#ダークエルフ王国見聞録　その１9

へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

後ろへ下がる体への鋭い斬撃が薄布を引き裂き、豊かな褐色の乳房が着地の衝撃で揺れ弾みながらまろび出る。その斬撃を繰り出した相手も荒い息を吐き、息吹に合わせて上下する豊満な双球には玉の汗が流れ伝い、その東雲色の先端へと幾本かの筋を描いている #ダークエルフ王国見聞録

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露わな胸を気にすることもなく、剣を交し、体を入れ替えながら激しく戦うダークエルフの女剣士はこの二人だけではなく、矢来に囲われたおおよそ十間四方の場に八人が四つの組みを為している。彼女らは、揃いの剣、揃いの円盾以外は持たず、体を隠すのは最早腰布のみである #ダークエルフ王国見聞録

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矢来の外を囲む観衆達は、それぞれの剣士の一挙手一投足に或いは歓声を、或いは大きな溜息を、或いは驚きの声を上げている。剣戟を繰り返す彼女らの内、余裕の表情を浮かべて優勢に見えるのが無頼の者達であり、その反対に必死の表情であるのが国軍の新兵達である #ダークエルフ王国見聞録

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私は神祇官の正装を着用して、彼女らが剣を交す場を囲う矢来のすぐ外に立っており、私の両横には無頼と兵士それぞれの介添人が戦いの行方を見守っている。これは、彼女らの名誉を賭けた決闘であり、何の因果か私は立会人としてこの野蛮な場に立ち会っていたのである #ダークエルフ王国見聞録

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・・・ことの顛末は以下のようなものである。ある年の初秋、私は“沃野を見渡す大野擦”氏族の領域での現地調査を終え、妻であり目付でもあるセラと王都へと戻ってきていた。この調査で記録したことについて、伽衆の同僚達の意見を聞こうと思い、酒の席に誘ったのである #ダークエルフ王国見聞録

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セラも誘ったのであるが、「なに、男同士の付き合いというのもあるのであろう。それにな、お前達の酒席に同席したことが前にあったであろう。あの時は、どうにも難解な議論ばかりをしていて、酒が少々不味くなったのだよ」と断られた #ダークエルフ王国見聞録

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「いや、お前の仕事に興味が無い訳ではないのだぞ。私は宿の部屋でゆっくりしているから、存分に学問の話をしてきて、後で私にも教えてくれ。楽しんでくるとよい」 そう言って左右の頬を合わせてから口づけをする夫婦の別れの挨拶をして、私は酒場へと向かった #ダークエルフ王国見聞録

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酒場へと着くと、旅籠の丁稚を使いにやったリザードマンの老鬼道士と、コボルトの測量士の男性が既に到着していた。この“緑外套の唐檜亭”は、美味な腸詰と青黴の乾酪、香りのよい酒を供し、また異種族の男性だけでも気兼ねをすることなく入れる店であった #ダークエルフ王国見聞録

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机の上に並べた料理や酒を味わいながら、私が書きこんだ文字や絵図の紙束をやはり机の上に並べていき、二人に示す。彼らも学識のある者達であり、私の記録や解釈に対して、異種族の立場から興味深い指摘や助言、批判をしてくれ、大いに議論は盛り上がった #ダークエルフ王国見聞録

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さて、この夜、私達以外に何組かの客が酒と料理を楽しんでいたのだが、その中で一際目立っていたのが、無頼の徒、遊侠の一団である。彼女らは戦場でもないのに肌を晒す具足などを身に付け、それを派手な金具の飾りや鮮やかな色の布飾り、染めた大きな羽などで飾る #ダークエルフ王国見聞録

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彼女らの得物の拵えも華美さを重んじたものであるが、これは異装をして目立つことを彼女らが好むからであって、賞金の出る魔獣の退治や逃亡奴隷の追補、夜警や戦場での傭兵、代闘士に隊商の用心棒、果ては遺跡荒しなど、荒事を生業とする故に、腕に覚えのある勇士揃いである #ダークエルフ王国見聞録

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彼女らの頭目は、羽飾りを付けたつばの広い赤い帽子、大きく広げた錦糸の襟から豊かな胸を曝け出す服、黄金の様に輝く魔獣の毛皮の腰巻き、大粒の宝玉の指輪と首飾りといった派手な服装をして、左の額から鼻梁、右の頬への向う傷があって、猛々しさのある美女であった #ダークエルフ王国見聞録

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騒がしく飲み食いをする遊侠の一団の傍には、穏やかに会話を交わしている別の一団が居て、こちらに聞こえて来た会話の内容からすると“緋の軍旗を掲げる熊啄木鳥”氏族の若者達であり、軍務が非番である時に同じ氏族の者達が集って親交を深めているようであった。 #ダークエルフ王国見聞録

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双方とも十人程の一団であり、初めは些細な言葉のやりとりであったのだろうが、両者が口喧嘩を始めたのである。遊侠の一団は新兵の一団へと小馬鹿にしたような言葉をかけ、新兵の一団は遊侠の一団をならず者の集団を非難し、争いの熱が高まって掴み合いが始まった #ダークエルフ王国見聞録

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売り言葉に買い言葉の中で、どちらが先に手を出したかは判然としなかったが、遊侠というのは勇ましさを売りにする稼業である故に、勇ましい兵士達相手にも引き下がることはなく、悠然と酒を飲み続ける頭目の周りの無頼達が囃し立て、雑言を履きながら素手で構えを取る #ダークエルフ王国見聞録

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喧嘩の騒動が激しくなり、新兵の一団の一人が我々の座っている机に倒れ込む。机の上に広げていた大切な資料が零れた酒に汚れるのは防いだが、これ以上の騒動は勘弁して欲しく、同輩のコボルトの男性に番所へ走って貰い、私とリザードマンの老鬼道士で仲裁をすることとした #ダークエルフ王国見聞録

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店主の女性に番所への通報に仲間が向かったことを、騒動に怯える給仕の少年には我々に場を任せる様に伝える。我々は、二つの組の間に分け入って頭を下げ、ご武勇まことに結構ではありますが、店主殿も店員殿も怯えております故にどうぞ拳をお収め下さいと願い出る #ダークエルフ王国見聞録

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「なんだ、短耳野郎に蜥蜴野郎の異種族風情が我等に口出しするか」 「どうやら役人のようだが、刑部でも兵部でもないようですぜ、火竜の姐御！」 「こいつらも一緒に畳んじまいましょうぜ」 無頼の輩達が次々とまくし立てる #ダークエルフ王国見聞録

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一方で劣勢であった新兵達の一団は、我々が役人であることを聞いて気遅れしたようであった。彼女らも公務にある身なので、冷静になれば斯様な騒動は控えたいであろう。これを機に場を収めようと、遊侠の一団にはこの店の良き酒を馳走するので楽しまれては如何と申し出る #ダークエルフ王国見聞録

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これに気を良くした無頼の徒の姿に安堵した私達であったが、彼女らの頭目が酒杯をドンと置き、下げていた私の頭を掴んでズイと引き寄せる。大きく開いた豊かな胸の谷間が視界に急に入ると、これを押し上げられて酒臭い息を吐く美女の顔がずいと近づけられる #ダークエルフ王国見聞録

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「気に入られないねぇ。私ら武辺者の喧嘩に割って入って仲裁に来ようってのは偉いもんだ。世渡りの術ってのも心得ているようだ。ただ、私らは向こうさんも互いの名誉ってもんのために争ってるのさ。それを酒やら金やらで静めようってのが気に入らねぇのさ」 #ダークエルフ王国見聞録

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酒の話にしめたという表情をしていたそれまでの取り巻き達の姿を見るに、ほとんど言いがかりに感じられるが、この言葉に周囲の遊侠もそうだそうだ、無礼者だ、異種族野郎、木端役人めと罵詈雑言を飛ばし、大変に参ってしまった。これは更にふっかけられてもおかしくない #ダークエルフ王国見聞録

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私は平謝りをしながら、陛下の伽衆であることを敢えて伝えようかと思ったが、実際の権限はない名誉職ではあるし、斯様な喧嘩の仲裁に陛下の名を出せば後にどのような叱責を受けるであろうかと思い、堪えたのであった。これは、老鬼道士も同じ考えであったようだ #ダークエルフ王国見聞録

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この状況に再び怒気を取り戻した新兵の一団が再び掴みかかろうとして、仲裁も無駄になったかと思った瞬間、酒場のドアが勢いよく開き、小柄な兵を先頭に、武装した兵士達が雪崩れ込んで来る 「喧嘩をしている馬鹿どもとはお前らか、怪我する前に大人しくしょっ引かれろ！」 #ダークエルフ王国見聞録

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小さな体の何処からそのような大きな声が出るのかと思ったが、よく見るとそれは初夏の大祭でセラと好勝負を演じた上級百人長のスベルヴァリであった。流石に番所の兵が来ると双方ともに冷静になったのか、場は静まり、私も頭目の手から解放された #ダークエルフ王国見聞録