安部公房『他人の顔』読書メモ集

安部公房『他人の顔』(新潮文庫、1989)の読書メモをまとめました。
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荒木優太 @arishima_takeo

「私は、人間の魂は、皮膚に宿っているのだとかたく信じていますよ」(安部公房『他人の顔』)。お前はヴァレリーか。

2017-10-03 11:06:03
荒木優太 @arishima_takeo

顔というのは、つまり、表情のことなんですよ。表情というのは……どう言ったらいいか……要するに、他人との関係をあらわす、方程式のようなものでしょう。自分と他人を結ぶ通路ですね。by安部公房『他人の顔』

2017-10-03 11:07:57
荒木優太 @arishima_takeo

光の意味を一番よく知っているのは、電気屋でも、画家でも、写真家でもなく、成人してから失明した盲人なのだそうである。豊饒には豊饒の智慧があるように、欠如にも欠如の知恵があるはずだ。by安部公房『他人の顔』

2017-10-04 15:42:50
荒木優太 @arishima_takeo

覆面というのは、顔の約束を逆手にとった、嫌がらせのゲームであり、顔を消すことによって、ついでに心も消してしまう、いわば忍法の一種だと考えてもいいだろう。by安部公房『他人の顔』

2017-10-04 15:44:24
荒木優太 @arishima_takeo

仮面はもっぽら被害者によって求められ、覆面は逆に加害者によって求められるものなのではあるまいか。by安部公房『他人の顔』

2017-10-04 15:45:17
荒木優太 @arishima_takeo

「虚数」という数がある。二乗すると、マイナスになってしまう、おかしな数だ。仮面というやつにも、似たところがあって、仮面に仮面を重ね合わせると、逆に何もかぶっていないのと同じことになってしまうらしいのである。by安部公房『他人の顔』

2017-10-05 13:01:13
荒木優太 @arishima_takeo

さあ、出掛けよう! 新しい他人の顔を通って、新しい他人の世界に出掛けよう!by安部公房『他人の顔』

2017-10-05 13:02:11
荒木優太 @arishima_takeo

死が仲間よりも身近にいるようなとき、他人との通路などが、なにほどの意味を持ち得よう。突撃する兵士に、顔はいらない。そうだ、あれこそ繃帯姿が美しく見える、唯一の時代だったのではあるまいか。by安部公房『他人の顔』

2017-10-05 13:05:17
荒木優太 @arishima_takeo

完璧な匿名とは、完璧な集団に、自分の名前をいけにえとして捧げてしまうことである。by安部公房『他人の顔』

2017-10-05 16:10:48
荒木優太 @arishima_takeo

私は、幸福な気持で、こんなことさえ考えていたものです。愛というものは、互いに仮面を剥がしっこすることで、そのためにも、愛する者のために、仮面をかぶる努力をしなければならないのだと。by安部公房『他人の顔』

2017-10-07 14:23:52
荒木優太 @arishima_takeo

仮面は、仮面であることを、相手に分らせてこそ、かぶった意味も出てくるのではないでしょうか。by安部公房『他人の顔』

2017-10-07 14:25:28
荒木優太 @arishima_takeo

安部公房『他人の顔』読了。とても面白かった。ケロイドで顔をなくした男がお手製の仮面をつくって自分の妻を誘惑する話。なんでいままで読まなかったんだろう。仮面のモチーフは、近代文学史に脈々と流れているものだが(鷗外とか三島とか伊藤整とか)、その中でもかなり高い所にあると思う。

2017-10-07 14:29:47