お疲れさんw』 夜ひとりになると 見えちゃう･･･彼 #みえちゃった pic.twitter.com/hmjMChF11i

拡大

はち公。 @funkastic_8er

4 「信ちゃん･･･また出てきたん？」 『だってお前働きすぎやもん』 「ヒロの為だよ」 『息子の為に命すり減らすおかん。 未来尻すぼみやんかw』 「あんたねぇ･･･」 『あ、そか。俺が死んだからねw』 もう･･･笑えないっつーのw #みえちゃった

はち公。 @funkastic_8er

5 旦那の信ちゃんは 息子のヒロが2歳の時 事故にあいそうだった 小さな子を守って･･･死んだ 『不可抗力やわw』 夜な夜な現れては そう言うから もう、許すしかないじゃないw 「信ちゃん、今夜はずっといてね？」 『なんか･･･あったん？』 #みえちゃった

はち公。 @funkastic_8er

6 「仕事でねー」 『そか。おるおる。 話聞くしかできひんからw』 情けなさそうに笑う それ見たらなんか申し訳なくて 空いたグラスに 飲んでたビールを注いで 「どーぞ」 『飲まれへんけど』 「いいの。気分だけ」 『はいはいw』 ･･･ありがとう #みえちゃった

はち公。 @funkastic_8er

7 ･･･亡くなった後も 私が疲れてる時や 辛い時 信ちゃんが現れた。 最初は信じられなかったけど 次第に･･･それが普通になってて 「信ちゃん？」 『はーい？』 そのやり取りをするだけで 疲れは吹き飛んだし 愛を･･･感じたんだ #みえちゃった

はち公。 @funkastic_8er

8 だけど そんな日々に もうひとつ 贅沢な幸せが増えた。 ────会社の隣にあるコンビニ 毎朝そこで カフェラテ買うのが日課 決まった時間に行くと 《あ！いらっしゃいませ！》 いつも笑いかけてくれる その人･･･ 《おはようございます！》 #みえちゃった pic.twitter.com/uJ8ZVZdLmD

拡大

はち公。 @funkastic_8er

9 彼、大倉くんと 何気ない会話をするのが ここ最近の日課で･･･ 《あれ？今日はなんか調子いい？》 「へ？」 《なんか、いいことありました？》 「あーw」 それは多分 昨晩 信ちゃんが来てくれたから 「ちょっとねーw」 《ふーん？》 #みえちゃった

はち公。 @funkastic_8er

10 《あ！そうや！これ》 大倉くんは 周りを確認してから 制服のポケットにあった 紙切れを私に渡す 《米津玄師のライブ チケット来たでw》 「ああ！」 《先渡しとくわw 絶対･･･一緒にいこーなw》 「あ･･･うん」 受け取る手が やたら重かった #みえちゃった

はち公。 @funkastic_8er

11 大倉くんと仲良くなったのは 彼のコンビニで 米津玄師のアルバムを 大人買いしたから 《好きなんスカ？》 初めてそう声をかけられた時 あまりにも急だったから 「す、好きっす」 そう答えちゃって そこからは チケット取るの協力し合う仲に･･･ #みえちゃった

はち公。 @funkastic_8er

12 （ハマっちゃダメだ） そう思ったのに たまたま息子と行ったTSUTAYAで 「《あ》」 出くわして 身の上話まで 話しちゃう始末 《苦労したんやね》 同情は嫌い だけど 彼の優しさは本物で･･･ 《ヒロくん！ おっちゃんと遊ばへん？》 #みえちゃった

はち公。 @funkastic_8er

13 連絡先を交換すると 毎週末 《ヒロくん！遊ぼー！》 息子と遊んでくれるようになった ･･･最初の頃は その介入が怖くて 断ったりもしたんだけど 〈ねぇママ！大倉！ 今度のおやすみ来る！？〉 無邪気に彼が来るのを待つ ヒロを見たら･･･無理だった #みえちゃった

はち公。 @funkastic_8er

14 そして･･･悲しい哉 次第に私自身も 彼に･･･大倉くんに 会える日々が楽しくなってきて 《･･･キスしてもいい？》 「え･･･」 《･･･嫌やったらええけど》 「ん･･･嫌じゃない･･･」 彼と初めてキスした夜は 家に帰るのが苦しかった #みえちゃった

はち公。 @funkastic_8er

15 そのうち 苦しくなってきた 「なんなんだろ･･･」 信ちゃんを失って 3年しか経ってないのに 「なんなんだろ･･･」 毎朝 彼以外の男の人に会うのを 楽しみにしていて 彼をもっと知りたいと 欲してる自分がいて 「情けない」 そして辛かった #みえちゃった

はち公。 @funkastic_8er

16 そんなある夜──── 「あ」 久しぶりに現れた信ちゃんは いつになく 真面目な顔をしていた 『おう』 「うん･･･」 『今夜は酒無しで ゆっくり話そうか』 「･･･うん」 嫌な予感しか しなかった･･･ #みえちゃった

はち公。 @funkastic_8er

17 『なぁ』 「ん？」 『お前の頭ん中 言い当てたろか？』 「･･･やだ」 『･･･』 「わざわざ当てなくていいよ」 『･･･いやでも、すまん。 言わせてw』 信ちゃんが 語りだす #みえちゃった

はち公。 @funkastic_8er

18 『単刀直入に聞くけど 好きな男･･･出来たんやろ？』 答えたく･･･なかった 『前に一回 この家きてたやんか』 いや･･･だった 『ヒロも よぉ懐いてたやんか』 「･･･やめて」 彼の口から 聞きたくなかった #みえちゃった

はち公。 @funkastic_8er

19 後ろめたくて 顔を上げられない私に 私に触れられない信ちゃんが 頭を撫でる仕草をする 『ええんちゃうか･･･？ その人と･･･歩んでも』 その声は 聞いたことないくらい 優しかった･･･ 『あの人なら俺 ええと思うわ』 「･･･やめてよ」 #みえちゃった

はち公。 @funkastic_8er

20 今にも泣きそうなのを 我慢してるのに 信ちゃんは･･･優し過ぎる 『なぁ･･･聞いて？ 俺はな？こんな風に 話は聞けるけど･･･ お前の頭ひとつ撫でてやられへん』 言葉が 苦しい 『ヒロの事も 抱っこしてやられへんし 寝顔にキスもできひん･･･』 #みえちゃった

はち公。 @funkastic_8er

21 『お前にもヒロにも ちゃんと触れてくれる 優しい手が･･･必要やと思う』 「信ちゃ･･･」 『ヒロがお前を クソババアとか言うても 俺は殴られへんからw 代わりに殴ってくれる そーゆう奴が必要やってw』 粗雑な言葉 でも 優し過ぎる言葉 #みえちゃった

はち公。 @funkastic_8er

22 『幸か不幸か？ 今夜が･･･俺が死んで ぴったり3年w』 「やだ･･･」 『区切りをつけるなら･･･今日やろ』 「やめて･･･」 区切りなんて 言わないで 『俺はもう、ここにはこーへん。 成仏して、次の人生送るから』 #みえちゃった

はち公。 @funkastic_8er

23 『いつまでも お前の愚痴聞いてるん しんどいからなw そろそろ生まれ変わって 乳児からやり直すわw』 「信ちゃん･･･」 私は･･･なんて答えたらいいの 「信ちゃん･･･っ」 泣けて 泣けて 言葉に ならない #みえちゃった

はち公。 @funkastic_8er

24 『おいおいw 最後の最後、泣き顔はやめぇよw』 そういう信ちゃんの目も 潤んで見えたのは･･･気のせい？ 『お前の泣き顔･･･弱いねんw』 私だって 信ちゃんのその顔･･･弱いよ 『とにかく･･･幸せになれ･･･な？』 「信ちゃ･･･」 #みえちゃった

はち公。 @funkastic_8er

25 『ほな。俺もう行くわw』 「信ちゃん！」 『達者でな！ 生まれ変わってどっかであったら！ ミニサイズの俺を笑えw』 「信ちゃん！！！」 ･･･ダメ元で背中に抱きつく その手が 非情にも 空を切る 「あ･･･」 信ちゃんは 悲しそうだった #みえちゃった