映画『シン・ゴジラ』の脚本におけるキャラクターの扱いについて庵野秀明監督が言ったこと
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ontheroadx
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以下のまとめ参照。

(1)ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ』(株式会社カラー、2016年)、P510から。 庵野(前略)怪獣が出てくる映画としての娯楽性を考えると、社会派ドラマみたく組織や所属する個人が必ず持っているマイナスの描写をあえて描く必要性を感じなかったんですね。
2017-11-10 22:07:40
(2)事象の現実を描いても、作り物の映画では現実には届かない。なので、現実ではなく観客が見たいと思う理想を描くのが、大衆娯楽としての映画のあるべき姿なのかなと。だから、ストレスを感じる状況は出してもストレスを感じる人物は出さないようにしています。
2017-11-10 22:08:16
(3)----それは一種の理想的な環境にも思えますね。 庵野 ええ。とにかく本作ではその理想を描いてみようと。映画やドラマだと、手柄だけを取りたい人や自分が責任をとるのが嫌だとか、とにかく新しいアイデアや意見を却下する上司とか。とかくコンフリクトを起こす存在がよく出てきます。
2017-11-10 22:08:48
(4)そして最後に改心するという。 ----シナリオの教科書には、「そういうコンフリクトを描け」とあったりします。 庵野 そうなんです。でも僕がドラマや映画を見ているときは、その種のコンフリクトが、ものすごくストレスに感じるんですよ。
2017-11-10 22:09:34
(5)言い方は悪いですが、頭の悪い人や現状を理解していない人が次々に出てきては、失敗や事件や問題を起こす。その事で話がややこしい方向へ転がっていく。事件を複雑にするためだけに存在する人物が超苦手なんですよ。
2017-11-10 22:10:32
(6)とはいえ、映画の構成上は冒頭15分くらいに主人公や近い誰かが、間違った選択や面倒な状況に関わらないと物語が展開せずにそこで終わってしまうし、コンフリクトがないと観客が登場人物の感情的なドラマを自分と同一視しないので、主観的なドラマ内容だと必要度数が高いと思います。
2017-11-10 22:11:05
(7)----ふだん見慣れている映画の定型とは違うなと感じました。 庵野 そうですね。今回はコンフリクトによるドラマを排除して、常に気持ちよく展開していく。現実世界ではあり得ないフィクション「理想を描くエンタテインメント」に終始しようと。
2017-11-10 22:11:52
(8)面白いものだけ、気持ちいい要素だけで構成されているので、何度も見られる面白さにつながるんじゃないかと。それもなんか珍しい感じもするし、いいんじゃないかと思っていました。
2017-11-10 22:12:27
(9)(引用終わり) 要するに、庵野秀明監督は「コンフリクトを起こす存在」が超苦手、だけど「必要度数が高い」タイプのドラマもあるんじゃないかなとは思う、『シン・ゴジラ』ではそういうドラマを「排除」したけど、ってことやね。
2017-11-10 22:13:36