2017年12月28日

古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 #3

急遽第六鎮守府に視察に来るという前の提督。それを迎える艦娘たち、そして衣笠の心境は。
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古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「ねえ、なんで私たち朝早くから埠頭で並ばされてるんだっけ?」 「雷ちゃんから朝話があったじゃない。なんでも雷ちゃんの前任だった提督が来るんだって」 「え!? 前のって、人間の提督ってこと!?」 「確か艦隊運営に嫌気がさして本土に帰っちゃった人だよね」 「今は海経連の所属らしいね」

2017-12-28 12:18:26
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「私見たことないー」 「私もー」 「もう何年も前の話だしね。前の提督がいなくなってから着任した子のほうが多いんじゃない?」 鎮守府の埠頭に並んだ艦娘たちが、そこかしこでおしゃべりに花を咲かせている。当直や近海の哨戒に当たっている艦娘以外は、非番の艦娘までもがそこに集められていた。

2017-12-28 12:20:53
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

もともと規則にはうるさくない雷ちゃんだけれど、今日は固い顔をして艦娘たちの先頭に立っているだけで、隊列も揃えずに勝手気ままにおしゃべりし続ける艦娘たちを注意する様子もない。第六駆逐隊の姉妹たちも、心配そうな顔を雷ちゃんに向けはするものの、声をかけられずにいる。

2017-12-28 12:23:38
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

雷ちゃんも、元はこの第六鎮守府に所属しているいち艦娘に過ぎなかった。第六鎮守府はトラック諸島に置かれた鎮守府の中でも古い方で、もともとはちゃんと人間の提督が着任して私たちの指揮をとっていたのだ。それなのに、ある時急に提督の仕事を放り出して行方をくらませてしまったのだ。

2017-12-28 12:26:23
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

重い艤装を背負って海を駆け巡り、得体の知れない深海棲艦という化物と日夜戦い続ける人ならぬヒト、艦娘。その存在を受け入れ、指揮を執り続けられるほど強い人間というのはそれほど多くない。ただでさえ艦娘の提督になるには何の法則性もなく先天的に得るしかない適性が必要なのにもかかわらずだ。

2017-12-28 12:28:21
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

深海棲艦との戦いにおいて、提督が関われるのは艦娘を出撃させるところまでだ。砲弾と魚雷が飛び交う戦場に突入してしまえば、提督が艦娘に指示を出すことなどできない。そのため、極論すれば人間の提督がいなくとも私たちは戦うことができる。しかし、妖精さんは違う。

2017-12-28 12:30:41
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

かつての日本海軍が鎮守府を構えた場所に、適性を持った人間の提督が腰を据える。そうしなければ、妖精たちが艦娘のための鎮守府を作ってくれず、艦娘の補給も修復もできない。「人間の提督が艦娘を指揮する」というカタチが、妖精さんには何よりも重要らしいのだ。

2017-12-28 12:33:22
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

よって、たとえ艦娘を率いて戦う強さを持ち得ない提督でも、適性さえあれば提督となることを強いられた。そうして各所に鎮守府を設け艦娘を運用し、人類を脅かす深海棲艦に対抗する。出現当時、全くの未知の脅威である深海棲艦に追い詰められていた人類は、なりふり構っていられる状況ではなかった。

2017-12-28 12:36:51
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

そんな状況でも、提督が艦娘や鎮守府を放り出す例は少なからずあったと聞く。一度その場に成立さえすれば、妖精さんは提督抜きでも働いてくれるため、そうした鎮守府は艦娘だけで運営される。この鎮守府も、駆逐艦の雷ちゃんが提督代わりとなって指揮を執り、今まで戦い抜いてきた。

2017-12-28 12:39:42
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

雷ちゃんは配下の艦娘の意向を最大限に汲んだ指揮をしてくれていた。例えば私たち第六戦隊にも縁深い難関海域、サブ島沖海域。その攻略を、青葉を旗艦に据えた第六戦隊に任せてくれた。訓練、装備開発、資源回収など鎮守府を挙げてサポートしてくれ、おかげで私たちはあの夜を乗り越えることができた。

2017-12-28 22:08:48
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

雷ちゃんが前の提督の後を引き継ぐことに決まった経緯について、金剛さん含め最古参の艦娘たちからは何も聞いたことはない。けれど、私たちは雷ちゃんが提督であることに疑問を抱いたことはなかった。それに、雷ちゃんの采配のおかげで、私の姉も古鷹ねーさんとちゃんと向き合えるようになったのだ。

2017-12-28 12:46:51
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

前の提督が、潜水艦たちの疲労を無視してオリョール海に延々出撃させ続けるような横暴な指示を押し付けていたせいもあって、艦娘ひとりひとりに的確に心を配った雷ちゃんの艦隊運営に、不満を漏らす艦娘はいなかった。特にイムヤは普段からしゃべらないけれど、雷ちゃんをよく慕っている。

2017-12-28 12:49:03
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

そう言えば埠頭に並んでいる艦娘たちの中に潜水艦娘がいないわね、とふと思った時、艦娘の誰かが無邪気に言い放った言葉が耳に飛び込んだ。 「ねえねえ、前の提督が来るってことは、これからはその提督が指揮するの?」 艦娘たちのおしゃべりが一斉にやみ、その場に沈黙が流れた。

2017-12-28 12:52:12
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「え、そうなの?」 「いや、そんなわけないでしょ。めったなこと言わないでよ」 「でもそうじゃなかったら前の提督は何しに来るの?」 「私に聞かないでよ」 さっきにも増してきゃあきゃあと騒ぐ艦娘たちの姿の先にかろうじて見える雷ちゃんの横顔は、固い表情をしたまま何の感情も読み取れない。

2017-12-28 12:55:23
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

雷ちゃんが提督の座から降ろされてしまうかもしれないなんて、考えたことすらなかった。けれど、そういう連絡を受けたと考えれば、電話を受けて受話器を取り落とした雷ちゃんの反応にも納得がいく。でも、本当にそんなことがあるのだろうか。その場合、雷ちゃんはどうなるのだろうか。

2017-12-28 12:58:19
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

不安に駆られて横に立っている第六戦隊の面々に顔を向ける。青葉は先日の一件以来古鷹ねーさんとちょっとぎこちなさそうにしていたものの、今は前の提督が気になるのか手帳を取り出して心なしかうずうずしている。加古は埠頭に来た時から眠そうで、今は舟を漕ぎ始めんばかりだった。

2017-12-28 13:02:02
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

時々はかっこいいところを見せてくれたりもするのに、どうしてこういう時に限って頼りにならないのかしら、と腹立たしくなる。そして古鷹ねーさんは、周りの喧騒も耳に入らないかのようにぴしっと直立して待機し続けていた。 「ねえ、古鷹ねーさ……」 「なに?」 「……ううん、何でもない」

2017-12-28 13:05:20
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

提督が替わることになったらどうする? とは聞けなかった。「提督が替わったとしても、私たちのやることは変わらないよ」と、古鷹ねーさんならそう言いそうだったから。確かに、誰が提督であろうと深海棲艦と戦うという私たち艦娘の仕事は変わらない。けれど、私は戦うなら雷ちゃんの元でがいい。

2017-12-28 13:10:51
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

古鷹ねーさんと青葉の仲直りのきっかけを作ってくれたのは雷ちゃんだ。その恩も返せていないし、何より雷ちゃんの元でなら何も心配せずに戦える。艦娘の疲労を無視して命令を下すような傍若無人な提督に替わったら、ちゃんと戦えるのかどうかもわからない。

2017-12-28 13:13:47
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

そんな思いにとらわれていると、金剛さんのよく通る声が響いた。 「ハーイ! トーキングもイイけど、そろそろストップネー! 船が見えましたヨー!」 頭を上げると水平線近くに黒煙を上げながらこちらに向かってくる船影が目に入った。姿勢を正してそれを待つ。まだ何も決まったわけじゃないのだ。

2017-12-28 13:16:54

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