「今この世界に恐竜は存在していない」と話す人の前に、恐竜の化石を持った別の人間が現れ「ここに恐竜の化石があるのだから今この世界にも恐竜は存在している」と答えたとする。
2017-10-21 10:00:40しかしこの主張は容易に退けられる。すなわちそれはただの化石であって存在はしていても生存はしていない。生存している恐竜は動き回り、吠え、何かを食べ、足跡を残し、卵を産む。生存している恐竜は生きている限り自ら世界に新たなる情報を生み出し続ける。化石はただ化石としてそこにあるだけである
2017-10-21 10:07:29生物が自己の子孫を残すことを第一命題としている背景には、この新たな情報を生み出しうる存在の座から脱落することを回避する意味合いがあるものと考えられる。ある個体が子孫を残せずこの世から消えたとき、その個体と個体に連なる過去の系譜の情報はただの化石的なものとして停止する。
2017-10-21 10:13:02そのため、絶滅してしまった恐竜は、自ら新たなる情報を生み出すことができないという点において、今この世界に存在してはいない。しかしここで映画「ジュラシックパーク」における、恐竜復活の事例について考えてみるとどうなるか。
2017-10-21 10:25:55映画「ジュラシックパーク」においては、琥珀の中に太古の蚊の死体が、腐敗することのないほぼ完璧な状態で閉じ込められているところを発見され、その体内に蓄えられていた恐竜の血液からDNAを採取し、クローン体の恐竜を現世によみがえらせるという設定がなされていた。
2017-10-21 10:29:36実際今の地球上に、同じ状態を満たした琥珀が存在しているかどうか、また恐竜のDNAが得られたところで、これを個体として再生させるためのバイオテクノロジーを用意できるかどうかは別とし、もしこの方法で恐竜を甦らせられる可能性があるとするなら、
2017-10-21 10:37:39恐竜のDNAを保管した琥珀が地中に眠っている限り、恐竜は潜在的に未だこの世に存在している(自ら新たなる情報を生み出しうる存在として)こととなる。化石の事例と異なるのは、化石は単に生物の骨の形態の記録に過ぎないのに対し、遺伝子はそれ自体で生きた個体そのものを再構成しうる
2017-10-21 10:40:50極めて密度の高い情報である点による。生物はこの遺伝子という特別な物質を、機能可能な状態で保管し続ける上で子孫を残す以外に術はない。遺伝子はそれ自体はただの物質であるに過ぎず、そこに記された情報を具体的な形に翻訳するためには細胞、すなわち生きた個体の働きを借りなければならない。
2017-10-21 11:03:55そのため生物は生きた個体の途絶=絶滅をひどく嫌う。一度これがおきてしまうとそれにつながる系譜の情報は化石化し、二度と新たなる情報を生み出しうる存在に回帰することができない。この経験則的理解をもとに、我々は生存している恐竜がいない今日恐竜というものはこの世に存在していないと考える。
2017-10-21 10:48:58しかし生きた個体から切り離された単なる物質としての遺伝子を元に、再び生きた個体を生み出せるようになった時、この概念は大きく揺らぐ。生きている状態の断絶=存在の消滅という関係は必ずしも当てはまらなくなる。生存した個体がおらずとも、そのDNAがどこかに保管されている限り
2017-10-21 10:50:58自ら新しい情報を生み出しうる者として恐竜は潜在的に存在している。そしてこれはもちろん恐竜以外にも、またDNA以外の情報についても当てはめることができる。
2017-10-21 10:53:40例えば、今生きている人間の思考、記憶、自我を考えられるあらゆる手法を使って保管し、これを元に将来、元の人間につながる存在として、人格として復元させることが可能であったとする。この場合、今現在その技術は確立されていなくとも、その記録は単なる化石的なものではなく
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