ZK #2

あの潜水新棲姫の出現位置は本当におかしい。 1:https://togetter.com/li/1174856 3:https://togetter.com/li/1176541
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劉度 @arther456

(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss をお使いいただけると大変ありがたいです。忙しい方はtogetterまとめ版をどうぞ。それでは暫くの間、お付き合い下さい)

2017-11-26 21:01:03
劉度 @arther456

「その知らせは本当なんだな?」「はい。各所から確認を取りました。深海棲艦は、堤防を破壊しています」ドイツ艦娘隊元帥、ゲルト・ホラニアは時計を見た。「キールまで、あと8時間か」ドイツ海軍はユトランド半島を抜け、全速力でオランダに向かっている。だが、このままでは間に合わない。1

2017-11-26 21:03:01
劉度 @arther456

「シュトゥルムヴィントに回線をつなげ」「了解」併走する超高速巡洋戦艦のブリッジが、モニターに映し出される。《呼びましたか》「カトレ大佐、グナイゼナウ、シュペーの両部隊を率いてハーグへ先行せよ」《……了解しました。カトレ・マクシム、艦娘をお借りします》2

2017-11-26 21:06:04
劉度 @arther456

ゲルトの一言で、超兵器の艦長は現状を察したようだ。緊迫した表情で、出発の準備を始めた。「次だ。……回線106へつなげ」「106ですか」「ああ」通信手が聞き直したが、ゲルトの命令は変わらなかった。やがて、新たな通信相手がモニターに映し出された。《俺を呼んだな、ゲルト・ホラニア?》3

2017-11-26 21:09:01
劉度 @arther456

「ああ。シュトゥルムヴィントを先行させた。到着次第、呼応して深海棲艦の迎撃をお願いしたい」《クハハハ!もう攻撃は始まっているぞ!ここまで後手に回ってようやく動くとは、愚鈍にも程があるぞ、ホラニア!》「……その通りだ。兵力の逐次投入を恐れすぎた。このままでは間に合わん」4

2017-11-26 21:12:01
劉度 @arther456

《まるで戦えば勝てる口振りだな。だが、そのグロース・シュトラールでは、ラグナロクが来ても深海棲艦には追いつけないだろうよ!》「承知している。だから、足止めを頼む、ダンデス司令」《……シュトゥルムヴィントにはどれだけの戦力を載せる?》ダンデスは笑いを止めた。5

2017-11-26 21:15:01
劉度 @arther456

「20人。グナイゼナウとシュペーが率いる部隊だ」《足りんな。ヒッパーもつけろ》「足が遅い。やるのは艦隊決戦ではなく、一撃離脱だ」《制空権はどうするつもりだ?》「基地航空隊を出す」《……そんなものも用意していたか!いいだろう、妹とリシュリューを出撃させる!》6

2017-11-26 21:18:00
劉度 @arther456

ホラニア元帥と共に、瞬く間に作戦を組み立てていく黒衣の男は、ダンデス大将という。フランス海軍の潜水艦ノーマッド号の艦長であり、かつてはホラニアと共にEU海軍の両翼を担った、生粋の海軍軍人でもある。今はオランダ沖に潜んで、深海棲艦の大船団の動向を見守っていた。7

2017-11-26 21:21:03
劉度 @arther456

《ホラニア。今回の深海棲艦は、いつもとは違うぞ》「わかっている」今まで、深海棲艦たちは沿岸を砲撃することはあっても、堤防を破壊することはなかった。今回の敵は、国土を沈め、生活圏を脅かそうとしている。「負ければオランダが消える。この戦、人類のために何としても勝つぞ」8

2017-11-26 21:24:00
劉度 @arther456

オランダ南部、フリシンゲン基地。最後のフリゲート、デ・ロイテルはここで出撃準備を整えつつあった。勝ち目はない。正真正銘最後の戦いだ。基地にあるだけの武器弾薬が積み込まれる。そこへ入ってきた見慣れないコンテナに、艦長のローランド中佐は顔をしかめた。10

2017-11-26 21:27:01
劉度 @arther456

「……気に食わねえ」普通、兵器に好き嫌いはない。だが、これだけは別だった。特殊弾頭ミサイル『ネザーランド』。オランダの別名が付けられた試作兵器だ。その正体は、オランダ海軍技研が開発したらしい、深海棲艦だけに効く毒ガス弾頭だった。11

2017-11-26 21:30:06
劉度 @arther456

深海棲艦の生体は、魔力によって成り立っている。このガスは魔力の流れを阻害し、深海棲艦を問答無用で窒息、絶命させる。そして人間には一切の害を及ぼさない。夢のような兵器だが、毒ガスであることに代わりはない。そんな兵器を撃つのは、相手が深海棲艦といえども躊躇われた。12

2017-11-26 21:33:01
劉度 @arther456

それにもう1つ、気がかりな点がある。「なんで今さら、こんな物を渡してきた……」せめて、艦隊が揃っている時に、あるいは負け始めた時に渡してほしかった。今さら最終兵器を渡されても、全て手遅れだ。そう思うローランドの前で、『ネザーランド』は船に積まれていく。13

2017-11-26 21:36:03
劉度 @arther456

《駄目だ、なーんにもわからん!》「そっかあ……」ドーバー海峡前で、提督たちは立ち往生をしていた。海峡に謎の霧が発生し、中の様子が全くわからなくなっていた。しかもこの霧は、電波も魔力も通さない。隼鷹が艦載機を偵察に向かわせたものの、何の成果も得られなかった。15

2017-11-26 21:39:01
劉度 @arther456

「引き返して、霧が晴れるまで待とうか」《待って、提督!》突然、五十鈴が叫んだ。「どうしたの?」《海の中に何かいるわ!》レーダーにもソナーにも反応はない。だが、五十鈴の言葉を提督は信じた。「総員対潜警戒!ソナーに頼るな、波を見ろ!」艦娘たちも彼女を信じ、いないはずの敵を探す。16

2017-11-26 21:42:01
劉度 @arther456

《提督!避けて!》矢矧が叫んだ。《魚雷よ!》「右に20!」「了解!」かすかな魚雷の航跡が、蔵王の横を通り過ぎた。気づかなければ直撃していただろう。《そこねっ!五十鈴には丸見えよ!》魚雷の飛んできた方向に、五十鈴が爆雷を投げつける。大きな水柱がいくつも吹き上がった。17

2017-11-26 21:45:02
劉度 @arther456

《きゃっ!?……やめてよぉ!なんでわかったのさ!》スピーカーから、知らない声が響いた。海中から深海棲艦が現れた。色を塗っていないように真っ白な、少女の姿をした深海棲艦だった。「潜水棲姫……じゃない!?」新種の深海棲艦に、提督は警戒を強める。18

2017-11-26 21:48:00
劉度 @arther456

《ノゥ、ノゥ。あんなのと一緒にされちゃ困るなぁ。私は新型なんだよ?》彼女の言うとおり、姿形だけでなく、身に纏う魔力も潜水棲姫とは比べ物にならない。「……現時刻をもって、不明深海棲艦を潜水新棲姫と命名!」艦娘たちは指揮艦を中心に、輪形陣をとった。19

2017-11-26 21:51:01
劉度 @arther456

「一応、言っておくけど、私たちにドーバーを突破するつもりはありません」《……へえ?》提督は潜水新棲姫に話しかける。相手がドーバーを守っているなら、お互い無駄に消耗する理由はない。「このまま帰るつもりなので、今日の所は見逃してもらえませんか?」《へー。準備してなかったんだ》20

2017-11-26 21:54:03
劉度 @arther456

《じゃあ、丁寧に殺せるね!》潜水新棲姫は身の丈ほどもある魚雷を取り出した。《正直、ヨーロッパでもウロウロされると、うっとうしいんだよね!せっかくの仕込みが台無しじゃない!》「仕込み……?」《そう!人類と深海棲艦の一大決戦だよ!だから、キミは邪魔なの、優月ちゃん!》21

2017-11-26 21:57:01
劉度 @arther456

「なんで名前をっ!?」名乗った覚えはない。相手は提督のことを知っている。一大決戦とは何か。ドーバー海峡の霧は結局なんなのか。「……とにかく応戦だ!対潜攻撃、用意ッ!」戦わなければ、疑問と共に海に沈む。提督の決断を受けて、艦娘たちは爆雷を構えた。22

2017-11-26 22:00:13