MValdegamasさんによる、戦後政治史の推薦書籍短評

誰かまとめててそうな気がするけど、探すのめんどいので自分でまとめた
自民党 現代史 田中角栄 岸信介 佐藤栄作 政治 吉田茂 日本史 池田勇人
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北大西洋条約さくら @MValdegamas
『小説吉田学校』以外で55年体制下の戦後政治家入門本を教えろ、というDMがあり、北岡伸一『自民党』(amzn.to/2wFS7F4 )で十分とは思ったのですが、そういえば昔主要と考えている政治家の本について情報をまとめたことがあったので連ツイしましょう。
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吉田茂:高坂正堯『宰相吉田茂』(初版1968、以下原則同じ)amzn.to/2wFnPT4 猪木正道(1978)原彬久(2005)、ダワー(原著1979)と吉田は優れた伝記が少なくないですが、吉田論、保守党論として一つの形を築いた高坂がまず読まれるべきと思います。
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伝記的な要素を含む人物研究としては、渡邉昭夫「吉田茂―状況思考の達人」同編『戦後日本の宰相たち』(amzn.to/2y8AZLl 、1995)、北岡伸一「吉田茂における戦前と戦後」同『門戸開放政策と日本』(初出1994)も短いながら優れた作品です。
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対米外交を中心に吉田論は90年代以降広がりを見せましたが(この面の現在の集約は楠綾子『吉田茂と安全保障政策の形成』amzn.to/2y8Ih1R 2009)、出発点ともなった一冊として、またその後の研究を踏まえても多様な読みができる点で高坂は無視できません。
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緒方竹虎:栗田直樹『緒方竹虎―情報組織の主宰者』(amzn.to/2wFcbYd 、1996)吉田後の保守の大本命とされた緒方の唯一と言っていい学術的伝記です。朝日出身であることや2・26事件への対応などで、リベラルなイメージを強調される人物の実像を描いています。
北大西洋条約さくら @MValdegamas
政治記者として緒方が戦前は軍部、右翼とうまく提携してきたこと、一方それを一因として失脚したことなども含め、朝日新聞論としても面白いです。戦後、CIAと協力していたことを強調、非難する向きが最近ありますが、緒方が政界で如何なる存在だったかを含め論じなければ価値がないと思います。
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この時代の保守党内の様相がわかる一冊は小宮京『自由民主党の誕生―総裁公選と組織政党論』(amzn.to/2wEYWGX 2010)でしょう。極めて価値のある一冊です。
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岸信介:原彬久『岸信介―権勢の政治家』(amzn.to/2wGt0SF 1995)岸の政治的スタンスや実際に進めた政治を手際よくまとめている、最高の伝記といって過言ではありません。安保改定期の研究のため、生前の岸にインタビューを重ねた研究者の手によるもので…
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当時のインタビューは『岸信介証言録』(2003)としてもまとめられました。著者が岸に惚れ込みながら、同時に確実に距離を保とうとしている、もがきを感じる伝記でもあります。『戦後政治の証言者たち』(2015)でもこうした岸と著者の距離感は感じることができます。
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北岡伸一「岸信介―野心と挫折」(『門戸開放政策と日本』収録/初出、前掲『戦後日本の宰相たち』1995)も岸を包括的に描いた優れた伝記ですが、著者に珍しく対象への「愛が溢れすぎている」伝記で、岸を過大評価しているきらいがあります。とはいえ、セットで読むと非常に魅力的です。
北大西洋条約さくら @MValdegamas
塩田潮『岸信介』(1996)、岩見隆夫『岸信介』(初出1994)はそれぞれ筆力のあるジャーナリストの本であるのでそれなりに魅力的ですが、上記のサブリーディングスというところでしょうか。
北大西洋条約さくら @MValdegamas
池田勇人:伊藤昌哉『池田勇人とその時代』(amzn.to/2y8KCcO 初版『池田勇人その生と死』、1966)ジャーナリストから池田の総理秘書官に転じた人物の回想録です。池田に徹頭徹尾惚れ込んだ人間が、池田の成長を描く、池田論のスタンダードともいうべき一冊です。
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池田と二人三脚で政治を進めていった様子、高度成長というミラクルを成し遂げたあと、退場していった池田への哀惜の念が溢れており、心を打ちます。伊藤はその後も池田の語り部として活躍しますが、興味深いのはこの本に比べて、ある程度落ち着いたスタンスで池田を論じるようになっていくことです。
北大西洋条約さくら @MValdegamas
20年後に描かれた『日本宰相列伝 (21)池田勇人』(amzn.to/2wGqzPN 1985)などと読み比べてもこの辺は面白いので、合わせて推奨します。
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伊藤はその後も、請われて大平正芳の指南役として活躍し、『自民党戦国史』amzn.to/2y8F2HA を残していますが、これも政治空間の歪みを感じさせる魅力的な一冊です。まさに政界特有の陰謀論チックというか、自己中心の「天動説的」な世界観を見せつけられます。
北大西洋条約さくら @MValdegamas
沢木耕太郎『危機の宰相』(amzn.to/2y8IeD5 2006)も優れた一冊です。大病から敗戦をチャンスに飛躍した池田と、高度成長を理論的に先導した下村治、官界から池田の黒子に転じた田村敏雄という三人の「負け犬」大蔵官僚が主役の、爽やかで胸躍る一冊です。
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中村隆英「池田勇人―『経済の時代』を創った男」(前掲『戦後日本の宰相たち』)は政治史にも精通した経済史家による池田論で、やや平板ですがこうした人物論を読んだ後で読めばおもしろく読めるかと思います。
北大西洋条約さくら @MValdegamas
佐藤栄作:高坂正堯「佐藤栄作―『待ちの政治』の虚実」(前掲『戦後日本の宰相たち』1995)同書の白眉です。「待ちの政治」と揶揄された佐藤の政治スタイルの限界と価値を説いた非常に面白いもので、ブレーンとして重用された著者の知識人論としても価値があり、本当に好きな文章の一つです。
北大西洋条約さくら @MValdegamas
番記者から総理秘書官に転じた楠田實『首席秘書官』(amzn.to/2wGmmfj 1975)も貴重な一冊です。現場でどのように政治が形作られるのか、総理という立場からはどのような光景が見えるのかを描いていて、佐藤政権論としても政治論としても非常に飽きさせません。
北大西洋条約さくら @MValdegamas
山田栄三『正伝佐藤栄作』(1988)は当時門外不出だった佐藤の日記を活用して番記者が書いた細密な伝記ですがやや平板。千田恒『佐藤内閣回想』(1987)は佐藤の政権構想作りに参与するなど、やはり佐藤に近い記者による同時代の回想ですが、佐藤政権時代に関する回想として貴重です。
北大西洋条約さくら @MValdegamas
田中角栄:御厨貴「田中角栄―開発政治の到達点」(同『戦後をつくる―追憶から希望への透視図』/初出、前掲『戦後日本の宰相たち』、1995)アイディアの人御厨先生が、田中の思考パターンをどのように把握すればよいのか、ということを論じたこの文章は極めて興味深いものです。
北大西洋条約さくら @MValdegamas
田中の政治観は平面的で回想的なものでなく、陳情を請けてその辺の道に橋を架けるのも、米ソの首脳と外交をするのも同じ次元にあって、ただ量的拡大を続けるだけのものだったというのは、非常に腑に落ちるものがあります。
北大西洋条約さくら @MValdegamas
角栄のイメージは立花隆が『田中角栄研究』『田中角栄新金脈研究』で暴き、そして前掲の伊藤『自民党戦国史』で(伊藤の好悪の感情で)描いた悪魔的な像がある一方、近年の角栄本ラッシュの源流ともいえる、早坂茂三が作り上げた「民衆の王者」の像が統合せぬまま、並走している状態です。
北大西洋条約さくら @MValdegamas
服部龍二『田中角栄 昭和の光と闇』(amzn.to/2y8KIkZ 2016)はそうした未統合の田中象を意識した著作で、著者のスタイルもありおよそドラマティックではありませんが、現時点使える史資料を駆使すると角栄はこう描ける、という一冊で一読の価値はあります。
北大西洋条約さくら @MValdegamas
福田赳夫:五百旗頭真「福田赳夫―政策の勝者、政争の敗者」(前掲『戦後日本の宰相たち』1995)五百旗頭先生の福田論は福田の没後間もなく書かれたものですが、福田の内外の政治業績を過不足なく描き魅力的な短編です。何より副題が全てを論じておりよい。
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