創作荘東京オフ会小説『絡めた指、唐草模様』その35、その36

小田原征伐に絡んだ陰謀劇は意外な真相をたどり、主人公は次なる捜索に乗り出します。
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  • ぞろ目の八ことマスケッター(旧 1d6) @mm1d6 2017-10-10 20:09:56
    #創作荘 東京オフ会小説 絡めた指、唐草模様 35 不作法な大声が私と雅さんから突き出てしまった。事実、手足が軽く痺れてきた。 「皆様の中に、豊臣家の忍びがいます。私は徳川家と親しくお付き合いしておりますが、私を殺して北条家の品を置いておけば両家が手を組んでいた口実になります」
  • ぞろ目の八ことマスケッター(旧 1d6) @mm1d6 2017-10-10 20:11:24
    私や雅さんが違うのは当然だし、桜さんは刀を持ったままだ。 「三人の中で、誰が忍びか明らかになれば、それ以外の方には毒消しを渡しましょう。お断りしておきますが、毒消しはここにはありません。暴れれば速やかに毒が回りますよ」  オズボーンさんはさりげなく桜さんに目を向けた。
  • ぞろ目の八ことマスケッター(旧 1d6) @mm1d6 2017-10-10 20:12:07
    桜さんは腰を沈めはしないままオズボーンさんを見据えた。  私達は異世界の人間ですと主張するのは簡単だった。スマホでも見せれば良い。でも、それだと桜さんが死ぬ。 「白梅局さんの話にあった、刀を徳川家から持ち出したのはあなた自身でしょう」  雅さんが追及した。 「さあ」
  • ぞろ目の八ことマスケッター(旧 1d6) @mm1d6 2017-10-10 20:12:29
    「あなたは徳川家の依頼を受けて、豊臣家の干渉を暴こうとわざわざこんな仕掛けを作ったんだ。忍びを捕まえて生き証人にするために。白梅局さんの夫が豊臣家に捕まって、このままだと本当に徳川家と北条家が内通していることにされかねないから、取引の材料にするつもりだ」
  • ぞろ目の八ことマスケッター(旧 1d6) @mm1d6 2017-10-10 20:14:00
    「ホ、ホ、ホ……。中々に面白いです。では、あなたがその忍びだというわけですか?」  違います、といえば相手を喜ばせるだけなので、賢明にも雅さんは黙った。 「さあさあ、時間が残り少ないですよ。こちらは死体になった皆様でも構いません」  痺れが身体の末端から徐々に心臓に近づいてきた。
  • ぞろ目の八ことマスケッター(旧 1d6) @mm1d6 2017-10-10 20:14:49
    「私だ。私が忍びだ。後の二人は関係ない」  桜さんが遂に口を割った。 「その証拠は?」 「元々私だけが雇われた仕事だからだ」 「雇い主は?」 「私を雇ったのは……異国の商人オズボーンだ!」  叫んだ桜さんは仁王行平を抜いてオズボーンさんに飛びかかった。オズボーンさん? !?
  • ぞろ目の八ことマスケッター(旧 1d6) @mm1d6 2017-10-10 20:15:41
    私達が整理できない内に、目の前のオズボーンさんは茶釜を投げつけた。桜さんはそれを刀で払い、こぼれたお湯がオズボーンさんの頭にかかった。 「熱ーっ!」  オズボーンさんが転げ回り、身体が二つに割れた。カツラが転がり、壁に当たって止まった。桜さんが斬ったのではない。
  • ぞろ目の八ことマスケッター(旧 1d6) @mm1d6 2017-10-10 20:16:21
    着物が割れて、二人の男女が転がり出た。一人は白梅局だ。お湯で変装がはがれて珍妙な顔になっている。二人とも肌着しか身につけていない。とんだ二人羽織だった。 「動くな!」 「お、お前、毒……」  白梅局が喋りかけたのを、桜さんは刀を突きつけて黙らせた。
  • ぞろ目の八ことマスケッター(旧 1d6) @mm1d6 2017-10-10 20:17:12
    「少し濃い痺れ薬なだけだろう。本物の忍びに通用するものか」 「ど、どういう……」  雅さんがどうにかそれだけ口にした。手足ばかりか頭もしびれそうだ。 「刀は徳川家から持ち出されたのではない。最初から白梅局の屋敷にあった。夫もとうに無罪放免だ。夫婦が私を疑っていたのも察していた」
  • ぞろ目の八ことマスケッター(旧 1d6) @mm1d6 2017-10-10 20:19:10
    桜さんは、着物がもつれて動くに動けない二人を冷たく見据えた。 「元々は、徳川家が北条家に対し刀を返すから豊臣家に挨拶に行くよう促し、その使いで白梅局の夫が刀を預かっていた。刀に謎があるのも夫婦は知っていた。夫は刀を手土産に豊臣家に取り入ろうとして、怪しまれて捕まっていたのだ」
  • ぞろ目の八ことマスケッター(旧 1d6) @mm1d6 2017-10-10 20:20:27
    説明を聞く内に、痺れが少しずつ抜けてきた。 「オズボーン様が折角釈放に力を尽くして帰ってこられたのに、今度はオズボーン様を軟禁して財産を横領しようとした」 「じゃあ、どうしてもっと早く救出しなかったんですか?」  雅さんが聞いた。
  • ぞろ目の八ことマスケッター(旧 1d6) @mm1d6 2017-10-10 20:20:48
    「夫の方が中々姿を見せなかった。同時に捕まえないと意味がない。オズボーン様の偽者が時々ここに出てくるのは知っていたし、捕まえて夫婦の居場所を吐かせるつもりではいた。 それから、丘にこしらえた店や、この茶室は本当にオズボーン様が作ったものだ。 まさかこんな真相だったとは」
  • ぞろ目の八ことマスケッター(旧 1d6) @mm1d6 2017-10-10 20:23:29
    「生き証人というのは……」  私からも聞きたいことがあるので、この際は遠慮なく聞いた。 「ただのハッタリに過ぎぬ。もっとも、自分達を捕まえにきた人間が誰に雇われたのかはっきりさせるために、カマをかけたつもりだろう」  真相を次から次に告げられ、夫婦そろって二人はぐったりした。
  • ぞろ目の八ことマスケッター(旧 1d6) @mm1d6 2017-10-10 20:24:12
    「では、そろそろオズボーン様の居場所を教えろ」 「この茶室の床下だ」  夫の方が答えた。 「白梅局、こっちにこい。夫の方が畳を剥げ」  二人は言われた通りにした。畳が剥がされると大きな上げ蓋が見つかり、夫が掛金を外して開けると四角い穴が見つかった。 「その中か?」 「そうだ」
  • ぞろ目の八ことマスケッター(旧 1d6) @mm1d6 2017-10-10 20:24:49
    「藍斗殿、雅殿、まことにすまぬがこの二人を着物の帯で縛ってくれまいか」  私達はすぐにうなずいた。人を縛るのは生まれて初めてだったものの、雅さんと二人がかりでどうにかやり遂げた。 「二人ともここで待っていて欲しい」  桜さんはそう頼んでから、懐を探って縄梯子を出した。
  • ぞろ目の八ことマスケッター(旧 1d6) @mm1d6 2017-10-10 20:25:42
    その片端を輪にして上げ蓋の継ぎ目にかけ、するすると穴に消えた。何分もたたずに戻ってきて、オズボーンさんを背負っていた。肌も髪も和服もボロボロだったけれど、目ははっきり開かれていた。本物のオズボーンさんは、それと意識してしまったせいもあるにしてもとても品格のある女性だった。
  • ぞろ目の八ことマスケッター(旧 1d6) @mm1d6 2017-10-10 20:26:21
    「オズボーン様、まずはこの茶室で一休みを。この両名は寺の本堂に持って参ります」 「ごめんなさい……桜……」 やつれているにもかかわらず、しっかりした口調だった。 「いえ、私がもっとしっかりしていればこのような目には……。二人の処分はまた後程に致しますか?」
  • ぞろ目の八ことマスケッター(旧 1d6) @mm1d6 2017-10-10 20:27:12
    「そうしましょう。こちらのお二人は? ……あら? こちらのお嬢さんにはどこか見覚えが……」  オズボーンさんは本能で私と自分の一族の背景を悟りかけた。 「お二人とも今回の件には無関係です。失礼ながら、私の仲間がこちらの方を利用する形にはなりました」  と、桜さんは
  • ぞろ目の八ことマスケッター(旧 1d6) @mm1d6 2017-10-10 20:28:18
    雅さんを手で示した。 「利用?」  雅さんも私も首を捻った。 「最初に声をかけた行商人のことですよ。白梅局は、最後まで自分の手下と信じきっていたようです。無関係な人間を巻き込まないと、白梅局を油断させられませんでした」  その白梅局さんは、もうぐうの音も出ないようだ。
  • ぞろ目の八ことマスケッター(旧 1d6) @mm1d6 2017-10-10 20:29:33
    桜さんが刀を腰から外して夫婦を両肩に担いで連れて行った後、オズボーンさんは横になり、私達は乱闘の後始末をした。何かしないと気が落ち着かなかった。 「刀をお返しします」  掃除が済んで、私達は仁王行平を横になったままのオズボーンさんの枕元に添えた。
  • ぞろ目の八ことマスケッター(旧 1d6) @mm1d6 2017-10-10 20:31:09
    「ありがとうございます。此度は大変ご迷惑をおかけしました。お礼に、刀の秘密を教えましょう」 「え? 知っているんですか?」 もう驚くことはないと思っていたのに、もっと凄い話になった。
  • ぞろ目の八ことマスケッター(旧 1d6) @mm1d6 2017-10-10 20:31:43
    「元々その刀は、何百年も前にオズボーン商会の依頼で作られたものです。源氏と平氏の争いでどこかに流れてしまい、ようやく対面できました」  オズボーンさんは、少し無理をして身体を起こし、刀を手にした。茶室にある道具を私達に頼んで取り揃え、丁寧に分解した。私達は再び仁王を目にした。
  • ぞろ目の八ことマスケッター(旧 1d6) @mm1d6 2017-10-10 20:32:20
    オズボーンさんは懐から割符のような小さな板を出し、仁王に当てた。すると、カバーのように仁王の部分が外れ、小さな差し込み口が現れた。 「謎といっても、私が知るのはここまでです。ただ、これを見せるのはあなた達が初めてです」  オズボーンさんに礼を言うのも忘れ、
  • ぞろ目の八ことマスケッター(旧 1d6) @mm1d6 2017-10-10 20:33:09
    私は自分のスマホと充電ケーブルを出した。ケーブルの端が、刀の差し込み口にぴたっと噛み合った。 「リテラチャー・ラジオ! 本日は特別DJのりおんがお届けします!」 「か、刀が喋った!」  オズボーンさんが仰天した。
  • ぞろ目の八ことマスケッター(旧 1d6) @mm1d6 2017-10-10 20:34:04
    「最近、刀のイケメンにはまってるりおんですが、地蔵行平って知ってますか? 二振りあって、一つは北条家から転々として火事でなくなったそうです。もう一つは別物ですけど現代まで残っているそうです。地蔵の代わりに仁王とか彫ったらいかつくなるかも。ここでお葉書を一通」  お葉書。即ち!

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