(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss をお使いいただけると大変ありがたいです。忙しい方はtogetterまとめ版をどうぞ。それでは暫くの間、お付き合い下さい)
2017-10-18 20:31:17日差しを感じ、アクィラは目を覚ました。慌てて身を起こすと、彼女は穏やかな海岸にいた。さっきまで戦っていたはずなのに。味方の艦隊も、敵のデーモンも近くには見当たらない。何が起こったか思い出そうとしたアクィラだが、不意に、胸の辺りに痛みを覚えた。1
2017-10-18 20:33:07思い出す。さっきの戦いで、デーモンの砲弾が、自分の胸を貫いた。なのに、今、アクィラの胸には傷などなく、そこは黒い装甲板に覆われていた。「……え?」慌てて、アクィラは自分の体を確かめる。手足は血の気を失い、黒い艤装が血管のようなパイプによって体と繋がれている。2
2017-10-18 20:36:09「そんな……」見覚えがある。ありすぎる。今の今まで戦っていた敵と同じだ。デーモンに殺され、、海の魔力を得て蘇った今の彼女は、紛れもなくデーモンそのものであった。己の死と、その死すら踏みにじる変質を悟ったアクィラは、絶望と共に叫んだ。「あー、私デーモンになっちゃったよ!」3
2017-10-18 20:39:04「イヤーッ!?」「イヤーッ!」片方は悲鳴、もう片方は雄叫びである。敵増援の真正面に出てしまった大和には、深海棲艦たちの集中砲火が浴びせられていた。「ひえぇ、ごめんなさい、ごめんなさい!ホテルでごめんなさい!」大和は全力で回避行動を取り続けている。5
2017-10-18 20:42:02「ええい、ちょこまかと……!」ただ、戦艦棲姫の表情も芳しくなかった。大和の足は、戦艦としては意外と早い。その上、史上最硬の装甲も持っている。それが逃げに徹しているから、なかなかダメージを与えられなかった。「航空隊!もっとちゃんと追い詰めろ!」6
2017-10-18 20:45:02砲弾が、魚雷が、爆撃が大和に迫る。「うわああああ!」必死に走り、機銃を振り回し、大和は逃げる。「もう艦娘なんてやだあああっ!」逃げ切ったら辞表を出そう。そう考えた大和の目の前に、砲を構えた戦艦棲姫がいた。「うそっ」「追いつめたぞ!」背中の巨人が雄叫びを上げた。7
2017-10-18 20:48:02引き金を引くその瞬間、戦艦棲姫の顔に何かがぶつかった。「ッ!?」一瞬ぶれた狙いは、砲弾を大和から外し、その頬を掠めるに留まった。「チイッ!何だ一体!」顔に当たったものを見た戦艦棲姫は目を丸くした。海面に浮かぶのは、「正義」と書かれた扇子だった。8
2017-10-18 20:51:02「なんだこれ」「そこまでだ」戦艦棲姫が顔を上げると、そこには新たな深海棲艦の群れがいた。増援かと思ったが、腰に刀を差したリ級など知らない。リ級は戦艦棲姫に話し始める。9
2017-10-18 20:54:20「東洋艦隊副隊長、レパルスよ。上司の敵討ちの心意気は天晴れである。だが、そのために遠征軍を私物化し、あまつさえこのように戦意の無き者をいたぶるとは、もはやその所行、見過ごすわけにはいかん」「副隊長に向かって何を言うか、無礼者が!」部下の深海棲艦が言い返した。10
2017-10-18 20:55:05「愚か者。余の顔、見忘れたか」「なにぃ……?」戦艦棲姫は目を細め、リ級の顔を見た。すると、その脳裏にある記憶が蘇った。かつて、彼女が南イタリア深海共和国に攻め込んだ時、深海棲艦にも関わらず刀を振るって戦い、10倍の戦力を覆したリ級がいた。彼女の渾名は。11
2017-10-18 20:57:03「将軍……!?」「しょ、将軍ですと!?」イタリア最強とも言われる無双の戦士を前にして、深海棲艦たちに戦慄が走った。大和に至っては思わずその場に土下座してしまう程であった。「退け、レパルス。同朋とは戦いたくない。客人を見逃せば、我々も今後スエズには近付かないことを約束しよう」12
2017-10-18 21:00:13「……ふっ、ははははは!」身構えていた戦艦棲姫が笑い出した。「それで貴様がスエズから退くなら安いものだな」「なら」「だがっ!」戦艦棲姫は砲を構えた。「その人間だけは別だ!者共、出遭え、出遭えぃっ!」深海棲艦たちが左右に展開する!「……やむを得まい!」リ級は腰の刀を抜いた。13
2017-10-18 21:04:11大仏が拳を繰り上げた。「パンチが来るぞォ!」「みんな離れろ!」マルタ騎士団は急速離脱、振り下ろされた拳を避ける。大仏の拳が海を抉り、大波を作り出す!「うわあああ!」「チクショウ、流される!」「怯むな!丸太を支えにするんだ!」何人かの深海棲艦は、丸太で波を凌いでいた。15
2017-10-18 21:07:03波を凌いだアクィラは大仏に近づき、丸太を振り回した!「フンッ!」青銅の足に大質量が叩きつけられる!だが、それだけだ。少し凹んだが、大仏の巨体には実質ノーダメージ!大仏は意に介さず蹴りを放つ!「うおおっ!?」アクィラの体が空中に投げ出される!16
2017-10-18 21:09:06「アクィラさん!?」「いや、待て!」吹き飛ばされたアクィラは、大仏の頭に錨を投げつけた。螺髪の1つに錨が絡みつく。すると、錨の巻取り機構が働き、アクィラの体は大仏に向かって引き寄せられた。大仏の頭に回転着地するアクィラ。その足元、大仏の肩の上には戦艦仏(ブッダ)棲姫がいた。17
2017-10-18 21:12:08「アナタ……!」戦艦仏棲姫は、ギリ、と歯を鳴らす。「どうした。見下ろすのは好きでも、見下されるのは嫌いか?」アクィラは丸太を構えた。「キライよ……しつこい人、キ・ラ・イ!」戦艦仏棲姫は副砲を抜き放ち、アクィラに向かって発砲!アクィラはこれをジャンプして回避!18
2017-10-18 21:15:07空中に跳んだアクィラを逃さず、戦艦仏棲姫は機銃を展開!「どきなさい!」無数の銃弾が襲いかかる!空中のアクィラに避ける術は無い!そこでアクィラは丸太を盾にした。マルタ産に自生する強靭な丸太は、機銃弾をやすやすと跳ね返す!「オオオオオッ!」そのまま丸太を振り下ろす!19
2017-10-18 21:18:02「ぐうっ!?」両腕で丸太を受け止めた戦艦仏棲姫に、強烈な衝撃が襲いかかる!「こ、のぉ!」反動を覚悟で、副砲を発射!丸太が砕け散ったが、アクィラは寸前で避けた。「何よ、アナタ……!」深海棲艦にも関わらず人間に味方し、自分を追い詰めるアクィラに、戦艦仏棲姫は不快感を覚えていた。20
2017-10-18 21:21:10「この、深海の裏切り者め!」「そうだ、裏切り者だ」アクィラは拳を握り締めた。「裏切り者の名を受けて、全てを捨てて戦う女だ!」戦艦仏棲姫に向け踏み込む!「アクィラチョップ!」「グワーッ!?」顔面に拳が直撃!「チョ……!?パンチじゃない!?」「アクィラチョップはパンチ力だ!」21
2017-10-18 21:24:05