【けもフレ連載小説】#けものフレンズAF
- asagihara_s
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ところで構想だけあっていつか書こうと思いつつ書く時間が取れないよなあと思ってた原稿をついカッとなって書き始めてしまったのですが、案の定書いてみたらこれ文庫本換算で600~800ページコースでは?となったので果たして最後まで書く余裕とモチベとリソースがあるか甚だ不安でありまして
2017-12-03 21:07:55でもせっかく書き始めたんだしちゃんと最後まで書きたいよなこれ、と思ったのでどうするか思案した結果Twitter不定期連載小説として放流していけばいいのでは?という結論に至りましたのでとりあえず書いたぶんをこれから放流していきます
2017-12-03 21:10:41第1話「さばんなちほー」その1
どこまでも果てしなく広がる褐色の草原に、きらきらと虹色の光がきらめいていました。 照らしつける太陽の光が、ぼくの足元に濃い影を落としています。帽子の庇に空いた穴から真っ青な空を見上げて、ぼくは背中のかばんを背負い直しました。 #けものフレンズAF
2017-12-03 21:14:00額から伝った汗を、黒い手袋で拭って、重たい足を前へと動かします。その理由もわからないまま、枯れたような色の草を掻き分けて、ぼくはあてどなく歩き続けていました。 いったい、いつから歩いているのか。どこを目指しているのか。 今ここにいる、この《ぼく》は何者なのか――。 #けものフレンズAF
2017-12-03 21:15:15ぼくの記憶の始まりは、この草原。それ以前は空っぽで、なにひとつ思いだせることはありませんでした。自分の名前も、自分がどこの誰なのかも……。 なにひとつ、本当になにひとつわからないまま、ぼくはただ、この草原をさまよい続けていたんです。 #けものフレンズAF
2017-12-03 21:16:29はあ、はあ、はあ……。 何時間も歩き続けた足は棒のようで、あがった息の音がやけにうるさく響いていました。 だからぼくは、自分を追いかけてくる足音に、なかなか気付かなかったんです。 #けものフレンズAF
2017-12-03 21:17:22はっ、はっ、はっ。 短いリズムで切れる息の音と、がさがさと草を踏みしめて駆けてくる足音。それは、ぼくの方へと向かって走ってくる何者かの足音でした。 ようやく意識がそちらへと向き、ぼくが足を止めて振り返った瞬間――。 #けものフレンズAF
2017-12-03 21:18:17「てやぁー!」 そんな甲高い声とともに、小柄な影がぼくにのしかかってきたのです。その影に押し倒されるように、ぼくは草の上にうつぶせに倒れこみました。 #けものフレンズAF
2017-12-03 21:19:04けものに襲われたのだと、ぼくは思いました。この草原に暮らしているけものが、ぼくを食べようと襲いかかってきたのだと。ぼくは必死に叫びました。言葉はたぶん通じないだろうと考える余裕なんてなくて、ただ、必死だったんです。 「た、食べないでください!」 「食べないのだ!」 #けものフレンズAF
2017-12-03 21:20:44返事がありました。ぼくは首だけを回して、のしかかった影を振り向きました。 ぼくにのしかかっているのは、ぼくと同じような姿をしたけものでした。ぼくと違って、頭のてっぺんに三角のお耳が生えていて、しましまの尻尾が背後に見え隠れしています。 #けものフレンズAF
2017-12-03 21:22:11「やっと捕まえたのだ、帽子泥棒め!」 「え、ぼ、ぼうし?」 そのけものはそう叫ぶと、ぼくの帽子を取り上げました。頭が涼しくなって、ぼくは身を縮こまらせました。やっぱり食べられてしまうのでは――そう思いましたが、 「ふはははは! 取り戻したのだー!」 #けものフレンズAF
2017-12-03 21:23:11そのけものはぼくの上から下りると、帽子を高々と掲げて、そう胸を張りました。どうやら本当に、ぼくを食べようとしたのではなく、ぼくの帽子が欲しかっただけみたいです。 「アライさーん、待ってよー」 と、そこへもうひとつ別の声が割り込んできました。 #けものフレンズAF
2017-12-03 21:24:40自由になったぼくが起き上がって座りこんだまま視線を向けると、また別のけものがこちらに駆け寄ってきます。大きなお耳とふさふさの尻尾をした、やっぱりぼくと同じような姿のけものでした。 「フェネック! アライさんが帽子泥棒を捕まえたのだ!」 #けものフレンズAF
2017-12-03 21:25:52「おおー、すごいよアライさーん。その子が帽子泥棒?」 「そうなのだ! アライさんがパークの危機を救ったのだ!」 フェネックと呼ばれたけものが、ぼくを見やって首を傾げました。アライさんと呼ばれたけものは、ぼくを指さして胸を張ります。 #けものフレンズAF
2017-12-03 21:27:30どうやらぼくは、帽子を盗んだと思われているようです。でも、あの帽子はぼくがずっと被っていたもののはずなんですが……。 「大丈夫ー?」 フェネックさんはぼくに歩み寄ると、ぼくに手を差し伸べてくれました。 #けものフレンズAF
2017-12-03 21:28:42その手を掴んで立ち上がり、「あ、あの、ぼく、泥棒じゃ……」とぼくは口を開きます。 「この帽子はアライさんが最初に見つけたのだ! アライさんが崖から落ちた隙に、お前が持ち去ったのだ!」 帽子を抱きかかえるようにして、アライさんはぼくを睨みます。 #けものフレンズAF
2017-12-03 21:30:06「でも、ぼく、その帽子を最初から被ってて……」 「そんなはずないのだ! これは確かにアライさんが見つけた帽子なのだ!」 「確かに、私が見たのとも特徴が一致するねー」 アライさんとフェネックさんは帽子を覗きこんでそう言いますが、ぼくにはやっぱり身に覚えがありません。 #けものフレンズAF
2017-12-03 21:31:15そもそもこのふたりとは初対面だと思うんですが……。 「ところで君は、ここのフレンズ? 耳も尻尾も翼もないみたいだけど、なんのフレンズなのかなー?」 フェネックさんがぼくの顔を覗きこんで小首を傾げました。ふれんず? #けものフレンズAF
2017-12-03 21:32:25「あの……というか、ここ、どこなんでしょうか? ぼく、気が付いたらここにいて……それに、フレンズって……?」 ぼくがそう訊ねると、フェネックさんは目を見開いて、アライさんの持つ帽子と、ぼくとを見比べると、それからどこか別の場所へ視線を向けました。 #けものフレンズAF
2017-12-03 21:33:27ぼくもつられてそちらに視線を向けると、地平線の先に大きな山がそびえているのが見えます。山の頂上には、何か不思議なものが突き出ているように見えました。あれはなんなんでしょう? 「アライさーん、そもそもアライさんはどうして崖から落ちたんだっけー?」 #けものフレンズAF
2017-12-03 21:34:52「ふえ? いきなり山が噴火して、サンドスターが降ってきたからびっくりしたのだ!」 「さんどすたー……?」 「はぁー、なるほどねー」 聞き慣れない言葉に首を傾げるぼくの前で、フェネックさんはひとつ大きく頷きました。 「アライさーん、この子、たぶん帽子泥棒じゃないよー」 #けものフレンズAF
2017-12-03 21:36:00「うええ!?」 「たぶん、その帽子にもともとの動物の体毛か何かがついてたんじゃないかなー。それにさっきの噴火で吹き出たサンドスターが当たって、フレンズになったんだよー。だから、帽子を盗んだわけじゃないと思うよー」 「うぬぬ……」 #けものフレンズAF
2017-12-03 21:37:25「この子がその帽子から生まれたなら、帽子はきっとこの子にとって大事なものだよー」 「むぅ~……うぐぐ……」 帽子を手にしたまま、アライさんは俯いてしばらくそう唸っていましたが、 「……はい、いったん返すのだ」 その帽子を、ぼくに差し出してきました。 #けものフレンズAF
2017-12-03 21:38:35