『問いと答え』を探して

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hhasegawa @hhasegawa

『問いと答え』発売とカバー写真採用記念(twitter.com/hhasegawa/stat…)に、トートナウベルク訪問を、例によって画像まじりで振り返ってみたい。ただし、残念なことにカメラ紛失中であったため撮影はiPhoneになる。まずは電車でフライブルクから東(ドナウエッシンゲン方面)に3駅のキルヒツァルテンへ。 pic.twitter.com/4dt59iMJ9f

2017-11-22 06:32:26
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@eksistenz (承前)「訳す『など』」と書いたのは、それ以外にもカバー写真の提供をしているためです(そで右下、帯裏を参照)。別にカメラの腕が認められたわけではなく、たまたま近くに留学していた聖地巡礼厨がトートナウベルクを訪れたことがあり「個人撮影」していたからでした。 / amazon.co.jp/gp/product/458…

2017-11-20 08:01:19
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(承前)キルヒツァルテン駅からはバス(7215線)に乗り換え、40分ほどドイツトウヒと牧草地の織り成す典型的な黒い森の風景を走ると、トートナウベルク役場前の停留場に到達する。なお、田舎と住民を大声で小馬鹿にしていた不愉快な同胞に遭遇した(twitter.com/hhasegawa/stat…)のはこの車内であった。 pic.twitter.com/gRGGcRapan

2017-11-22 06:33:01
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黒い森の山中でバスに乗っていると、車中で日本人の男女に遭遇し、言葉がわかる者はいまいと高をくくったのか、似たような村にいた私の目の前で、こんな不便な田舎に住んでいる人間の気が知れない、と大声で話していた。なるほど、こうやって「こんなところに日本人が」的な意識も生まれるのであろう。

2017-08-09 06:01:26
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(承前)トートナウベルクの役場付近、住宅が密集している村落中心部。周囲にはホテルやカフェもある。伝統的な暮らしに見えて、仔細に眺めてみると完全に近代的な生活がうかがえるのは、観光地化された本邦の田舎とまったく同様である。青空がのぞいているのもあり「空と地面は遠く」が実現している。 pic.twitter.com/bWejGmZEoq

2017-11-22 06:33:40
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(承前)Haus am Schlipfと書かれた、入母屋風の屋根をした家。いま検索してみると、ここは貸別荘らしい(traum-ferienwohnungen.de/201153/)。スキー客を想定しているのであろうか。この背景の、丘の尾根にだけドイツトウヒの群生が残り、斜面はみな牧草地化されている様子は、典型的な黒い森の眺めといえる。 pic.twitter.com/1u1xf7gK98

2017-11-22 06:34:13
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(承前)都市でも村落でも、役所(Rathaus)や教会が置かれるような中心部にはほぼ必ず広場があり噴水が設置されるのがドイツの常である。トートナウベルクのような山村でもそれは踏襲されているようで、ここにも存在した。そのうえに牧人らしき像が立っているところに、いかにも地方色があってよい。 pic.twitter.com/5cQ7A0zfeG

2017-11-22 06:34:58
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(承前)トートナウベルク中心部を離れ、北に向かって尾根を歩くと、かつては別村であったらしいリュッテ(Rütte)という地区に入ってゆく。例の山荘の場所はこちらである。この界隈ともなると、かなり人家もまばらになってくる。山の天気は変わりやすく、うろついているうちに雲がだいぶ増えてきた。 pic.twitter.com/d8RyubzJsY

2017-11-22 06:35:39
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(承前)リュッテ地区を尾根づたいに歩いていると、本邦の道祖神のようにイエス磔刑像が立っているのに出くわした。この地方がカトリック圏であり、これから訪ねる小屋の主もそうであったことを思わせる。この付近にはユースホステルがあったが、オフシーズンなのか、係員も宿泊客も見当たらなかった。 pic.twitter.com/vx7oRjflli

2017-11-22 06:36:57
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(承前)Martin-Heidegger-Weg(ハイデガー通り)の案内板まで来たところで本格的に迷いはじめる。人家のある谷まで引き返し、たまたま車から降りてきた近隣住民に、定冠詞をつけて「die Hütte(山荘)はどこか」と尋ね、ようやく目的地がわかる。個人別宅とはいえ半観光地で、地元の人は詳しかった。 pic.twitter.com/1A7N35jnJa

2017-11-22 06:37:32
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(承前)近隣住民といえば、「ハイデガー通り」には哲学者と彼らの交流についての案内板が立っており、近所の人を招待して『存在と時間』の一節を朗読するも理解されなかった、といった心温まる(?)話が掲載されていた。タイトルの»Von Mensch zu Mensch«は「人と人は近く」とでも訳すのであろうか。 pic.twitter.com/ieS1ZsyY7a

2017-11-22 06:38:04
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(承前)教えられた斜面を上がってみると、そこには写真でよく知った小屋の姿が。同時に、場所を探しにくかった理由もわかった。谷の方から見上げると樹木に隠れてしまい、かなり近くでないと視認できないのである。夏草が茂る季節だったのも災いした。そもそも春か秋に行くべきであったかもしれない。 pic.twitter.com/NDyZpwXe8N

2017-11-22 06:38:36
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(承前)斜面を上りきって見下ろすと、各種媒体によく掲載されている角度から撮影ができる。この写真右の木には札がついており、拡大すると»Martin Heidegger Rundweg(ハイデガー回遊路)«と読める。正式な街路名というより一種の遊歩道か。ここの住所がどうなっているのかは最後までわからなかった。 pic.twitter.com/924bGfbEhf

2017-11-22 06:39:07
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(承前)最大限まで接近して撮影した一枚。かなり狭い建物であることがわかる。山荘はいまなおハイデガー家の所有物で、博物館化されていたりするわけではないので、もちろんなかには入れない。内部について知りたければ、『問いと答え』(amazon.co.jp/gp/product/458…)297ページからのエッセイを読もう。 pic.twitter.com/XBQvwh4jsU

2017-11-22 06:39:41
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(承前)この時点ではかなり曇り模様になってきており、だいぶ暗いのが残念ながら、山荘と例の「星の賽の井戸(Brunnen mit dem Sternwürfel)」のツーショットを収めることができた。言うまでもなく、パウル・ツェラーンの詩「トートナウベルク」(各種の邦訳を参照)に登場するものにほかならない。 pic.twitter.com/MSH6cZDjpf

2017-11-22 06:40:13
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(承前)「星の賽の井戸」の近景。いまでも水が湧出している。「星の賽(Sternwürfel)」は西欧によくある意匠とはいえ、収容所を生き延びた詩人がかつての党員哲学者に会いに来たらダヴィデの星もどきの図像に出迎えられたのは20世紀思想史屈指の名場面であり、これを見るだけでも来た甲斐があった。 pic.twitter.com/7XM13X4trB

2017-11-22 06:40:47
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(承前)ふたたび谷の方に下って帰路につく。後姿の映っている三人組も山荘を訪れていた面々で、途中から同道するようなかたちになっていた。私とはドイツ語で、仲間内ではイタリア語で話しており、こんな場所に巡礼なんてファシストじゃないのか、と疑ったものの、それは先方も同じかもしれなかった。 pic.twitter.com/ExWiFPJHJA

2017-11-22 06:42:09
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(承前)役場前まで戻り、本数の極めて少ないバスを待ちながら、カフェで一服する。なぜかこの村ではハートマークが多用されており、カプチーノを頼んだらチョコレートで描かれていたのは、いかにもかの哲学者に似つかわしくない気もしつつ、まさかアレにするわけにもいくまいし、と納得して帰宅した。 pic.twitter.com/gdWYppAMNh

2017-11-22 06:42:55
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(承前)締めに一言を加えると、ここを訪れなければ哲学はわからない、といった物言いは笑止にしても、フライブルクから1時間と少しでもあり、機会があれば一度くらいは行ってみても損はない場所であるとは思う。ちょうどガイドになる本(amazon.co.jp/gp/product/458…)も出たことだし、と宣伝して終わる。

2017-11-22 06:43:10