ドボク鎮守府 葛城山へ還る魂

秋雲「あの人“船”は呪いを掛けられているんだよ。一世紀も船を造って殺”解撤”してきた起重機の魂は凄く重いのさ」
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まも【ドボ鎮】 @Kojimamo

少女は遠く淡路島の島影に沈む夕陽を見つめていた。腰までの黒髪のロングヘアー、後頭部に白いリボンでポニーテールが大阪湾からくる潮風に揺られている。そばのデリックのフックも潮風にゆらりと静かに揺られていた。ここはCode1946、大阪港の片隅の造船所。桜島。 #ドボク鎮守府

2017-11-30 23:32:32
まも【ドボ鎮】 @Kojimamo

少女の名は葛城。雲龍型航空母艦3番艦。敗戦後の焼け野原となった大阪市街地を見下ろす。 #ドボク鎮守府 pic.twitter.com/g6wMe1Jhix

2017-11-30 23:38:37
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まも【ドボ鎮】 @Kojimamo

大阪の市街地のむこう、遠くに己の艦霊の概念の一角を成す葛城山の山陰がうっすらと見える。その頂と私が終末の地と運ばれた造船所の間には己が復員輸送で運んだ人々も住んでいるのだろう。 #ドボク鎮守府 pic.twitter.com/pi59dDgugI

2017-11-30 23:44:56
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まも【ドボ鎮】 @Kojimamo

家々から立ち上る炊事の煙は、まだこの国が敗れても「我々はたとえいかなる境遇にあろうと、どこにいようと人は決して死ぬものではないという気持ちで生きなければならない。」という何処かで聞いた哲学を思い出す。 #ドボク鎮守府

2017-11-30 23:46:47
まも【ドボ鎮】 @Kojimamo

「あと数週間でこの躰も解体かぁ…」 安治川に浮かぶ己の本体は航空甲板も既に引き剥がされて、空母らしさは既に失われたが、細長い船体が軍艦であったことを偲ばせていた。船魂の人型の細身でスラリとしたボディラインはそれを示す。 #ドボク鎮守府 pic.twitter.com/J9WL3JOsJk

2017-12-01 00:57:28
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まも【ドボ鎮】 @Kojimamo

空中写真画像引用先 国土地理院 空中写真サービス より mapps.gsi.go.jp/maplibSearch.d… #ドボク鎮守府

2017-12-01 01:02:12
まも【ドボ鎮】 @Kojimamo

桜島のドックには己の船体が巨体故に入らなかったので、安治川に係留されて解体されていた。そんな解体を待つ彼女の胸の双丘は、天保山ほどの高さしかないのが悩みの種であったが…。いまはもう些細な事だ。 #ドボク鎮守府

2017-12-01 01:07:18
まも【ドボ鎮】 @Kojimamo

だが、その小さなおっぱい”バラストタンク”には大きな夢が詰まっていると思わないかね?」 「ひゃぁあん!!?」甲板の縁に座り黄昏ていた葛城に、女性の声が掛けられた。耳のそばで蒸気機関の石炭の薫りを漂わせる息吹とともに。 おそるおそる振り返ると起重機船がいた。 #ドボク鎮守府

2017-12-01 01:24:03
まも【ドボ鎮】 @Kojimamo

「あ、貴女は3324号!」 葛城が面食らったのも無理はない。彼女の背に立っていたのはあの呉軍港で空襲をともにくぐり抜け、尚且つほぼ無傷で生き抜いた船であったからだ。そもそも工廠で艤装工事として自らの躰のマザーマシンとなったその人である。 #ドボク鎮守府

2017-12-01 01:47:11
まも【ドボ鎮】 @Kojimamo

ヒューッ!」 葛城の船体の周りに集っていた、曳船や艀や団平船の男勝りな船娘らが騒ぎ出した。 「見ろよ。やつの筋肉”グレン”を…」 「まるで長門のハガネ”水着”みてえだ!!」 「こいつはやるかもしれねえ…」 #ドボク鎮守府

2017-12-01 02:00:33
まも【ドボ鎮】 @Kojimamo

そう造船所に起重機船が現れたちゅうことは、ガッコンドッコンが始まるという伝承が明治の大阪築港からの伝承だったのである。解撤待ちの大型艦の上にいきなり現れたならなおさらだ。起重機船は破壊機械でもあり、解体に悦びを見出す死神とも同一視する船魂もいる。 #ドボク鎮守府

2017-12-01 02:05:59
まも【ドボ鎮】 @Kojimamo

「…アタシを解体しにきたんだ。船魂も殺しに…」 ボロボロになって穴だらけの(機銃掃射の弾痕もあったが)作業ツナギの後ろのクレーンへ訝しむ目を送る。 「お仕事だからねェ…あと今は海軍じゃない。播磨さんとこの傭い船さ」 #ドボク鎮守府

2017-12-01 02:15:08
まも【ドボ鎮】 @Kojimamo

造船所ではできない大型機関の水切り作業を終えたあと、私の船体に横付けしていたその海上グレンと私は寝た。あんなに気持ちよく、解体するというのに船体を傷つけぬよう優しく私の心臓を引き出した船となら最後の寝どころを共にするのも悪くはないと思ったからだ。 #ドボク鎮守府

2017-12-01 02:20:38
まも【ドボ鎮】 @Kojimamo

「今の私の名は海軍の3324号じゃない。300トン海上起重機。ただの海に浮かぶグレンさね」 養生の為に剥き出しになった甲板下の木の板の足場の上に敷いた布団でその起重機船は上半身を起こして煙管を蒸した。 ※グレン=クレーンが訛ったもの。業界用語の一種。 #ドボク鎮守府

2017-12-01 02:24:20
まも【ドボ鎮】 @Kojimamo

航空母艦葛城どの。実は桜島に来た理由が大事なものがも一つありましてな」 突如、起重機船は佇まいを直して布団から降りて正座した。 「貴女は軍艦としての任務は全うできなかったかもしれんが、人々を還す復員船として任務を大いに果たした。それを踏まえてお願いがあります」 #ドボク鎮守府

2017-12-01 02:33:47
まも【ドボ鎮】 @Kojimamo

「この都度の大戦では数多の船が沈みました。私は今、船魂保存院ちゅうとこで船の引揚も仕事で請け負ってまして…。 そこでは戦没した艦船の怨念…いつか明日か数十年後か判っとらんそうですが。つまり深海から来るべき厄災の為に少しでも助ける船魂を増やして備えようちゅう話が…」 #ドボク鎮守府

2017-12-01 02:39:32
まも【ドボ鎮】 @Kojimamo

「その為に復員船となった貴女の力をお借りしたい。『私は貴女の魂が救えるなら、来世でも貴女の航海に幸を授ける手助けに』と貴女の母”呉工廠”よりの手紙と箱も預かっております。どうかお受け取り頂きたい。そして貴女を解体し、何時の日か貴女を必要とする日まで…」 #ドボク鎮守府

2017-12-01 02:44:52
まも【ドボ鎮】 @Kojimamo

センパクハラスメントという言葉がなかった当時、様々な船にジブを伸ばす助兵衛な作業船という偏見こそあったが、己のマザーマシン、引いては解体された母の遺言とあっては、その願いを引き受けぬ訳にはいかなかった。 #ドボク鎮守府

2017-12-01 02:47:35
まも【ドボ鎮】 @Kojimamo

「お願いがあるのだけれど?」 「どうぞ、呉工廠を代表し貴女の要望にできるだけお答えします」 一番いい解体撤去を、本当に気持ちいい解体作業を頂戴よ。わかってる?」 「御意。伊勢神宮の御心のままに…」 #ドボク鎮守府

2017-12-01 02:55:21
まも【ドボ鎮】 @Kojimamo

そして葛城は産みの起重機船によって解体された…。 #ドボク鎮守府

2017-12-01 02:55:57
現場休憩
まも【ドボ鎮】 @Kojimamo

マニラ沖で、那智率いる深海生物災害鎮圧作業船団<南海トラック地神> が夕雲型の駆逐艦を引き揚げた。 甲州の扇状地に、藤棚のようにうねる波の様に広がるぶどう畑。 その中の坂道を元気に駆け下りて行きそうな男勝りの艦娘。 その名は藤波。 彼女の母、藤永田造船所に感謝を。 #ドボク鎮守府 pic.twitter.com/PnsUcfb0Gn

2017-12-02 00:21:57
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まも【ドボ鎮】 @Kojimamo

CODE2017-秋戦争- 南シナ海… どれほど貴女を待ち焦がれた事だろうか。 戦場世界”艦これ”に於いては発現から3年 いや私の妹、起重機船『公称7232号』が艦である貴女を横須賀工廠で建造してから74年ですかな…。 航空母艦雲龍、海軍設営隊として貴女を国土強靭化の戦士として迎えます。 #ドボク鎮守府 pic.twitter.com/uoEqArz7RV

2017-12-01 20:41:19
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まも【ドボ鎮】 @Kojimamo

雲龍の艦載機発艦ポーズに感じた既視感 提督「高速道路のジャンクションの誘導帯?」 雲龍「やだ、連絡路はそんな広くはないから、車線に触らないでね。」 #ドボク鎮守府 pic.twitter.com/PLC4TyTx2V

2017-12-02 11:10:50
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コメント

まも【ドボ鎮】 @Kojimamo 2017年12月3日
まとめを更新しました。衣笠を追加
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