ストレイトロード:ルート140(30周目)
- Rista_Bakeya
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私と藍を引き合わせた友人に再会した。私は以前にも何度か仕事を斡旋してもらったので、あの輸送依頼も疑うことなく請け負ったが、一つ気になっていた。風の魔女に何と言って私を薦めたのか。デタラメと言われかねない酷い経歴を「そのまま伝えた」と彼は答えた。「相手は子供だ、誤魔化しは効かない」
2017-09-10 19:12:46140文字で描く練習、1451。斡旋。 今回から通常モードに戻りました。 1450までと直接のつながりはありません。
2017-09-10 19:13:42怪物と戦う藍に取材が入った。クルーを攻撃に巻き込まないよう頼んでから送り出すと、怪物に逃げられたと憤りながら戻ってきた。「あなたが余計なこと言うから気が散ったじゃない!」翌日、再挑戦を決めた藍を、何も言わず送り出した。今度は実力を遺憾なく振るい、青ざめたクルーを連れて戻ってきた。
2017-09-11 19:24:03「お願いです。あの雨雲をライブ会場から遠ざけてください」藍に頼み込む演奏家の隣で責任者が眉をひそめた。「魔女に頼るなんて邪道かもしれない。けど誰もリーダーを止められなくて」ポスターには雨天決行の表記。だが彼らの後ろで一人吼える男には、雨天どころか雷雨でも強行しそうな気迫を感じた。
2017-09-12 19:44:05その町の象徴は怪物の被害を唯一免れた煙突だった。「なぜいつも煙が出てると思う?」案内役が藍にクイズを出した。「町の場所が分かるから?」周囲に肩を並べる建造物がない今、その煙は遠方からも見えるだろう。だが理由は他にもあるという。「いつも火が燃えている場所に巣は作れるかな?」「あっ」
2017-09-13 20:42:44私の目には箱形の建物しか見えないが、藍はその中に温室があると言う。「倉庫に囲まれてるの」この場所を上から見られるのは、鳥か怪物か風の魔女ぐらいだ。私は地上で話を聞くしかない。「何故こんな構造に?」「風対策ですよ」農園の職員が答えた。「温室が壊れるたびに作物が動物に襲われるもので」
2017-09-14 19:14:07車に積まれた食糧は既に缶詰しか残っていない。藍は私の準備不足を正面からなじり、私は藍が後先考えず調理した可能性をそれとなく探った。「充分な量が購入したことは貴女も確認したはず」「失敗した料理はあなたが食べたでしょ?」ぶつかる主張を腹の音が止めた。生き延びることを優先するしかない。
2017-09-15 19:30:26図書館の庭に設置された望遠鏡は今、西の空に輝く金星に照準を合わせてある。近隣の村から集まった子供達がレンズを代わる代わる覗いては歓声を上げた。ちゃっかり藍も順番待ちの列に加わっている。「彼女も普通の女の子。あなたが言った通りでした」望遠鏡の所有者が、私にだけ聞こえるように言った。
2017-09-16 19:56:23山小屋の主から燻製の手順を教わることになった。藍は私だけが習うものと思って話を聞いていたようだが、彼は私に分け与えた材料と同じものを藍にも渡した。手伝いならまだしも少女に窯作りから実践させるとは。その理由にも驚いた。「召使いがくたばってもお嬢様が生き延びるにはこれぐらい要るだろ」
2017-09-17 19:16:28次の目的地までのルートを二人で検討していると、テーブルの下で遊んでいた子犬が私の足にじゃれついた。今は藍が真剣に話しているので耳を傾けるつもりでいたが、子犬も負けじと邪魔してくる。靴を奪われ足首に噛みつかれ、一時中断を願い出ようかと考え始めた矢先、藍に顔を見られた。「聞いてる?」
2017-09-18 20:03:14紺碧の夜が来た。大地が震え、森の奥から鳥の群れが逃げ去った。幾多の街を炎に包み、同類の縄張りをも奪う強欲な怪物が、予定通りお目覚めらしい。藍の見通しが正しければ、それは昼の侵入者の痕跡を辿って谷底へ向かう。私達は後を追う。もし撃ち損じたら山火事になると言われた。失敗は許されない。
2017-09-19 19:19:58私達は壊れた街から逃れた人々の足跡を追い、近くの山に入った。崖下の隠れ里は急造と思えない整った村だった。この地では昔の内戦の折、敵対派閥の残党が山に潜んだとの言い伝えがあるという。「奴等を追い出したのが我々の先祖だ」敵の遺産を複雑な表情で眺める住人に、藍が今の敵の出現を知らせた。
2017-09-20 19:53:40赤いスカーフを巻いた集団が、怪物に荒らされたらしい畑の片付けに勤しんでいた。「あの人たち、どこかで見たことある気がする」藍は畑の近くに車を止めさせ、私に情報収集を命じた。だが、彼らが深紅の女に心酔する人々だと聞いた途端、撤収を指示した。自分の位置を知らされることを恐れたのだろう。
2017-09-21 21:15:52私が買い出しに奔走する間、藍は公園から一歩も出なかったらしい。見つけたときには大道芸人達による寸劇を見ていた。「別にたいしたことなかった」彼らが置いた缶にそれなりの額面の硬貨を投げ入れながら、彼女はすました顔で私に言った。笑いを堪える姿を目撃したことは黙っておいた方が良さそうだ。
2017-09-22 19:07:58