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Dombury Sofan @DomSofan
戦前の末端船員も口入れ屋を介して雇用されていた。船員には免状を保有し、航海士や機関士といった職位に就き船舶を運航する「職員」と、職員の指揮の下、直接の機器操作や整備作業にあたる「部員」という階層分けが存在するのだが、ボーレンと呼ばれる口入れ屋が介在していたのは後者である。(続く)
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(続き)現在と異なり、当時の部員は期間雇用だった。一航海、あるいは一年程度の契約で乗船し、雇用期間が終了すれば下船する。ボーレンは下船した船員に次の乗船先を斡旋しながら、乗船先が決まるまでの間、宿泊先と食事を提供する形態だった。(続く)
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(続き)当時の部員や船員志望者は薄給や出稼ぎの貧困層が多く、一文無しでも寝食を世話してくれる上に就職斡旋までしてくれるボーレンは彼らにとっても必要な存在だったのだ。と、ここまで聞けばwin-winの関係に思えるし、実際にまともな業者もいたようだが、全てがそうではなかった。(続く)
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(続き)ボーレンの収入源は職業斡旋の仲介手数料と宿泊料だったが、しばしばこれらの費用は法外な高額だった。支払えない分は借金となり、船員は前借金を抱えたまま乗船することになった。乗船できれば良いほうで、誇大広告で人を集めて、なかなか乗船させずに宿泊料を搾り取る業者もいた。(続く)
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(続き)乗船できた船員もまた搾取の対象になった。部員のとりまとめ役である甲板長や操機長(戦前だと火夫長かも)、通称ガジから2割に及ぶ高利貸を受けることになった。乗船に必要な被服や日用品の費用、小遣い銭が足りない者だけではなく、(続く)
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(続き)金を借りる必要のない者にも船内賭博に参加させるなどして強制的に貸し付けた。賭博に参加しない者、借りない者には危険作業を行わせたり、減棒や昇給遅延、時には強制下船といった不利な取り扱いが待っていた。(続く)
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(続き)なぜガジがこのように横暴に振る舞えたのかというと、部員の人事権と給与を彼等が握っていたからだった。本来、船内人事や給与支払いは船長の職掌なのだが、当時は部員に関する実務はガジに丸投げされていた。給与も部員は直接渡されず、ガジが全員分を受け取り、分配・支給していた。(続く)
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(続き)ガジは給与のピンハネや恣意的な分配を行った。金を借りるものには多く、借りない者には少なく支払ったのである。もっとも、多く支払われたとしても元より薄給である上に大半はボーレンの前借金とガジの高利貸の返済に消え、手元には幾らも残らず、また借金を繰り返すことになった。(続く)
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(続き)そうして前借金に縛られ、船内でも搾取された下級船員は再び文無しで下船することになる。先述したように当時は部員にとって下船は失職を意味し、そこで当座の寝食と次の職を得るため再びボーレンに頼らざるを得ず、抜け出せない借金の連鎖に嵌まっていった。(続く)
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(続き)ところで、当時の船員や船員志望者は職業紹介はともかくとして、なぜ寝食までボーレンに頼らねばならなかったのだろうか。実家にいて就職先を探せば余計な借金を重ねずに済むのに、なぜそうしなかったのか。それは、現代のように情報も交通も発達していない時代では、(続く)
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(続き)船員の求人情報は港町に集中しており、それに常時アクセスするには港町で滞在していたほうが船員にとっても都合が良かったのだ。また、ボーレンとガジはしばしば結託しており、ガジが求人情報をボーレンに提供する一方で、ガジの船内貸付や賭博の元手をボーレンが貸し付けていた。(続く)
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(続き)ボーレンはガジ上がりの者が多かったから、両者は結託していたというより一心同体である、といったほうが正しいかもしれない。こうした悪弊が当然問題にならないはずもなかったが、これらボーレンや船内高利貸は大正期から昭和初期の労働運動やILO条約締結に伴う(続く)
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(続き)有料職業紹介制度の撤廃、船員職業紹介法の制定や船員法の改正、そして戦時体制にともなう船員の雇用継続化などによって徐々に消滅することになり、戦後も復活することはなかった。なお、現在の船員派遣事業では法律により派遣船員と派遣会社は常時雇用関係とすることが定められている。(終)

コメント

こぎつね @KogituneJPN 2017年11月29日
規制がない世界だとこーゆー奴隷的労働が可能になる。
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