「犬吠埼に風力発電所を作ると東電の電力を全部賄える」という説の原典を読みといてみた

結論:肯定派も否定派も、読みたいところしか読んでない。 「(物理的に)引き出すことができるエネルギーがこれだけある」というのと「これだけ発電できる」というのは全く違うことです。 だから仮に作ったとしたら「全部賄える」ということすら、この研究から読み取ることはできません。 一方で「こんなのはあり得ない想定だ、荒唐無稽だ」というのもまた、話を読み違えています。 続きを読む
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らすべっと / Рассве́т🇺🇦 @rassvet

【犬吠埼論文】例の「犬吠埼に風力発電所を設置すれば東京電力の全電力が賄えるのに、東電はそれを隠している!」というデマがあまりに酷いので、元の論文を平易に読みといてみたよ。

2011-03-27 13:55:14
らすべっと / Рассве́т🇺🇦 @rassvet

【犬吠埼論文】本文こちら。 http://http://windeng.t.u-tokyo.ac.jp/ishihara/paper/2007-7.pdf 論文自体、ぜんぜん隠されてすらないんだけどね・・・

2011-03-27 13:55:33
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【犬吠埼論文】✄------------ 本文読解開始 ------------✄

2011-03-27 13:55:56
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【犬吠埼論文1】日本では風力発電の陸上適地不足が深刻だから、今後の洋上風力開発に際しての基礎的な資料を提供することが重要だと思うよ。なのでこの研究では関東平野と周辺の山岳地域を含む領域を対象に大地形の影響を考慮し、洋上風力発電賦存量を定量的に評価することを試みるよ。

2011-03-27 13:56:07
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【犬吠埼論文】[注釈]「風力エネルギー賦存量」とは「現在の技術で取得可能な年間の最大電力量」としている。

2011-03-27 13:57:10
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【犬吠埼論文2】この海域に定格2.4MW、ローター直径92mの風力発電機を730m間隔で敷き詰めて風力を電気に変換し続けると、年間で287TWhぐらい取り出すことができるよ。これは東京電力の05年の年間電力販売量とほぼ同じだね。 http://twitpic.com/4drzgt

2011-03-27 13:56:44
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【犬吠埼論文3】この海域の風力エネルギーのうち43.5%くらいは、水深が500mと深すぎて風力発電機を設置できなそうな場所に賦存しているし、漁業権や景観などの社会的制約も考慮しないといけないよね。 http://twitpic.com/4drzgt

2011-03-27 13:57:18
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【犬吠埼論文4】実際に使えそうな量が知りたいから、とりあえず水深20mまではすでに実用化されている着底型の基礎を用いる前提で、20mより深いとこでは浮体式の基礎の上に発電機を建てるつもりで考えてみよう。

2011-03-27 13:57:25
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【犬吠埼論文5】もちろん風にはムラがあるから、発電機がその場所で1年間稼動し続けたとして、定格出力で一年間回った場合の何%ぐらいの発電量が発揮できるのかを「設備利用率」として考えておかないといけないね。

2011-03-27 13:57:31
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【犬吠埼論文6】地上の風力発電設備だと、設備利用率が20%ぐらいないと経済的に成立しないけど、洋上は建設費やメンテナンス費がもっとかかりそうだから25%、30%、35%ぐらいは見ておこう。これでコスト的に成立するかどうかについては触れていないことには注意したい

2011-03-27 13:57:45
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【犬吠埼論文7】水深20mまでの着底型だと、たとえば施設使用率が30%になる海域は590km2の面積が確保できる。先の条件で1088基の発電機を設置して、風力を電気に変換し続けるたとしたら、どれくらいの電力になるだろうか。 http://twitpic.com/4drzoa

2011-03-27 13:58:08
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【犬吠埼論文8】この海域すべてに1088基、設備総容量261万kWのウィンドファームをつくれば、7.98Twh/年くらいの風力を取り出すことができる。東電の年間電力販売量の2.76%相当だね。 http://twitpic.com/4drzoa

2011-03-27 13:58:22
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【犬吠埼論文9】でも、590km2の面積すべてに発電機を設置できるわけではないよ。自然公園、港湾区域、漁業権設定水域を対象から除外すると、使える海域は590km2のうち、292km2しかない。

2011-03-27 13:59:26
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【犬吠埼論文10】さらに、欧州と同様に景観制限を加えると、海岸からの距離が10kmの範囲も除外されてたったの15km2になってしまう http://twitpic.com/4drzoa

2011-03-27 14:00:02
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【犬吠埼論文11】これは水深20mまでの海域は、ほとんどが沿岸10km以内にあるからなんだ。これじゃお話にならないから、海底に設置しない浮体式も併用することを考えてみるよ。

2011-03-27 14:00:18
らすべっと / Рассве́т🇺🇦 @rassvet

【犬吠埼論文12】浮体式基礎を使うことができると、条件を満たす領域は劇的に広がるね。景観制限も加えて沿岸から10km〜50kmまでの範囲で考えたとしても、6,622km2の広大な海域があるよ。 http://twitpic.com/4drzt0

2011-03-27 14:00:26
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【犬吠埼論文13】この面積があれば、先の条件で風力発電機を12,225基敷き詰めることができるだろうね。 http://twitpic.com/4drzt0

2011-03-27 14:01:05
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【犬吠埼論文14】定格2.4MWの風力発電機を12,225基設置して、合計で設備容量2,934万kW。これがすべて風力を電気に変換し続けるとすると、100.59TWh/年くらいのエネルギーは取り出せるんじゃないかな。 http://twitpic.com/4drzt0

2011-03-27 14:01:14
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【犬吠埼論文15】さらに浮体式の風力発電機によって取り出せるようになるエネルギーのうち、40%くらいは水深20〜200m、海岸から10〜30kmの海域に賦存するから、この範囲だけでも39.32TWh/年くらいにはなるんだ。 http://twitpic.com/4drzt0

2011-03-27 14:01:46
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らすべっと / Рассве́т🇺🇦 @rassvet

【犬吠埼論文16】だから、まずはこの範囲を対象に絞って技術開発や計画立案をしていくのがいいかもしれないね。 http://twitpic.com/4drzt0

2011-03-27 14:01:51
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らすべっと / Рассве́т🇺🇦 @rassvet

【犬吠埼論文】✄------------ 本文読解終了------------✄

2011-03-27 14:02:15
らすべっと / Рассве́т🇺🇦 @rassvet

【犬吠埼論文】という内容。「全部賄える」と主張している人は【2】で記されている「対象エリア全体の賦存エネルギー」をとりあげて「風力発電所を立てれば!」と言っている。これはどうしようもないねじ曲げだね。

2011-03-27 14:02:40
らすべっと / Рассве́т🇺🇦 @rassvet

【犬吠埼論文】それだけのエネルギーがあることと、現実的に使えることは違う。そのへんは本文序章でも過去の研究事例に対する問題意識として取り上げられているからね。

2011-03-27 14:02:53
らすべっと / Рассве́т🇺🇦 @rassvet

【犬吠埼論文】それと、もちろん莫大な風力発電機のメンテナンス、設置コスト、送電ロスとかその辺の技術的考察は必要だけれども、この論文の目的は「洋上風力エネルギー賦存量の評価」であって、このエリアでの風力発電の実用化を論じたものではない

2011-03-27 14:03:02