Etymology Travel 英単語のルーツをたどる旅

英単語の語源を探る気ままな旅。寺澤芳雄編集主幹『英語語源辞典』をはじめ、寺澤盾『英語の歴史』などの書籍、Google Etymology Search、Online Etymology Dictionaryを参照しています。
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ignition

fujiokashinya @fujiokashinya

英語ignitionのルーツはラテン語ignis(火)。ignisから動詞ignīre(火を点ける)が生まれ、中世ラテン語でignītiō(n-)という形になり、ラテン語から直接またはフランス語を経由して英語に入りました。17世紀初頭に化学用語として使われ、19世紀からは一般的に「発火、引火」の意味で使われています。

2017-12-07 12:32:50
fujiokashinya @fujiokashinya

「迷わずに今」で一部にお馴染みの動詞igniteは、ラテン語ignīreの過去分詞ignītusが変化して英語に入ったものです。ラテン語で-īreという語尾を持つ動詞は過去分詞になると語尾が-ītusとなり、英語に入るときに-iteと変わる法則があるそうな。

2017-12-07 12:34:49

sequence

fujiokashinya @fujiokashinya

英語sequenceは14世紀末に「続唱」という意味で記録されています。もとになったのはラテン語sequentiaです。ラテン語の中でさらに遡るとsequentem(続くこと、追いかけること)、さらにさらに遡るとsequī(~の後に続く)にたどり着きます。

2017-12-07 20:20:18
fujiokashinya @fujiokashinya

続唱とはカトリックの聖歌の一種であり、「前の歌に続いて歌われる」ことからそう呼ばれるようになったそうな。9世紀以降に西欧で生まれ、多くが16世紀に廃止されました。そして、「連続」という意味のsequenceは16世紀末、シェイクスピアの戯曲「リチャード二世」に見られます。

2017-12-07 20:22:18

start

fujiokashinya @fujiokashinya

英語startの中英語には、スペルの異なる3つの方言(ブリテン島中西部・南部、中東部・北部、ケント)があり、今のstartはケント方言stertenが変化したものとされます。中英語では、rの前のeがaに変化する傾向があるそうな。古英語に遡ろうとすると記録がないらしく、styrtanと推測されています。

2017-12-07 22:14:02
fujiokashinya @fujiokashinya

かつてstartは「突然動く、跳ねる」という意味で使われていたそうです。「跳ねる」の意味は失われたとされますが、その代わりというべきか、16世紀後半からは「動き出すこと、出発」という意味が見られます。「自分の意思ではない動き」に一般的な「動く」の意味が加わり、シフトしていったようです。

2017-12-07 22:36:18

impression

fujiokashinya @fujiokashinya

impression(印象、跡)はラテン語のimprimere(in-+premere:中に+押す)に端を発し、古フランス語を経て英語に入ってきたと考えられています。13世紀には古フランス語でimpressionというスペルが見られますが、英語のimpressionが見られるのは、14世紀後半のチョーサーの著作です。

2017-11-21 12:41:01
fujiokashinya @fujiokashinya

11世紀後半のNorman Conquestによって、イングランドは大陸のノルマンディー公国の支配を受けるようになり、支配層の公用語は古フランス語(特にノルマンディー地方の方言)となります。その影響で次第に古フランス語が英語に流れ込み、14世紀には古フランス語の単語が数多く定着していたと思います。

2017-11-21 12:42:33
fujiokashinya @fujiokashinya

『カンタベリー物語』で知られるチョーサーは、支配層のフランス語や教会で使われていたラテン語ではなく、市井で話されていた英語を使って作品を書いた作家です。古英語・中英語・近代英語・現代英語というように英語は変化と発展を続けてきましたが、チョーサーの時代は中英語にあたります。

2017-11-21 12:43:51
fujiokashinya @fujiokashinya

impressionもフランスから海を渡ってイングランドに入ってきた言葉のひとつです。語源を追うと、国が最初から国として成立していたわけではないように、言葉も生きて変化するプロセスがあったことが分かります。そして、それを記録した人がいたからこそ遡ることができます。痕跡は貴重なheritageです。

2017-11-21 12:47:18

travel/travail

fujiokashinya @fujiokashinya

travel(旅する、旅行)は、travail(苦労する、骨折り)の異形として生まれた語です。スペルが少し違っても同じ意味を持ち、混在して使われていました(区別されるのは18世紀)。そのためか、travelは旅は旅でも「苦労して旅する」という意味を持っていました。では、travailの語源とは何か。

2017-11-15 22:06:21
fujiokashinya @fujiokashinya

travailの中英語travail(e)は、後期ラテン語tripāliumに由来する古フランス語から入ってきて、この時点で「苦労する、労苦」という意味を持っていました。その後、14世紀頃に「旅行する」の意味が発達して、さらにtravele(n)という綴りも使われるようになり、やがてtravailとtravelに分かれる。

2017-11-15 22:07:34
fujiokashinya @fujiokashinya

当時の交通手段を考えれば、旅なんて命がけですよね。後期ラテン語のtripāliumは「拷問器具」を意味するので(さらに遡るとtripālisなのですが、これを分解するとtrēs+pālus[3本の杭]だそうで…)、travelが持つ意味の重さがよく分かります。重すぎな気がしますが。

2017-11-15 22:08:44
fujiokashinya @fujiokashinya

フランス語にもtravailという語があり、古フランス語の時点で「労苦」の意味を持っていましたが、フランス語として発展する中で「働く」という意味が発達します。この点について、英語のtravailには「働く」という意味が発達しなかったのは、workがあったからとされています。

2017-11-15 22:09:41
fujiokashinya @fujiokashinya

一方、英語のtravailには「(苦労して)旅行する」という意味が発達し、その意味は同義だったtravelが担っていきましたが、フランス語のtravailには「旅行する」という意味は発達しませんでした。フランス語にはvoyageという語があったためです。使わない器官は退化する生物のようですね。

2017-11-15 22:11:15

day

fujiokashinya @fujiokashinya

dayのルーツは中英語dai、古英語dæg。ドイツ語Tag、オランダ語dag、古ノルド語dagrなども同じゲルマン語派なので綴りが似ています。一方、イタリック語派ではラテン語diēs、フランス語jour、スペイン語día、イタリア語giorno。ラテン語から派生したわりには、フランス語もイタリア語も似ていませんね。

2017-11-09 22:38:13
fujiokashinya @fujiokashinya

少し驚いたのは、ゲルマン語派とイタリック語派では違う意味の語から派生したと推測されていること。前者は「昼間」を意味する語から、後者は「輝くこと」を意味する語から。dから始まる綴りだけを見ると英語dayもラテン語diēsも同源に見えますが、別々のルートをたどっていたわけですね。

2017-11-09 22:50:04
fujiokashinya @fujiokashinya

古代ゲルマン民族は日数をdayではなくnightで数えたそうです。その名残りが見られる現代英語sennightは「一週間」を表わしますが、古英語はseofon nihta(=seven nights)とのことです。なので、「僕らの七日間戦争」の主題歌はSeven Nights Warになっていた…かもしれない。

2017-11-09 22:55:52

complex/complicated