租税・社会保障の制度設計において『公平』と『効率』を両立する方法:『観点毎に分離する』『所得税の累進性強化が鍵』

「社会保障の維持には消費増税しかない」とか、「社会保障を削減するしかない」と言う人は多いですが、頭の使い方次第で持続可能な社会保障制度を作ることは可能です。その基本となる考え方を示します。
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広夢 @scidreamer

今から連続ツイートを始めます。テーマは租税・社会保障の制度設計についてです。

2017-10-04 12:15:04

導入:所得税と社会保障の主な役割

広夢 @scidreamer

政府が行う政策では『公平』と『効率』が問題となる。これらはトレード・オフの関係にあることもあるが、一方で『公平』と『効率』を両立する方法が存在する場合もある。というより、現行制度に改善の余地がある場合があり、今回は租税と社会保障の二点に関して改善策の基本的な考え方を示す。

2017-10-04 12:16:06
広夢 @scidreamer

まず、租税の例として所得税について考えよう。所得税の主な役割として、第一に『所得が高い人と所得が低い人との格差を是正する』こと、第二に『社会保障などの政策に必要な財源を集める』ことが挙げられる。他にも役割はあるが、ここでは割愛する。

2017-10-04 12:17:11
広夢 @scidreamer

次に、社会保障の役割について考える。社会保障の主な役割には『社会保障が不必要な人と社会保障が必要な人との格差を是正する』ことが挙げられる。社会保障にも他に役割はあるが、ここでは言及しない。以上の観点から所得税と社会保障の制度設計について考えてみよう。

2017-10-04 12:18:07

現行制度の問題点:「控除」や「所得制限」は『公平』も『効率』も損なう

広夢 @scidreamer

現行の所得税制度では様々な「控除」というものが設けられている。例えば、扶養控除とか障害者控除が挙げられる。このように「控除」の中には社会保障のような役割を担っているものも多い。しかし、これらの「控除」という仕組みは『公平』と『効率』の両面で問題がある。

2017-10-04 12:19:07
広夢 @scidreamer

まず、「控除」という仕組みの問題点として分かりやすいのは制度や手続きが複雑で『効率』が悪いということである。納税者は様々な「控除」を申請するのに、その都度、多くの証明書類を用意し提出しなければならない。行政もその都度これを処理しなければならない。これは非効率である。

2017-10-04 12:20:06
広夢 @scidreamer

「控除」という仕組みのより大きな問題点は『公平』でないということである。先に所得税の役割として『所得が高い人と所得が低い人との格差を是正する』ことを挙げたが、「控除」という仕組みはこの『格差を是正する』という役割を損なってしまうのである。どういうことだろうか。

2017-10-04 12:21:07
広夢 @scidreamer

『所得が高くて社会保障が必要な人』と『所得が低くて社会保障が必要な人』とでは所得の格差がある。故に所得税によってこの格差を是正するわけだが、「控除」という仕組みの下は所得の高い人の方が控除額がより大きくなり、所得税本来の格差是正効果が損なわれてしまう。これは不公平だ。

2017-10-04 12:22:07
広夢 @scidreamer

次に、現行の社会保障制度の問題点を考えよう。社会保障制度には例えば児童手当や医療保険がある。これらには所得が高い人は受給できなかったり、自己負担額が大きくなったりする、「所得制限」の仕組みが採用されている。この「所得制限」の仕組みも『公平』と『効率』を損なっている。

2017-10-04 12:23:07
広夢 @scidreamer

まず、社会保障を受ける際には、「所得制限」という仕組みがあるために、所得を証明するための手続きを踏まなければならない。行政側もこれを処理する必要がある。所得税に「控除」という仕組みが設けられているのとちょうど逆のパターンで、やはり効率が悪く、コストが掛かる。

2017-10-04 12:24:08
広夢 @scidreamer

「所得制限」という仕組みのもっと重要な問題はやはり『公平』でないということだ。上述の通り、社会保障の役割とは『社会保障が不必要な人と社会保障が必要な人との格差を是正する』ことである。ところが、「所得制限」の仕組みの下ではこの格差是正効果が損なわれてしまい、不公平となる。

2017-10-04 12:25:07
広夢 @scidreamer

端的に言えば、社会保障制度に「所得制限」という仕組みを組み入れると、「所得が高くて社会保障が不必要な人」と「所得が高くて社会保障が必要な人」との格差が拡大してしまうのだ。後者は明らかに前者よりも弱者であるが、この弱者に負担が偏ってしまうのである。これは不公平だ。

2017-10-04 12:26:25
広夢 @scidreamer

ここまでの話をまとめよう。所得と社会保障という二つの観点から考えると、国民は「所得が高くて社会保障が不必要な人」「所得が高くて社会保障が必要な人」「所得が低くて社会保障が不必要な人」「所得が低くて社会保障が必要な人」の大きく四者に分類できることが分かる。

2017-10-04 12:27:10
広夢 @scidreamer

これら四者の国民の間の格差を是正するために所得税や社会保障という制度があるわけだが、所得税という制度に「控除」という仕組みを設けたり、社会保障という制度に「所得制限」という仕組みを設けたりすると、制度の本来の役割が損なわれ、不公平となってしまうのである。しかも非効率だ。

2017-10-04 12:28:07

制度設計の改善策:『租税・社会保障の制度は『観点』毎に分離して設計する』

広夢 @scidreamer

では、どうすればよいか。難しい話ではない。要するに、現行制度は所得と社会保障という二つの『観点』を交錯させているために上述の問題を生じるわけであるから、解決策はこれら二つの『観点』を分離することとなる。所得と社会保障で別々の制度を作って役割分担を明確にすればよいだけだ。

2017-10-04 12:32:10
広夢 @scidreamer

以上の議論では所得と社会保障の二つの観点だけを考えたが、これ以外にも資産とか、社会保障の中身も多種多様にあり、観点は数多く存在する。しかし、原理は同じだ。このような多くの『観点』毎にそれを受け持つ制度を作ればいい。様々な観点が複雑に交錯する現行制度より制度設計も簡単になる。

2017-10-04 12:33:07
広夢 @scidreamer

『観点』毎に分離して制度設計する利点は、制度設計が容易になること、国民側の手続きや行政側の処理の負担が減り効率化すること、制度によって生じる国民の間の不公平が解消されること、さらに財源負担が「所得が高くて社会保障が必要な人」に偏らないので政府が財源を確保しやすくなることだ。

2017-10-04 12:35:07

制度設計の具体例:『「控除」「所得制限」を無くす一方、所得税の累進性を強化する』『児童手当に「所得制限」は設けない』『医療費の公費負担を医療費に対して累進性とする』

広夢 @scidreamer

所得格差の是正は所得税の累進性だけで対処し、「控除」を設けたり、社会保障制度に「所得制限」を設けたりはしない。その分、所得税の累進性は強化する。こうすると、財源負担は「所得が高くて社会保障が必要な人」から「所得が高くて社会保障が不必要な人」に分散される。

2017-10-04 12:36:07
広夢 @scidreamer

例えば、児童手当などの子育て世帯への支援には「所得制限」は設けない。そうしないと、高所得世帯が子どもを持つことを躊躇してしまう。児童手当に必要な財源は所得税の累進性強化などで賄うべきだ。そうすれば、「高所得の子育て世帯」だけでなく「高所得世帯」全体に負担が分散される。

2017-10-04 12:37:14
広夢 @scidreamer

医療保険の公費負担は医療費に対して累進性にしてはどうか。すなわち、医療費が多く掛かるほど公費負担の割合が高くなるよう設定し、一定の金額を超える分については公費負担を10割とする(現行の高額療養費制度に相当する)。こうすれば全世代の健康と安心を公平かつ効率的に実現できる。

2017-10-04 12:38:11

終わりに:政治に頭を使っていこう