村上信五【バースデーの奇跡】

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えいと@ぱられるわあるど @BRPOBYG_eighter

(´Д`)【1】 今までで一番幸せだったバースデーはいつだったのか… それが、今日ではないことは確か。 祝ってくれる人がいないわけではない。 幼なじみだったり、学生時代の親友だったり、会社の同僚だっている。 男性もいれば女性もいる。 だけど、一番大切だった人は、ここにいない。

2014-02-20 23:23:22
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(´Д`)【2】 今までの人生で一番大切だった人。 心も体も何もかもが惹かれていた人。 本当なら、今日も隣りにいてくれていたはずの人が。 きっかけは、ほんの些細なことだった。 小さなすれ違いが積み重なって大きなヒビとなり、そして、壊れてしまった。

2014-02-20 23:23:29
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(´Д`)【3】 気づいた時には遅かった。 後戻りできない位に、何もかもが終わってしまっていた。 ずっと守っていきたかったのに、遠い存在になってしまっていた。 もう二度と戻れない、戻ってこない時の中にいる、大切な存在。 もし、奇跡というものがこの世にあるのならば…

2014-02-20 23:23:35
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(´Д`)【4】 重い足取りでたどり着いた自宅。 扉の前に何かが…誰かがいる? 誰が…いる? …期待してはいけない。 何度も「もしも」は繰り返された。しかし、それはことごとく裏切られ、その度に耐えきれない胸の痛みと苦しみに襲われた。 だから、期待してはいけない…

2014-02-20 23:23:43
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(´Д`)【5】 だけど、今日は「もしも」ではなかった。 ずっと心の底に押し込めていた存在がそこに立っていた。 思い出の中のそのままの姿で。 ただそれだけで、胸の中は喜びに溢れる。 体中が震えている。 なのに、言葉が、声が出てこない。 たった一つの音でさえも、声にならない…

2014-02-20 23:23:49
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(´Д`)【6】 彼は私を見つけると、静かに見つめてきた。 その視線に射抜かれる前に、私は目をそらし鍵を探す。 鍵を開け、彼に目をやると、何も言わず、彼は静かにドアをすり抜けて部屋の中に入っていく。 その緊張したような背中を見届け、ドアを閉じた。

2014-02-20 23:23:55
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(´Д`)【7】 部屋に置かれたテーブルを挟んで向かい合う私たち。 沈黙の時間だけが流れていく。 何も話さない… 何も話せない… どれくらいそうしていたのか、 「なあ…俺たちは、終わってしまったんか?俺は…お前の中で消えてしもうたんか?」 と、彼がつぶやく。

2014-02-20 23:24:01
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(´Д`)【8】 「何を…言ってるの?とうの昔に、終わってるんじゃないの?今さらそんな事…よりによって何で今日、そんな事を言い出すの?」 今まで何も言わなかったくせに… ずっと何の連絡もくれなかったくせに… もうこれ以上、私を振り回さないで。 あなたを思い出すのも辛いのに。

2014-02-20 23:24:07
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(´Д`)【9】 「今日やから…今日やからこそ、ここに来たんや」 そう言いながら、彼が私との距離を詰めてくる。 思わず後ろに下がった私は、壁に追い詰められていた。 「信五…」 「俺と二度と会いとうないなら、俺の目を見て、笑顔で『私は今幸せだから邪魔しないで』って言うてみ?」

2014-02-20 23:24:13
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(´Д`)【10】 黒く輝く瞳に捕らわれる。 その瞳に見つめられたら、必死で取り繕った結界は脆くも崩れ去ってしまう。 閉じ込めていた言葉が、想いが、こぼれ落ちてしまう。 「俺の目を見いや…何も迷うことはないやろ ?」 隠していたはずのものが引きずられて、暴かれていく。

2014-02-20 23:24:18
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(´Д`)【11】 「ずっと放っておいたくせに。好きなのに。愛していたのに。突き放されて、何を言っても届かなくて。大切だったのに、失くしたくなかったのに、私を置いていった。それなのに、今さらそんな事を言うなんてずるい」 言葉が溢れ出して止めることができない…

2014-02-20 23:24:23
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(´Д`)【12】 「その瞳で見つめられたら、嘘なんて言えない。幸せじゃないのに、大切な人がいないのに、幸せだなんて言えるわけない。でも…」 彼は静かに私を見ている。 「今だってやっとの思いで毎日過ごしているのに…考えないように、思い出さないようにしているのに…」

2014-02-20 23:24:30
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(´Д`)【13】 「もう一度、壊れてしまったら、突き離されたら、堪えられない…」 こぼれ出す言葉はとりとめもなく、まとめることもできずに… 今さら、こんなこと言っても、困らせるだけかもしれないのに。 それなのに、彼は幸せそうに微笑む。 瞳の輝きに、優しい光が加わる。

2014-02-20 23:24:34
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(´Д`)【14】 「俺、思い切ってここに来て良かった…そんな熱烈な告白聞けるとは思わんやった」 彼の顔が近づいて、唇を奪われる。 「お前と別れてしまってからも、俺の中にはおまえがおった。忘れようとしても、消してしまおうとしても、できんやった」

2014-02-20 23:24:39
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(´Д`)【15】 「俺だけやったら、と思ったら怖かった。お前が俺を忘れて幸せになっていたらと思ったら、ここに来られんやった。 でも、今日はお前の誕生日だったから、わずかなチャンスにかけてみようと思った」 もう一度、落とされる口づけ…

2014-02-20 23:24:44
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(´Д`)【16】 「もう離せへんな、二度と。俺は、お前と離れたことで、どんだけお前が必要なのか思い知った。だから、今日という日に、お前と改めて始めていきたい。ええよな?」 そう聞いたくせに、私の返事も聞かずに、唇を塞ぐ。 深くなっていく口づけに、何も考えられなくなっていく…

2014-02-20 23:24:49