<#27 「雪原の死闘③」>フォビドゥンフォレスト5話「選ばれし者、選ぶべき者」

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「<#26 「雪原の死闘②」>フォビドゥンフォレスト5話「選ばれし者、選ぶべき者」」をトゥギャりました。 togetter.com/li/1155398

2017-09-28 01:27:31
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(前回までのあらすじ:砦建設を妨害するかのように降り注ぐ妖怪オトロシの砲撃。こ殲滅に向かった涼平たち、砲撃を迎撃する者たちそれぞれに鳥型、猪型、狼型の妖怪集団が襲いかかる。隊員に重傷者も出始める中、妖怪集団の第二波まで現れる。片桐はある作戦のため、東の通路で猪達と対峙する…!)

2017-10-07 00:57:12
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フォビドゥンフォレスト5話「選ばれし者、選ぶべき者」 #27 「雪原の死闘③」

2017-10-07 00:57:31
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南の山小屋。 「気をつけろ!」 「せーの…!」 磐司を乗せてきた担架が一階の床にゆっくりと降ろされる。複雑骨折に内蔵の損傷…本来なら迂闊に動かすべきではない様態だったが、最低限の止血だけですぐに運ばれてきた。二階は岩の砲弾の直撃を受けたからだ。 1

2017-10-07 01:17:27
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物理防壁は勿論防御結界も弱まっている。次に攻撃を受けたら二階全体が損壊しかねない。それ以前に外の瘴気が素通しで入ってきており、怪我人を置いておける環境では無い。貴重な治療魔法の使い手が必死に治療を続け、医術や手当の心得のある者がこれを補佐する。 2

2017-10-07 01:28:41
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「黒音…大丈夫?」 円は黒音の顔を覗き込む。黒音は答えない。 「ごめんなさい。私、上に行くわね」 円は自分が叩いた黒音の頬を擦る。彼女は破れた結界の応急手当として祓いを行う為、上に向かわねばならないのだ。手を離すと黒音の身体がふらついた。 3

2017-10-07 01:40:06
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止む無く両肩を持って床に座らせ近くの者に後を託すと、円は護衛の隊員に付き添われて二階へと上がっていった。扉を通る時に一度だけ振り向いたが、黒音は呆然と座り込んだまま、横からの呼び掛けにも応じる様子がない。その視線の先の磐司は意識が朦朧とした状態で呻いている。 4

2017-10-07 01:50:40
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「磐司さん、助かりますよね?」 八代俊が愛生医師に治療器具を渡しながら問う。耐魔力の低い彼だが、山小屋内の手伝いをすべくついて来ていた。 「ああ、大丈夫さ」 愛生は一瞬だけ目線を送って軽く頷いた。彼ら医術側の担当は主に傷の縫合で、内臓と骨の修復は魔術の担当だ。 5

2017-10-09 00:04:46
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愛生は腹辺りを縫合している。その後ろで足を抑えていた隊員も俊に声を掛ける。 「そうだぜ、八代さんも『こっちに来るな』って応援してくれてるさ」 俊は口を固く結び、表情を強張らせる。 「その言い方はちょっと……どうかと思うよ」 愛生の背が戒める。 「え?」 6

2017-10-09 00:21:43
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三十代の隊員は一瞬困惑したが、俯いている俊を見て自分の不用意さに気付いた。 「ご、ごめんな。ちょっと無神経だったな…」 「いえ…」 俊は目を逸らしたまま応えると、愛生の汗をタオルで拭いた。 7

2017-10-09 00:39:12
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「…何とか危ない所は脱した感じですね」 話題を替えるようなタイミングで、三人に声が掛かった。治療魔法の使い手、村川だ。愛生と向かい合う位置で胸辺りを治していた。 「そうだね。磐司くんは、もう大丈夫だろう」 「良かった!」 「心配なのは…これ以上負傷者が増えることだね」 8

2017-10-09 00:46:03
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「ええ」 村川も頷く。ここには今、治療魔法の使い手は村川しかいない。治療用の魔法薬や道具もあるが、村川の術に比べれば気休めだ。実用レベルの重傷治療が出来る魔術師は者は村川の家にしかおらず、これでも善処している方だ。その限られたリソースを今磐司に集中してしまっている。 9

2017-10-09 00:55:20
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「うおっ!」 腕を抑えていた隊員が声を上げた。磐司が急に動き出しだのだ。痛みで暴れる磐司を抑えるべく四肢を抑えていたが、治療の開始直後に打った麻酔がようやく効き始めたことで気が緩んでいた。右手に握り締めたまだった楽進盤を持ち上げようとしている様だ。 10

2017-10-09 01:03:48
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「お兄ちゃん!そんなのもうどうでもいいから!」 あまりにしっかりと持っていたことと、麻酔が効けば離すだろうと思われたので放置されていたが、流石にこうなってはそうも行かない。黒音は磐司の指に手を掛けて盤を引き剥がそうと試みる。 11

2017-10-09 01:10:55
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「っ……!」 磐司が呻く。いや何事か喋ろうとしている。重要な内容かも知れないが、今の怪我で喋らせるのは危ない。 「鎮静剤を少し増やしましょう。俊くん、そこの注射器を取って下さい。」 「はい!」 魔術師は常人よりは薬剤耐性が高い。最初に打った分では足りなかった可能性がある。 12

2017-10-09 01:15:41
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雷牙はモニターを注視しながらも、彼らの様子も見ていた。 「周囲の探索を最大に広げな。何か見たのかも知れねぇ」 「この期に及んで新手ですか…!?分かりました」 霊波探査はジャミングに対抗して雪原に重点を置いていたが、これを雪原の外側へと広範囲に拡大させた。 13

2017-10-09 01:17:09
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東西から来た新たな群れには既に前線の隊員が接触し、対応している。岩の弾丸は目視と物理レーダーで対応出来る。戦況の把握できず指揮も取りにくくはなるが、新手がまだいるというのならそちらの警戒が優先だ。楽進盤にこだわる辺り、磐司は増援第三波の予兆を捉えていた可能性がある。 14

2017-10-09 01:21:16
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同時刻。東の通路の片桐は、七匹の猪を引き受けつつ徐々に後退していた。後ろの進捗を時折確認しつつ、無数の刃を剣から飛ばす。刃はイノシシたちに纏わり付き、視界を遮り、足元を払う。ユキイノシシ達はB級の中でも攻撃・防御・突進力に優れており、この数との真っ向勝負は危険だ。 15

2017-10-10 23:51:18
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幸い、雪壁のおかげか通路の中ではジャミングの影響は小さく、剣本体から刃を二十メートルは離せるので、予想より戦いやすい。 (いや、やりやすいのは、それだけが理由じゃねぇな……) 片桐はユキイノシシとの交戦経験は前にもあったが、どうもこの群れは様子がおかしい。 16

2017-10-10 23:54:45
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普通は大型のリーダー格個体達が先陣を切って障害を突破し、小型の個体があとに続くのだが、この群れは逆だ。小型が大型を護るように前に出てきている。大型が残らず負傷してでもいなければ自然にこうはならない。片桐が誘導した訳でもない。最初からこうだった。 17

2017-10-10 23:58:22
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雑兵が強い戦力を護るという点では、合理的にも見えるが、イノシシ達は基本的に大型のほうが足が速く突進力も強い。だというのに後ろの大型達は速度を加減することなく普段通りに走り、結果的に前衛の小型に何度もぶつかっていた。お陰で付け入る隙は多いのだが、どうにも不気味でならない。 18

2017-10-11 00:02:04
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(なんか…慣れねぇ陣形を無理にやってる感じだな) 改造したての剣を握る手に力が入る。敵の妙な動きは気になるが、利用しない手はない。隙の多さもあって倒す機会は幾度かあったが、あくまで遅滞防御に努める。無理をすれば自分の身が危ういし、今はこれ以上数を削らないのも作戦のうちだ。 19

2017-10-11 00:12:21
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「よっと!」 幾度目かの突進を跳んで躱す。 『キィーッ!』 その片桐の側へ、高音と共に鳥型ドローンが飛来した。滞空しながら伝言を再生する。 『準備完了だ!これを聞いたら二十秒後にぶつけるぞ!』 「おう!」 片桐はイノシシを見据えたままで、刃を東に向けて飛び石状に展開する。 20

2017-10-11 00:21:09