理工系ジャーナリスト@ShinyaMatsuura氏の「原発関連昔話」ほか

放射能に関連して不安をあおる傾向が強いジャーナリストの言説が横行する中で、冷静な発言を続けていた松浦晋也氏の昔語りをまとめました。
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松浦晋也 @ShinyaMatsuura

そろそろ反原発運動があちこちで出てきているが…23年前、広瀬隆「危険な話」で反原発運動が盛り上がっていた1988年秋、霞ヶ関の工業技術院で取材をしていた時の事を思い出す。私は、通産省が上砂川の廃炭坑に作ろうとしていた無重力実験施設の話を聞いていた(続く)

2011-03-31 15:37:13
松浦晋也 @ShinyaMatsuura

通産省前には、反原発デモが来ていて大騒ぎをしていた。おばちゃんの声で、リパブリック讃歌(ぐろーり、ぐろーり、はれるーやー)の替え歌で「げんぱつなんかはいりませんー」と歌っているのが聞こえてくる(思い出した、しかもオンチであった)。(続く)

2011-03-31 15:39:53
松浦晋也 @ShinyaMatsuura

目の前のお役人に同情して「うるさいですねえ」と語りかけた。すると彼は「なに、すぐにいなくなりますよ」と軽く言い放った。その時理解した。デモも反対運動も、皆霞ヶ関を通り過ぎていっただけだったのだ、と。実際そうだった。冬を越して1989年の春になると反原発デモはいなくなっていた。

2011-03-31 15:42:09
松浦晋也 @ShinyaMatsuura

その後、折に触れて何度も通産省前で「げんぱつなんかはいりませんー」とがなっていたおばちゃんの声を思い出した。彼女は何を考えてデモに参加したのか、どこにいっちゃったのか。今なにをしているのか。そしてなによりも、あのデモの熱が続かなかったのはなぜなのか。(続く)

2011-03-31 15:44:19
松浦晋也 @ShinyaMatsuura

今までのパターン通りなら、今わき上がっている反原発運動も、いずれ雲散霧消することになる。なぜなら、原発は利権であり経済活動であるが、反原発運動は単なるファッションであり気分であったから。ファッションが経済活動に勝てるはずもない。

2011-03-31 15:47:23
松浦晋也 @ShinyaMatsuura

ファッションでも気分でもない、持続する反原発の動きを作りたいなら、原子力発電に関する科学と技術、そして歴史を、多くの人が理解し、「では、どうやったら原発なしで経済を回せるのか」と考えていく必要がある。まずは事実を徹底的にネットの明るみに出す必要がある。私はそう考えている。

2011-03-31 15:50:05
松浦晋也 @ShinyaMatsuura

立ち読み週刊朝日 原発元設計者が米メディアで告白「原子炉構造に欠陥あり」 http://bit.ly/ehX25B 今回の事故で初めてマーク1について調べたが、素人の私が定性的に見ただけでも「これはどうよ」という部分が目に付いたものなあ。定量的にもも危ない設計だったという話。

2011-03-31 16:36:31
松浦晋也 @ShinyaMatsuura

1960年代の日本は、マイクロソフトやらアップルやらのバージョン1.0に飛びついたようなものだったか。ソフトならアップデートできるが、原発はできない。今Windows1.0を使っていると考えると…

2011-03-31 16:37:47
松浦晋也 @ShinyaMatsuura

「御用学者」のリストが出回っている(面倒だからリンクは掲載しない)が、多様な意見にレッテルを貼って一様に「敵」に認定することは、ファシズム的という(あれ、これもレッテル貼り?)。まあ、おかしいと思うならきちんと根拠を示して指摘しないとね。

2011-03-31 22:35:58
松浦晋也 @ShinyaMatsuura

昨日に続き原発昔話。1986年4月、自分が就職した春にチェルノブイリ原発事故発生。自分はかなりのショックを受けたが、配属された機械技術誌編集部の雰囲気はのんびりしたものだった。さすがに某デスクから「たいしたことないんじゃない」と言われた時には驚きと反感を感じたものではあるが。

2011-04-01 11:24:58
松浦晋也 @ShinyaMatsuura

編集部には過去数年分(確か3年分だったか)の「動燃技報」があったので、新人訓練の合間に全部読んだ。ひっかかったのは、核廃棄物最終処分に関する記述だった。そこまでは技術的に細かく解説しているのに、最終処分になるとどの記事も抽象的な紋切り型記述となるのだ。

2011-04-01 11:27:57
松浦晋也 @ShinyaMatsuura

「濃縮・固化して最終処分場に埋設する」だったか。本当に判子で押したように同じ文章になるのだ。濃縮ってどうやるの?、最終処分場ってどこ?具体的にどう埋設して監視しつづけるの?…「動燃技報」には書いていなかった。

2011-04-01 11:30:02
松浦晋也 @ShinyaMatsuura

その時に思ったのは、原子力エネルギー最大の弱点はここじゃなかろうか、ということだった。まあ、あのころから原発は「トイレがない」といわれていたわけで、自分が独自に気がついたことでは全然ないが、技報みたいな技術を解説する誌面にも本音が出てくるんだな、と思ったのは覚えている。

2011-04-01 11:33:06
松浦晋也 @ShinyaMatsuura

一般とは異なる感想かも知れないが、私は福島の事故に「原子炉は通常思われているより安全なものじゃないか」と感じている。穴だらけの未成熟な設計と思しきマーク1炉が想定外(東電曰く)の災害に襲われ、後手後手の対応(記者会見その他からの印象)でも、この程度で踏みとどまっているから。

2011-04-01 11:39:13
松浦晋也 @ShinyaMatsuura

ただし、そこには現場の献身的な努力があることは言うまでもない。ここは忘れてはいけないポイントだ。そして、今後の展開次第では、この見解は修正されるかも知れない。そのことを含みおいてもなお、はっきりしていることがある。

2011-04-01 11:40:50
松浦晋也 @ShinyaMatsuura

これから安全な廃炉に向けた、長い長い道のりが始まる。そこにいくらかかるのか。どれだけの危険が伴うのか。廃炉の費用とリスクを含めると。推進側が宣伝してきた「安全でコスト安の原子力発電」は吹っ飛ぶかもしれない(残念ながら、私の現状の知識では断定できない)。

2011-04-01 11:44:22
松浦晋也 @ShinyaMatsuura

今まで原子力推進側は、廃炉コストを意図的に無視してきたように私には見える。今回の事故で、廃炉リスク・コストは社会全体の共有する認識となるだろう。脱原発の動機としては「結局、トータルでみたら原発は割に合わない」という経済的な認識しかないのではないか…と、今そんなことを考えている。

2011-04-01 11:46:55