実話系怪談としての『遠野物語』

柳田國男の『遠野物語』(1910)を、今でいうところの「実話系怪談」本として積極的に誤読しようとするボンクラのつぶやき。 『遠野物語』で語られる河童は、決して現在の岩手県遠野市のご当地キャラクター「カリン」のような可愛らしいものではなく、人妻を寝取って孕ませるような存在であった、というお話から、散漫な考えをつぶやきます。 発言を引用されている方で、引用不可の方はご連絡下さい。
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小山田浩史 @magonia00

岩手県遠野市はご当地キャラクターを河童の「カリン」にするほどに、観光資源として『遠野物語』的な世界観を有効活用している。しかし実は、『遠野物語』での河童の話は、エロゲヲタ用語でいうと「人妻NT(寝取り)、HR(孕ませ)」というなかなかにエグいジャンルなんである。残虐描写もあるよ!

2011-03-25 21:24:13
小山田浩史 @magonia00

『川には河童多く住めり。猿ヶ石川ことに多し。松崎村の川端の家にて、二台まで続けて河童の子を孕みたる者あり。生まれし子は斬り刻みて一升樽に入れ、土中に埋めたり。その形きわめて醜怪なるものなりき』(『遠野物語』55段)二代に渡るNTR人外HRとんでもないエロガッパきたで!

2011-03-25 21:29:59
小山田浩史 @magonia00

ツイート訂正:二台まで→二代まで この後、河童による人妻寝取りの詳細とか、難産だったのをどうやって産み落としたのかとか、産まれた子どもの手には水掻きがあったとか、洒落にならない生臭いリアリティを伴った話が語られます。興味のある方はご自分で確認されてみるのがよろしいかと。

2011-03-25 21:35:34
小山田浩史 @magonia00

『遠野物語』のこの河童によるNTR/HR譚、色々と深読みはできる。真相は単なる人間相手の浮気で、不義密通の相手をとりあえず「河童」ということにしておいて、産まれた子どもも「河童の子だから」との名目で間引いたという現実的な解釈もアリだとは思います。…が、「なぜ河童なんだ?」

2011-03-25 21:44:25
@tikuwa_ore

@magonia00 現在と違い、実証能力どころかその有効性すら理解されていなかった時代ですから、問題の原因を怪異にセットすれば大抵の人間からの疑惑や疑念は避けられたという事ではないでしょうか。一方でそれを利用する層は昔から居たと考えると面白いかも知れません。

2011-03-25 22:02:54
@tikuwa_ore

@magonia00 この場合、当時メジャーな怪異が『河童』であり、例えば『河童』が『リトルグレイ』になろうが『チュパカブラ』になろうが、怪異を持ち出した人物の動機とその目的は大筋で変化しません。

2011-03-25 22:05:52
@tikuwa_ore

@magonia00 一方で例えばこれが『ろくろ首』になると、人の成分が多すぎて疑惑が深まる。『河童』というのは当時の人の生活文化圏の中で極めて人に近い怪異でありながら、決して人ではない怪異としてメジャーだったのかな、と。推察以前の個人的な見解ですので、お見苦しい場合はご容赦。

2011-03-25 22:08:37
小山田浩史 @magonia00

@tikuwa_ore 私の問題意識は「人妻の不倫相手として、『妖怪』を持ち出すのなら他にも天狗や山人(どちらも『遠野物語』の他の話に登場します)でもよかったハズ。なぜ『河童』が選ばれたのか?遠野では『河童』はそういうことをする存在と考えられていたのか?」という辺りにあります。

2011-03-25 22:09:39
@tikuwa_ore

@magonia00 入れ違いで同様の内容をツイートしていますが、改めて。伝承による『河童』の来歴や容姿を考えると、明らかに人でないものでありつつ、人に近い生活文化を匂わせる背景を持つ『河童』は、面倒を押し付ける相手として有益だったのではないでしょうか。

2011-03-25 22:25:32
@tikuwa_ore

@magonia00 天狗に関しては山神として扱われていますから怪異よりも神異寄りですし、いわゆる修験者スタイルになったのは中世以降の創作です。山人はそのまま人ですから、「相手を出せ」と要求されれば困りますよね。その違いではないでしょうか。お気に障ったなら流してください。

2011-03-25 22:31:12
小山田浩史 @magonia00

@tikuwa_ore 遠野で語られる「妖怪」のなかでは、おそらくtikuwa_oreさんのおっしゃるとおりで、河童がこういう話に最もふさわしい存在だったんだろうと思います。ただ、当時の遠野で「河童」にどんな文化的な意味があったのか、というのはちょっと注意しておきたいと思ってます

2011-03-25 23:39:56
小山田浩史 @magonia00

個人的には『遠野物語』は、佐々木喜善をネタモトに柳田國男が書いた『本当にあった遠野の怖い話』的な(実話)怪談本というところが少なからずあるンじゃねえかなぁ、と最近思うようになった。当時の文壇の「怪談ブーム」と『遠野物語』の関係については最近『遠野物語と怪談の時代』なんて本も出てる

2011-03-25 22:00:14
小山田浩史 @magonia00

妖怪と人間の異種交配(よりキレイな言い方をすれば『異類婚姻譚』)、という想像力が行き着くところが「手には水掻きあり」「きわめて醜怪なるもの」で、最後には「斬り刻みて一升樽に入れ、土中に埋め」てしまう、というのは、結局は人間と妖怪の間に「越えられない壁」があるということなんだろうな

2011-03-25 22:21:42
小山田浩史 @magonia00

『遠野物語』で語られる話は実は、そんなに遠い過去の話ではなくて、佐々木喜善(1886-1933)が子供のころに祖父からよく聴いた話がモトになっているわけだから、江戸末期から明治初期の遠野の「世間話」も多いンじゃないかって気もしている。そうするとさっきの河童の話も嫌なリアリティ。

2011-03-25 23:45:21
小山田浩史 @magonia00

『遠野物語』では、ある家が茸の毒に中ってほぼ全滅したという「事件」を、その家からザシキワラシが去ったからだ、とする「おはなし」として取り上げているんだけど、これとかもう完全にご近所の噂話」って感じでいとおかし。伝説ってレベルじゃねーぞ!と。喜善にとっては「地元の怪談」だろう。

2011-03-25 23:50:02
小山田浩史 @magonia00

神隠しに遭って行方不明になった女性が数十年後のある日、一日だけ遠野の里に下りてきたっていう「寒戸(サムト)の婆」の話も、当時の遠野の人たちにとってはそんなに過去の話じゃないはず。「今でも風の騒がしき日には、けふはサムトの婆(ばば)が帰って来さうな日なりと云ふ」はいいオチ。

2011-03-26 00:05:46
小山田浩史 @magonia00

現代の我々が『遠野物語』を読むときに、勝手に「東北地方の『民話・伝説』の世界」と思って読むのもいいンだけど、この本の成立に関しての色々を考えてみると、当時の遠野に流布していた『世間話』」という、時間的にそれほど断絶していない地続きの世界として捉えるのもアリかなぁ、と思うわけです

2011-03-26 00:16:51
小山田浩史 @magonia00

それは安易に牧歌的な意味で「ザシキワラシや河童が人間の身近にいる」世界というよりは、「近所の家の嫁さんが不倫して子どもまで産んだが、相手は河童なんだってさ。赤ん坊の手には水掻きがあったらしいよ」などという生臭いリアリティの世界だったンじゃないですかね。実話系怪談の世界。

2011-03-26 00:23:35
Чебурашка(類似品に注意) @tokoyo

@magonia00 今、書物が手元にありませんが、「妖怪談義」の中で、泉鏡花が「遠野物語」について何処にで唖藻有るような話との感想を述べたのに対して、柳田がどこにでも有るような話を集めたと書いていた記憶があります。

2011-03-26 00:27:25
小山田浩史 @magonia00

初めまして。柳田は『遠野物語』の序文で「「願はくは之を語りて平地人を戦慄せしめよ」と書いてますね。遠野の人にとっては普通のよくある話でも、近代化真っ最中の「平地人」たちにはそうじゃないだろう、という意識はあったのだと思います。その辺りのズレも面白いかと。 @tokoyo

2011-03-26 00:37:54
Чебурашка(類似品に注意) @tokoyo

@magonia00 挨拶が遅れましたが、こちらこそ初めまして。柳田の序文は忘れておりました。平地人との表現には、当時の柳田の山民観があるのでしょうが、今読むと明治以後の都市民の発生とか、色々と考えてしまいます。

2011-03-26 00:45:06
ふろっぴー @kahu50

初めまして。でも『日本霊異記』に狐と結婚する話がありますよね。バレて逃げますが、人間の夫が長年夫婦として暮らして子供までなしたのだからいつでも「来つ寝」が狐になったという話。おおらかな感じで好きです。@magonia00 //結局は人間と妖怪の間に「越えられない壁」がある

2011-03-26 01:05:25
小山田浩史 @magonia00

@kahu50 初めまして。日本でももちろん、英雄の出生を人間と異類のハーフとする(安倍清明、坂田金時など)伝承などには事欠かないですよね。先ほどのツイートは『遠野物語』の文脈では、人間と妖怪の間にわりと残酷に線が引かれている、という意味合いです。『日本霊異記』の話、興味深いです

2011-03-26 01:21:05
ナカネくん @u_saku_n

@magonia00 (昔国会図書館で読んだ本のため記憶で書きます)後藤道雄『迷信の犯罪打診』(昭和9年)の中に、子供を殺した親が警察に「河童がやった」と主張し、かつ村人達もそれを信じていた、という話がありました。これ読んだ時、河童と間引きの話は日本に広くあったのではと感じました

2011-03-26 11:58:44
小山田浩史 @magonia00

@u_saku_n 興味深い事例の情報、ありがとうございます。日本では百年くらい前までは、民俗社会の一部には「妖怪の仕業」という言説に一定のリアリティがあったのかもしれませんね。間引きと河童の関連については、何か意味があるのか、調べてみたいと思います。

2011-03-26 12:20:43