日本のキャラクタービジネスは西南戦争だった小論

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uroak_miku @Uroak_Miku

1)これまで何度も振り返ってきた、夏目房之介ゼミでの講演。今なおずーっと引っかかっています。改めて論じてみたい。

2017-12-24 13:19:31
uroak_miku @Uroak_Miku

2)「アニメと商品化権」のお題で二コマ講義させていただいたんですよ。日本のテレビアニメ史を商品化権の視点から眺めなおすと、今までの定説が覆されますよというお話をしました。

2017-12-24 14:49:25
uroak_miku @Uroak_Miku

3)ディズニーが戦後に日本支社を作り、ディズニーキャラクターを森永や任天堂などに売り込んでディズニー商品を発売させ、その印税でがっぽり儲けだしたいきさつを語りました。昭和33年、つまり東京タワーができた年にディズニー支社ができて商品化ビジネスに本腰をあげた。

2017-12-24 14:51:51
uroak_miku @Uroak_Miku

4)このとき使われた契約書は英文だった。アメリカ国内で使っていたものを流用したらしい。「アメリカ国内法と判例に準拠する」と条文をいれておいてサインしてもらえれば世界のどの国でも有効になるし。日本でもこれで押し通した。

2017-12-24 14:56:06
uroak_miku @Uroak_Miku

5)日本のセイカノートがディズニーキャラクターをあしらったノートを出す際にこの契約書のひな型をもらった。英文なので何が書かれているのかわからない。そこで和訳してみた。「あーなるほどこういうことが書かれてるのかー」 セイカはその後、国産アニメのキャラクターに目を付けた。

2017-12-24 14:59:02
uroak_miku @Uroak_Miku

6)東映アニメの新作映画『西遊記』のキャラクターをノートに使うことを考え、ディズニー契約書の和訳を東映アニメに持ち込んで取引したわけです。東映アニメ側は「まーちゃんだいじんぐ?なんやそれ。うちは映画会社やしそんなんいらんわ」でしたがセイカがねばって話をつけた。

2017-12-24 15:02:28
uroak_miku @Uroak_Miku

7)セイカではなく別の文房具メーカーが、NHKのある人形劇のキャラクターをノートにあしらって稼いだことがありました。セイカはそれに刺激されてディズニー・キャラクターのノート発売を企画し、参考用にミッキーマウスの人形を買い入れたら「©Walt Disney Co.」と謎の文字が。

2017-12-24 15:04:36
uroak_miku @Uroak_Miku

8)そこでディズニー日本支社に問い合わせたら「勝手にうちのキャラクターを商品にしたらいかん。ちゃんと契約書をかわして印税を払ってくれ」といわれて、それで例の英文契約書を渡されたわけです。セイカは内容を知りたくなって和訳。そして内容を知った。かなり粗い和訳だったようですが。

2017-12-24 15:07:02
uroak_miku @Uroak_Miku

9)和訳したものを、逆にディズニー日本支社側が参考にしたそうです。「いやーうちも実はこれ何が書かれているのかよくわかんなかったんですよー」 ディズニー本社から商品化部の部長さんが来日してレクチャーを受けてはいたのですが厳格なことまでは当時のディズニー日本支社も把握してなかった。

2017-12-24 15:09:42
uroak_miku @Uroak_Miku

10)のんきな時代でした。で、セイカは契約書の和訳をひな型にして東映アニメとの取引を始めた。これがやがてほかの業者の手にわたって、東映テレビ部制作の子ども番組のキャラクターを商品化する際にも流用されたのでした。

2017-12-24 15:11:59
uroak_miku @Uroak_Miku

11)ディズニーの英文契約書(の荒っぽい和訳)がお手本となって、日本にキャラクター・ビジネスモデルが伝播したというわけです。もっと昔からキャラクターの商品化は日本でもあったのですが、法的に厳格なものではありませんでした。どちらかというと仁義切りの類でした。

2017-12-24 15:15:35
uroak_miku @Uroak_Miku

12)そういう話を夏目さんとその生徒さんたち(主に院生の子たちで留学生も複数参加)にしたのです。で、質疑応答の際にこんな質問を受けました。

2017-12-24 15:16:55
uroak_miku @Uroak_Miku

13)「セイカがディズニー契約書を和訳して、それをひな型にして国産キャラクターをノートにしだしたそうですが、それ以前に別の社がNHKの人形劇キャラクターをノート化していて、それはNHKの無承諾だったんですよね。セイカだってもし東映アニメのキャラクターを無承諾で使っても[続く]

2017-12-24 15:19:43
uroak_miku @Uroak_Miku

14)[続き]東映アニメはなにもクレームつけなかったんじゃないのですか。それなのにどうしてセイカはわざわざ東映アニメに出向いて契約手続きを踏んだのですか」 実際はもっとわかりにくい訊き方をされたのですがここでは整えてありますです。

2017-12-24 15:21:42
uroak_miku @Uroak_Miku

15)私はこの質問がよくわからなくて「契約書を交わす必要があるとセイカは知ったからですよ」と答えたのでした。すると彼女は「それ以前は契約書なんて必要なかったんでしょ?それなのにどうして契約書をわざわざ使わないといけなかったのですか」と聞き返してきました。

2017-12-24 15:23:20

補足。「それまでは契約書なんて必要なかったんでしょ?」という質問者の日本語にトリックがあります。これ、私の耳にはこう聞こえます。「契約書なんて必要ないとそれまでは誰もが*考えていた*んですよね?」 私が説明したのは「契約書が必要だと当時は(日本では)誰も知らなかった」という事実だったのですが、それを彼女は(おそらく悪意ではなく思考の浅さから)曲解したものと思われます。

uroak_miku @Uroak_Miku

16)「でも」「でも」で食い下がってくるんですよ。これで困ってしまったのです。いったいこの子は何を訊きたいのだろう?そこに夏目さんが割り込んできた。「独占権だよきっと。『西遊記』のアニメキャラクターをほかのノート会社に使われたくなかったので、それで『セイカのみと取引』と[続く]

2017-12-24 15:25:33
uroak_miku @Uroak_Miku

17)[続き]契約書のなかで特定しておきたかったんじゃないかな」 この解釈にはさらにとまどってしまいました。「ごめん夏目さんそれありえない。森永がディズニーキャラクターを自社のお菓子にあしらって商売したときも多分独占契約ではなかったはずです」と口をはさんだのですが。

2017-12-24 15:28:24
uroak_miku @Uroak_Miku

18)彼女の頭の中では「契約書を交わす必要がなかった時代/交わさないといけなくなった時代」の二区分になっていたのでしょうか。どうして急に左から右にスイッチが切り替わったのか、それがわからないという質問だったようです。

2017-12-24 15:31:20
uroak_miku @Uroak_Miku

これ、実はこう考えないといけないのですよ。「契約書を交わす必要があることを誰も知らなかった時代/皆が知るようになった時代」の二区分です。あるとき知ったから使いだした。アダムとイブが、裸でいることは恥ずかしいと知ったとき、人類は衣服を必要としたように。

2017-12-24 15:33:19
uroak_miku @Uroak_Miku

20)ディズニーのキャラクター商品化契約書は禁断の木の実となったのです。世界のディズニーが使っているのだから、これは世界標準なのだ、日本でもそうなんだろうとセイカは考えた。

2017-12-24 15:35:08
uroak_miku @Uroak_Miku

21)英文契約書を和訳して内容を研究した…とはいうけれど、当時の和訳文と思われるものがある本に載っていて、それを読んでみたのですが『解体新書』の和訳並みの粗いものでした。あの和訳で商品化権の理論をセイカが理解できたとはとても思えない。

2017-12-24 15:38:21
uroak_miku @Uroak_Miku

22)世界のディズニーがこうやって商売しているのだから、日本でも法律でこうなってるんだろう、だから契約を交わさないとまずいぞと素朴に考えたのですセイカ。素朴に。

2017-12-24 15:42:16
uroak_miku @Uroak_Miku

23)どうしてまずいのか、法理論で厳密に考えるには至らなかった。ディズニーのやり方がとにかく日本で踏襲された。どうしてこのやり方でないといけないのか、理論できちんと説明できるものは(ディズニー日本支社にも)いなかった。

2017-12-24 15:43:51
uroak_miku @Uroak_Miku

24)このやり方が手塚治虫の耳に達し、テレビアニメ『鉄腕アトム』の放映開始「後」にアトム商品をおそるおそる各業者が売り出したら飛ぶように売れて手塚のポケットには莫大な印税がなだれこんだ。手塚はアニメスタジオの社長も兼任していたから会社の帳簿にこの印税をまわした。

2017-12-24 15:45:55
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