はぁ……なりてぇ……最終形態に……

エルフの村のふぁる村長 @faru0013

魔王帽子男

エルフの村のふぁる村長 @faru0013

魔王帽子男は第一形態が偉大なる文字書きで第二形態がインポで第三形態が種付けおじさん

帽子男 @alkali_acid

なりてえ…第三形態に…

帽子男 @alkali_acid

「どうした魔王…貴様の実力はまだこんなものではないはずだ！見せてみろ！かつて王国の騎士団を殲滅したという…最終形態を！！」 「くくく…勇者よ…知っていたか…我が真の姿を…だが…断る！！」 「なに！？」 「最終形態…お前ごときに見せるつもりはない」

帽子男 @alkali_acid

「なんだと…聖剣を入手し、王女の愛も得て、位階も九十九まで高めたこの私が、相手にとって不足だというのか」 「ああ、確かにお前は強い…力だけはな…だが大切なもの…あの戦場で我と相対した騎士団長が持っていた…誇り高き武人の魂がない！」 「！！？武人の…魂…」

帽子男 @alkali_acid

「故に！我が最終形態には、ふさわしくないのだ！！」 「おのれ…私に足りないものが…くっ…今日のところは退く…だが次こそは必ず貴様の最終形態を引き出し、完璧に打ち負かして見せる！」 「くくく！できるものならやってみるがいい！……………行ったか…馬鹿でよかった」

帽子男 @alkali_acid

「最終形態…ここ数年、全然なれんのだよな…若い頃は、朝起きると必ず最終形態になっていたものだったが…おさまったあとも、調子こいたイキり冒険者が煽って来るだけで気持ちが昂ぶり、別にする必要ないのに、ぎんぎんになって変身しフルボッコにしてた位だったが…はあ…」

帽子男 @alkali_acid

「あの頃に戻りたい…自在に最終形態になれたあの頃に、逞しく、力強く、勢いにあふれていたあの頃…もちろん何もしてない訳ではないぞ。デビルアグラとかジャアクガリクスとかちゃんと通販で取り寄せて飲んでる…でも全然効かんけど…どうなってるの…」

帽子男 @alkali_acid

「とりあえず今日はもう寝るか…はあ壊された城の片付けは明日でいいかな…起きたら、また昔みたいに最終形態になれるようになってますように」

帽子男 @alkali_acid

しばらくして

帽子男 @alkali_acid

「魔王よ！今日こそ勝負をつけるぞ！」 「え、早くない？！」 「…貴様の言葉…あれから考え抜いた。私も自らの力に溺れ、世界のために刃を振るう…その気持ちを忘れていたと…あれから滝に打たれ、驕りを捨てて、聖剣と一つとなり、新たな技を生み出した」 「ほ、ほほう…」

帽子男 @alkali_acid

「名付けて神威滅邪斬！！…これが…貴様の最終形態を屠（ほふ）るために私が出した答えだ」 「へー…そうなんだ…」 「さあ！見せてみろ！！最終形態を！」 「…っ、ふ。愚かなやつよ。我が黙ってお前の修行を待っていると思ったか」 「何！？」

帽子男 @alkali_acid

「この初期形態でも十分にお前を倒せるほどに、我もまた成長したのだ…」 「く、なんというやつ。ではまず初期形態から片づけるのみ！」 「えっ…よし来い！」 「イヤー！」 「グワー！」 「イヤー！」 「グワー！」 「イヤー！」 「グワー！」 「イヤー！」 「グワー！」 「イヤー！」 「グワー！」

帽子男 @alkali_acid

「げほ…さすがは勇者といったところか、我を相手にここまで戦ったこと…褒めてつかわそう」 「…？魔王、貴様、前回とあまり変わらんというか、むしろ弱くなっていないか？力が萎えたというか」 「そんなことあるはずがなかろう！！無礼を申すな！！萎えておらんわ！！」 「そうか…では」

帽子男 @alkali_acid

「見せてみろ！最終形態を」 「お、おう！！！よかろう！！ちょっと待て」 「なんだその錠剤は」 「うるさい！！あちらを向いていろ！…げっほげほ…あ、こぼした…高かったのにデビルアグラ…」 「デビルアグラ…？」 「なんでもないわ！くくく…よし…来たぞ…できそうな感じ…いける…今夜こそ」

帽子男 @alkali_acid

「ぬあああああああああああああ！！！！！！！常命（じょうみょう）のものよ！！その目に焼き付けて死ぬがよい。我が最終形態！！かつて世界に絶望をまき散らした、闇の帝王の真の姿をなあ！！！」 「来い！！」 「ぬああああ！！！！！」 「むっ！」 「ぬあああああああああああああ！！！！！」

帽子男 @alkali_acid

「ふぬああああああああああああああああああああああああああ！！！！！」 「…」 「うんぬああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ！！！！」 「…」 「んっ…ぬ…む…ぅ…ぅ…ぬあ…ぬっ…ぜえ…ぜえ…」

帽子男 @alkali_acid

「魔王…貴様もしや」 「ち、違わい！！違わい違わい！！最終形態はちょっと今！！今…」 「私と戦うまえに…ほかの何者かと激闘を…？」 「え？」 「聞いたことがある…魔王に匹敵する冥界の竜神…裏の首魁とも言われる存在がいると」 「？いやあのご老体はもう半世紀も前…あ、うむ！よく見抜いた」

帽子男 @alkali_acid

「くくく、確かに我には、ちんけな人間どもの英雄のほかにも、強大な宿敵がいる…いや、いたというべきかな」 「！！？なに、では冥界の竜神はすでに」 「すさまじい戦いであった…天を裂き、地を砕き、海を沸かすほど…やつと我のぶつかり合いは、生きとし生けるすべてのものの支配権を争う一番」

帽子男 @alkali_acid

「なぜ…言わなかった！」 「我は、お前ごとき虫けらの憐れみなど乞わぬ」 「く、敵ながら…王の名にふさわしいその矜持だけは認めよう…貴様は世界のために斃すべき存在…だが、もう一つの脅威である冥界の龍神を滅ぼしたおげで、民草は救われた面もある」 「そうそう」

帽子男 @alkali_acid

「…本来なら、私がどちらも討つべきだったが…くっ…決着はまた延期する…これは慈悲でも、倨傲でもない。ただ筋を通す…それだけのことだ…覚悟しておけ、次に遭ったときの私はもっと強くなっている！」 「あ、そう…く、くく、どこまでも甘いやつよ！だが、よかろう。お前の甘さに乗ってやろう」

帽子男 @alkali_acid

「いま、いっときのあいだは、さらばだ魔王。だが次こそ神威滅邪斬の切れ味、必ず最終形態に食らわせてみせる」 「ふ、せいぜい楽しみに待つとしよう。人の子よ…あと玉座の裏に転送の魔法陣があるからそこから還ってゆけ。無駄に城を壊さぬようにな」 「余裕のつもりか…まあいい」