新春横須賀第五司令部

振袖暁と振袖しおい
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たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

「ねえねえ、おにいさん、みてみて!」 ふと見上げると艶やかな振袖に身を包んだ笑顔の似合う少女がいた。吹き荒ぶ空っ風をものもともしない太陽のような笑顔は縁起の良いものにすら思えた。 「ああ、似合ってるじゃないか、しおい」 「えへへー、かわいい?」 「よく似合ってるよ」

2018-01-01 10:05:47
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

「じゃあさじゃあさ!初詣!行こうよ!」 溌剌とした少女は手を掴み、ブンブン振りながらねだる。腕が千切れそうなほどだ。 「ああちょっとしおいちゃん!まだ簪つけてないじゃん!うちもまだ着付け終わってないのに走んないでよー!」 「えへへーごめん鈴谷さん」

2018-01-01 10:09:38
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

「じゃあおにいさん!着付け終わったらみんなで初詣ね!」 「ああ、ちゃんと鈴谷に着付けてもらうんだぞ」 「はーい!」 「ほらいくよしおいちゃん」 「いこーいこー!」 最近はしおいは太陽の子というより嵐の子の方が合うんじゃないかというほどのわんぱくぶりに思えて来た。

2018-01-01 10:12:30
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

執務室の神棚に置いてある縁起物を下ろさなくてはならないな、そう思って椅子を動かしているとまた来客が来た。 「ん?提督何してんだ?」 「あっ、司令官!ダルマさんの目書いてもいい!?」 暁と天龍の二人だった。ともに遠征に出撃して以降、天龍、龍田、暁の三人はほとんど一緒にいる。

2018-01-01 10:22:03
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

「おお、二人ともおはよう、暁、筆ペンならひきだしにあるから準備してくれ。天龍も頼めるか?」 「わかったわ!天龍も手伝ってね!」 「ああ、新聞紙を持ってくるよ」 ふと、龍田がいないことに気づいた。いつもなら何も喋らないにしても天龍の後ろに必ずいたのだが。

2018-01-01 10:32:37
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

「そういや龍田はどうした?」 「ああ、毎年こうなんだ、龍田は寝正月派でな、初詣も人が少ない時に行くんだ。」 「へぇ、なんだか龍田らしくないな」 「なんだか龍田さんらしくないわね」 「はは、俺もそう思うよ、まあ普段夜更かししないけど大晦日は無理して年を越すからな、あいつ」

2018-01-01 10:44:20
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

暁にも振袖を着せてやらないとなと思ったが、大事なことを伝え忘れていた。 「そうだ、天龍と龍田の振袖は間に合わなかった。すまんな」 「ああ、別に構わない、龍田なんてそもそも着る機会を逃してるからな」 「違いない」 神棚のダルマを暁に渡す。紙袋何処にしまったっけな、しめ縄を入れる袋がない

2018-01-01 10:54:26
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

「さて、と、目玉を入れてあげなくちゃね!」 すでに入っている片目を見てみると、なかなか気合の入った描き込みで描かれていた。 「…片目は暁が入れたのか?」 「ええ、そうよ、なかなか素敵な目じゃない!?」 「なかなか…すごいな…」

2018-01-01 11:01:22
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

「おにーさん!できたよ!」 はしゃぎながらしおいが部屋に入って来た。振袖を着れば少しはおしとやかになってくれるかと思ったがダメそうだ。 「さ、次は暁ちゃんだよ、こっち来て」 「えー、まだダルマさんに目玉入れてないよー」 「あとは暁ちゃんだけだよ、ほらはやく」

2018-01-01 11:06:31
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

「あ、そうだ、しおい、紙袋探してくれるか?」 「お焚き上げするやつ?」 「そ、おっきめのやつ、大掃除で捨てたんだっけ?」 「何枚か残してあるけど一つに入りきらないよ」 「だるまは暁が抱えていくから大丈夫だよ」

2018-01-01 11:16:54
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

「ダルマの目玉、まだ入れ始めたばかりだね」 「勝手に入れるなよ、暁めちゃめちゃおこるぞ」 「入れないよ、碇でぶん殴られたくないもん」 「殴られたことあるのかよ…」 「間違えておにーさんに出そうとした中辛を暁ちゃんに出しちゃってフルスイング食らってことあるよ」

2018-01-01 11:22:30
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

しめ縄、お札、破魔矢、羽子板を袋に詰めながら出かける準備をしていると、着付けが終わった暁が戻って来た。 「司令官、戻ったわ」 思わず息を飲んでしまうほど可憐に仕上がった暁は、麗しき大和撫子と呼ぶに相応しいほどになっていた。 「…司令官、どうかした?」

2018-01-01 11:32:05
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

「いや、なんだか…レディというより、美少女って感じがするなって」 「…そう?」 「そりゃ、私が着付けたんだから当たり前じゃん、暁ちゃんは私が手塩にかけて育てた麗しのレディなんだから」 「鈴谷さんすごい着付けが上手だから気分が引き締まるわね!」

2018-01-01 11:36:56
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

「さて、暁、だるまに目を入れて置いてくれ」 「はーい」 「いやー、暁ちゃんは毎年手がかからなくて助かるわー」 「なんだか嬉しそうだな、鈴谷」 「あったりまえじゃん!可愛い妹ができたみたいで私は嬉しいよ!」 「なんかシスコンみたいだな」 「シスコンじゃないから」

2018-01-01 11:42:42
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

みんなの着付けが終わり、これから出発するところで天龍が言い出した。 「龍田はどうする?」 今は爆睡状態でなかなか起きないだろうが連れていくべきだろうかと言われた。 「眠いのに無理やり起こすわけにもいかないだろう」 「龍田が眠くない時にまた行けばいいじゃん?」

2018-01-01 11:47:31
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

五人で近場の神社に向かった、お焚き上げを済ませて参拝に来た。だるまが燃える瞬間をすこししょんぼりした顔で暁が見つめていた。なんだかんだでだるまは暁が毎日掃除してたから思い入れがあるんだろう。

2018-01-01 11:53:07
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

「司令官は何お願いしたの?」 「まあみんなが無事でありますように、ってくらいかな」 「なんか普通ね」 「うるせぇ、そういうお前はなにお願いしたんだよ」 「レディのひ・み・つ」 「だるま代、お前の給料から天引きしようかなー」 「ええ!?なにそれ!職権濫用よ!」

2018-01-01 12:07:58
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

「てーとく」 「ん?何その手」 「おみくじ代」 「あたしも!」 「自分で出せバカ!」 「けちー」 「ぶーぶー」 「うるせぇ!」

2018-01-01 12:12:02
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

「えーそれでは、毎年恒例おみくじ見せ合いの時間です」 「しおいは去年大凶だったからなー」 「吊るし上げて気絶とかしてたもんな」 「なんだかんだで暁ちゃん毎年大吉だよねー」 「なんでかしらね?」 「そんじゃいくぞ!」

2018-01-01 12:16:35
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

「せーの!」 「…」 「俺は中吉だな」 「暁は大吉よ!」 「うちは末吉だったよ、天龍は?」 「俺は…吉だな…」 「しおいは?」 「…何も書いてない」 「そんなわけない…うわ、マジだ、真っ白」 「ちょwwwウケるwww白紙ってwww」

2018-01-01 12:20:34
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

「あ、司令官、袖に筆ペン入ってた」 「なんで入ってんだ、しまっとけ…いや、やっぱり貸してくれ」 「何に使うの?」 「真っ白なら自分で書いちまえってやつだ、しおい、紙貸せ」 「な、なにするの」 とりあえずなんか書いておこう、そう思って俺は「しお吉」と書いた

2018-01-01 12:24:44
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

「しお吉ってなに?おにーさん」 「しおいが元気でいられる運勢だ」 「それって大吉よりすごい?」 「ああ、すごいぞ」 「やったー!しお吉ー!」

2018-01-01 12:27:37
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

はしゃぐしおいと、甘酒をありついた暁と天龍、縁起物一式を抱える鈴谷とともに、俺たちは帰路に着いた。 「今年はいい年になりそうね!」

2018-01-01 12:30:48
たこいちろう@天然記念物 @_TKKC_

今回のすこポイント ・おみくじでまさかの白紙を引くしおいと爆ウケ鈴谷

2018-01-01 12:31:46