マイアミ鎮守府特別編「Bride」 中編
【シーエム】この特別編再放送は、ご覧のコラボ先の協力にてお送りしております。 twitter.com/KNPITNG/status… コミケ二日目東K20a「ネオヨコスカ電脳ドージョー」にて彼の物理書籍版が出る。マイ鎮読者もさあしよう。 #マイ鎮特別編 【パンツクイ】
2016-07-24 23:22:20物理書籍な◆C90土 東K20a◆ 死神誕生の瞬間を描いた新作+完全リファインの6作を収録 表紙・挿絵に空音=サンを迎え、#鎮守府の日常 や設定資料まである豪華版だ マッポー都市ネオヨコスカで生きる艦娘達の姿を存分に味わって欲しい。 pic.twitter.com/noc5B021qG
2016-07-18 20:43:53…目が覚めると<ジョーンズ>は自宅にいた。ペナンの貧民街の一角に彼の家はあった。うらぶれた外見と違い、内装は彼の収入にふさわしく見事な調度品で飾られている。その中でも一際見事で彼の自慢としている調度品は冷蔵庫、そしてキッチンだ。 #マイ鎮特別編
2016-08-06 22:35:28彼の冷蔵庫は優に3人の少女を収容できるほど大きく、彼のキッチンはそれらを解体するためのスペースと道具が詰まっている。彼の「夢の空間」というやつだ。そして今天狗面の男に連れ去られたはずの彼がいるのが、その「夢の空間」だった。彼の五体はキッチンに縛り付けられている。 #マイ鎮特別編
2016-08-06 22:35:52「吹雪、どこだ!助けにこい!」いつものように<ジョーンズ>は彼女を呼ぶ。彼は今までなんでも彼女にやらせてきた。自分に対する「奉仕」に始まり、食材の調達、調理まで何でもだ。 彼女はすぐに答える。そうしなければ懲罰が一層ひどくなる。 時には、答えてもそうであったが。 #マイ鎮特別編
2016-08-06 22:36:44そして今回も、吹雪の返事は早かった。 「はい」 縛り付けられた<ジョーンズ>のすぐ後ろから、吹雪の声がする。 「今すぐこれを外せ。それから…クソッ、傷の手当もだ…すぐにしろ。でないとまた”教育”だぞ」 通常であればすぐに吹雪は応じる。 だが今日は違った。 #マイ鎮特別編
2016-08-06 22:38:30「できません」 直後、<ジョーンズ>の頭に鉄棒が振り下ろされる。 こめかみが裂け肉が千切れ、鮮血が彼の視界を浸していく。突然の殴打に<ジョーンズ>は罵倒も出来ず、ただ悲鳴を上げるだけだった。ぎちり、と鉄棒の軋む音。艦娘の握力の現れ。そして、風を切る音が、彼の耳へ。 #マイ鎮特別編
2016-08-06 22:40:25一発、二発。 「あの方」に言われたように、殺さないよう、そして最大限の恐怖とショックを与えるよう。吹雪は自分を支配してきた男の顔に鉄棒を振り下ろし続ける。手から伝わる感触が硬さから柔らかさへと変わった頃、ようやく吹雪の手が止まる。 「次は」上気した顔で吹雪が問う。 #マイ鎮特別編
2016-08-06 22:42:35「次はどうすれば良いと思う?ねえ」 吹雪は自分の後ろの影に問う。黒く盛り上がったその影は、吹雪に語りかけることはない。ただそれはくぐもった、複数の少女たちの笑い声だけを響かせている。だがそれだけで、自分に何をすべきか、吹雪には充分理解できた。「そっか…頑張るね」 #マイ鎮特別編
2016-08-06 22:43:12いつものように吹雪は準備をする。 小瓶、大瓶、ラップにまな板。よく研いだ包丁を数本、煮立った油を入れたお鍋。ミキサー。ドリル。鋸。手際よく準備する。少女たちの笑い声が一層大きくなる。「待っててね、もうすぐだから」影に語りかける吹雪。楽しくなって、ラジオもつける。 #マイ鎮特別編
2016-08-06 22:43:39「unforgettable…」数十年前のジャズ・ピアニストの曲がラジオから流れる。吹雪の好きなナンバーだ。「unforgettable」吹雪も思わず真似して口ずさむ。そして包丁を取り出し、ライターで炙り、血まみれの<ジョーンズ>の腹にそれをゆっくりと、走らせた。 #マイ鎮特別編
2016-08-06 22:44:02全てが終わった後、影から手が伸びる。白く大きな手。 「もう、良いか」 「これで、自由になるんですね」 「そうだ。これが終われば、君はもう自由だ」 低く落ち着いた男性の声。父性を感じるその声色につづいて、少女たちの笑い声が聞こえる。 #マイ鎮特別編
2016-08-06 22:45:41「あなたは」吹雪が”それ”に話しかけようとして、一瞬口ごもる。「…あなたたちは、これからどうするの」 沈黙。少女たちの声が収まる。そして、「やらねばならぬことがあるのだ。こいつらのためにも、私のためにも」 白熱灯が一瞬、"それ"の赤い鼻先を照らす。 #マイ鎮特別編
2016-08-06 22:48:33傷だらけの、汚れきった鼻先。 「いつまで」 言葉は帰ってこない。 ただ白熱灯の揺らぎが、時折長く伸びた鼻先を映し出すだけだ。 吹雪は一歩、足を踏み出す。そして”それ”に背中を向ける。 「…元気でね」 にゃあ、と間延びする声が、吹雪の耳に届いた。 #マイ鎮特別編
2016-08-06 22:51:28天狗顔との遭遇から一夜明けた早朝。マイアミ提督は羽黒をホテルに残し、ぶらぶらと街中を歩いていた。南方特有の蒸し暑さはあるが、朝でまだ日も昇らず、人通りも少なく、散歩にはうってつけの環境だった。 #マイ鎮特別編
2016-08-06 22:53:58サンダルで汚れたコンクリートの上を歩きつつ、彼は思う。 天狗面の男。艦娘と対等以上に戦い、肉体を自在に変容させる男。あの男に殺された連中は、皆艦娘に対してむごたらしい振る舞いをし、そして自らの振る舞いと同じぐらいの残虐をその身に刻まれることになった。#マイ鎮特別編
2016-08-06 22:54:28裁きとは罪に応じた報いを、罪人に与える事だ。 裁きを為すのは法であり、人だ。だがこの世界にそれを為せるものはいない。軍閥同士が己の欲をぶつけ合い争うこの世界においては、誰かの罪を裁く能力や資格を持つ者など誰もいない。裁定者なき罪人の世界。 #マイ鎮特別編
2016-08-06 22:55:08ならばこの世界にあって裁きを行いうるものは、神しかいない。神のみが裁き得る。彼はそうなのか? 彼は神か? それはわからない。だが彼は彼自身を神と思っているのかもしれない。かくも残酷に迷いなく、人を裁けるのだから。ブルーグレイの街を歩きながら、マイアミ提督は考える。 #マイ鎮特別編
2016-08-06 22:55:35ーー奴はこの世界をどう見るのか。 「うっわだっせえ!」 騒音が思考を中断させる。彼は歩みを止める。あたりを見回すと、3人の人影が見える。2人は女、おそらく酒に酔っている。軍人らしい。もう一人は男、多少不格好だが、これもまた軍人だ。 #マイ鎮特別編
2016-08-06 22:56:14「返せよ、これから行列に並ばなきゃいけないんだ!」軍服の男が女2人に詰め寄る。女の手には彼から奪ったと見られる、何かのカタログらしきものが握られている。「うっせえんだよ、<ケッコン>だからって調子くれてんじゃねえよ」女の1人が男に蹴りを食らわし、男は無様に倒れる。 #マイ鎮特別編
2016-08-06 22:56:48「うっわ、こいつこんなもんにマルつけてやがる!キッモ」カタログをひらひらさせて、女が片割れに指でその箇所を指し示す。「煎餅布団…うっそ、こいつと艦娘ちゃんが寝るっての?ありえないんだけどマジで」片割れが手を激しく振り、次いでわざとらしく身震いする。 #マイ鎮特別編
2016-08-06 23:05:32「あんたみたいな汚いのがいるとね、正直提督のイメージ下がるし、艦娘ちゃんの志気だってだだ下がりなのよ」 「よくいるよねー。金にあかせて無理やり強化させたくせに調子こいて恋心抱く提督。ほーんと、艦娘ちゃんがかわいそう」2人の罵倒は酒も混じって容赦がない。そして煩い。#マイ鎮特別編
2016-08-06 23:05:47