<#26 「雪原の死闘②」>フォビドゥンフォレスト5話「選ばれし者、選ぶべき者」

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「#25 「雪原の死闘」<フォビドゥンフォレスト5話「選ばれし者、選ぶべき者」 >」をトゥギャりました。 togetter.com/li/1154702

2017-09-26 00:57:57
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フォビドゥンフォレスト5話「選ばれし者、選ぶべき者」 #26 「雪原の死闘②」

2017-09-26 23:22:29
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レベル4上空。 「チェアァッ!」 涼平が鳥型の妖怪へと鎖を振るう。鳥を切り裂こうとした先端の刃は、激しい揺れに宙を切る。 「ッ!」 涼平は鎖を捻る。軌道の代わった鎖が妖怪の頭を辛うじて打ち据える。頭蓋とくちばしを砕かれた妖怪はふらふらと落ちていく。だがまだ息はある。 1

2017-09-26 23:27:06
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このまま地上に激突すれば死ぬだろうが、今の仕損じは涼平らしからぬミスだ。本来なら両断死体を後続二羽にぶつけるのも容易だったろうが無理もない。彼は身体に巻いた鎖をガイアに持たせながら、時速数百キロで飛行する彼女と共に二十匹以上の妖怪を相手にしているのだ。 2

2017-09-26 23:37:18
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ただでさえ不自由な姿勢だがガイアは近距離を、それも人を掴んで飛ぶことに、涼平は空中戦に慣れていない。しかも、敵の奇襲で方向制御系を損傷したガイアは直進が出来なくなっている。百メートル前に行くのにわざわざ数倍の距離を左右に旋回する必要がある。まともに戦えたものではない。 3

2017-09-26 23:39:58
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敵はB級妖怪の飛杭鳥。羽と尾に対して異様に長い嘴は、その名の通りに杭や槍が飛んでいるかのような印象を抱かせる。尋常の鳥でいう肩の辺りから伸びる嘴が体長の半分以上を占めている。鋭い嘴で獲物を刺殺し、その付け根の無数の孔から血肉を啜る。その様は死の逆十字と呼ぶに相応しい。 4

2017-09-26 23:45:08
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彼らもバケグモなどと同様に冬に出るような妖怪ではない。というよりも冬に出る鳥型妖怪は少なく、大半はC級以下の雑魚ばかりだ。この前提知識と逸る気持ち、岩の砲撃への警戒が油断を誘ったのか……などと反省する余裕は今の二人には無い。ともかく、飛杭鳥の急襲に二人は完全に不意を突かれた。 5

2017-09-26 23:50:11
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ガイアは咄嗟に涼平と自身の中枢部を守るように動いたが、運悪く初撃で方向制御装置が故障した。旋回しつつ減速しての軟着陸を試みていたが、飛杭鳥の追撃は執拗だった。どうもかなり飢えている様子だ。今は迂闊に速度を落とせば囲まれるし、下手に加速すれば目的地から遠ざかってしまう。 6

2017-09-27 00:04:14
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事態を知らせる信号弾は撃ったが、救援を期待してのことではない。敵に近付けないということを知らせるためだったが、ここは雪原から数キロ離れている。信号弾が確認されたかは分からない。オトロシの位置は分かっている。北西の岩山沿いの広葉樹の辺りだ。先程から何度も接近を試みている。 7

2017-09-27 00:23:59
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既に三分以上経過している。この間にもオトロシは二度に砲撃を行った。特に一回目は凄まじい数の岩が放たれた。苦しい状況だがもう数分あれば、鳥を全滅させることは出来るだろう。しかしその間オトロシを放置すれば、雪原の被害がどれほど拡大するか分かったものではない。 9

2017-09-27 00:38:49
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意を決したガイアは、気流の音に負けぬように叫んだ。 「涼平!こうなったら貴方がキラッと先に行って下さい!」 「お前は?一人でコイツらを相手取るつもりか?」 「はい!むしろ一人でならズバッと強力な手段が取れます!」 涼平が沈黙したのは数秒。そして応えた。 「分かった!」 10

2017-09-27 00:53:33
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お互い、この状態では全力が出せない。別行動の方が良いのは最初から分かっていた。共に飛び続けたのは相方を一人にする不安も大きかったが、敵の攻撃のせいで、別れるタイミングを逸していたせいでもあった。だが、今なら問題ない。 「タイミングは…!」 「ええ、次にピタッと合わせます!」 11

2017-09-27 00:57:02
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ガイアはゆっくり大きく北東に旋回する。飛杭鳥たちはそれを追う。ガイアは不自由な制御系を手足や涼平の動きで騙し騙し使い、速度や角度、揚力と推進力を調整する。人間で言えば、車のハンドルを玩具のマジックハンドで握って操作するような無茶だ。しかもマジックハンドは壊れかけときている。 12

2017-09-27 01:04:30
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だがその無茶を押し通し、敵を振り切らず近付けず一定の距離を維持しながら目的地へ一直線の位置をキープする。そして、その時は来た。 「来ます!」 オトロシ上空の鳥たちが散開した。この数分で二度見た光景だ。すなわち岩の砲撃である。発射の轟音は九発響いた。 13

2017-09-27 01:09:36
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車ほどの岩が次々に南へと飛んでいく。思わず迎撃したくなるが、後ろの仲間たちを信じて堪える。八発目が空へ上がると同時、ガイアが叫んだ。 「涼平!行きます!」 「おう!」 数メートルの距離に迫ってきた背後の鳥たちをジェットで吹き飛ばし、一気に加速する! 14

2017-09-27 01:11:31
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最後に上がった九発目の岩。そこへ激突せんばかりの速度でガイアは突き進む。護衛役の鳥たちがこちらき気付いたようだが、定位置に戻るには間に合うまい。九発目が通り過ぎたばかりの空間へとガイアは到達!手に巻いて持っていた鎖ごと涼平を宙に放つ! 「シャキッとまた後で!」 「おう!」 15

2017-09-27 01:14:49
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ガイアの腕の中から涼平は飛び降りる。今は地上二百メートル。ここから地面に落ちれば、流石の涼平でも死ぬ可能性がある。最低でも全治数ヶ月は免れない。だが、涼平は慌てない。足場が五つも近付いてきてくれたからだ。飛杭鳥の一匹の首を鎖で引き寄せると、そのまま締め上げて飛行を制御する。 16

2017-09-27 23:38:54
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涼平は鳥の背に飛び乗る。体重が涼平の半分強ほどの鳥の身体はガクッと沈み込み、落下を始める。 「フン!」 片腕に巻いた鎖を引いて下降の向きを右へ左へと調整させ、追ってきた四匹を銃で一匹づつ確実に仕留めていく。そして引く力を弱めると、飛杭鳥は何とか上昇しようと羽ばたきを強めた。 17

2017-09-28 00:10:29
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四羽の死体が落ちていく。乗っている鳥より下へ落ちた辺りで涼平は鎖を一気に引き、首を締めるよりも先にへし折る。これを乗り捨てると、五羽の鳥の上を交互に飛び渡りながら諸共に落ちていく。口にすると簡単だが、鳥達は真っ直ぐ落ちていくわけではない。まだ微かに動いているものもいる。 18

2017-09-28 00:19:39
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だが涼平にしてみれば、普段の片桐の刃でやっている曲芸と似たようなもので何のことはなかった。違うのは足場が十倍ほど大きい代わりに、こちらの意に沿わない動きをするばかりか気を抜けば最期の力で襲ってくるという点だけだ。普通はその「だけ」が命取りなのだが。 19

2017-09-28 00:26:32
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一分と経たずに地上へと無事着地する。真新しい雪の上に砂礫や石がパラパラと落ちている。その上へ落下中に五羽の死体が次々に落ち、雪が舞う。一瞬だけ空を見る。鳥たちを引き付けたガイアは既に見えない。心配ではあるが、重い荷物が取れた分だけ戦いやすくなったと信じるしか無い。 20

2017-09-28 00:36:09
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彼女を案ずる余裕は既にない。用水路のような細さの小川の向こうには奇怪な幾何学的構造物が見える。人の頭ほどの青みのある黒い球体の周りには、球から数センチ離れた辺りから角のある蛇腹のような構造物が上下と前後左右に伸びる。この六本の構造体は同時に伸縮を繰り返し、脈動を思わせる。 21

2017-09-28 00:51:08
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菱形に近いこの構造の太さは、球の近くではピンポン玉大で、数m先の先端では十数倍の太さになっている。更に外縁部は球冠状に広がっている。涼平は資料で数度見ただけだが見間違いようもない。これがオトロシだ。異常重力を生む心臓部の球体と力場を制御する周囲の構造体で構成されている。 22

2017-09-28 00:54:40