140ssログ12月、1月

石かり、薬宗、髭膝ログ
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やまたに @mw_snc

誰かが髭切と十呼ぶ間に、君が兄者と百回呼ぶ。誰かが獅子の子と千回呼ぶ間に、君は兄者と万回呼んだ。それでいて、名前が大事だと言うのだ。僕を一番形作ったのは君だろうに、名前でなど呼んでくれなかったのに。今だって、ほら。どんな名前より多く。自分を呼ぶ弟の声がする。(髭膝)

2017-12-04 06:45:33
やまたに @mw_snc

大人びて見えるけれど、と石切丸はその頬に触れる。吸い付く肌は若いを越して幼い。もちもちだねぇ。おじさんの発言だなぁ。呆れた眼差しごと手のひらで揉みこんだ。悪い口ごと食べてあげようか。だからそれが。言いかけて、青江が笑う。途中でへばらないでおくれよ、おじさん。望むところだ。(石かり)

2017-12-04 06:58:57
やまたに @mw_snc

むにむにと唇を食んだ。薄くて長い舌を舐めると、はふ、と犬みたいに弟は鳴いた。よしよしと頭を撫でて、今度は甘く噛む。びくりと跳ねる舌が可愛い。いつまでも続けていたいけど、呼吸を確保するために仕方なく離れれば、すっかり腫れてしまった唇が、あにじゃ、と甘えるから。もう一度貪った。(髭膝)

2017-12-04 07:06:57
やまたに @mw_snc

花占いなんて子供騙しだ。わかっていて宗三は花弁を一枚捨てた。好き、嫌い。奇数の花を選べば勝つ賭けだ。それすら知って、偶数を選ぶ。ぷち、ぷち。なに散らかしてんだ。声がするまで。どうしましょう、嫌いで終わりそうですよ。お前を散らす方が、よっぽど当たりそうだがな。どうぞご随意に。(薬宗)

2017-12-04 07:21:44
やまたに @mw_snc

泣き虫、と、からかうと泣いてはないと言い訳して。源氏の重宝が泣くなどと。言いながらも目元を擦るんだから、本当に弟は泣き虫だ。よしよし、泣かないの。泣いてないぞ。まだ嘘を吐く唇を髭切は塞いでしまう。ほんのりと塩味だ。(髭膝)

2017-12-13 07:04:55
やまたに @mw_snc

金色の瞳が蜂蜜みたいにとろける。その瞬間が好きだなぁ、と髭切は思うのだ。普段きりりとした顔が緩む様が。それが、自分の前でだけ変わることが。お前の目、甘そうだよね。言うと、怯えてぎゅっと目を閉じるから、仕方なく瞳を隠した瞼をぺろりと舐めた。(髭膝)

2017-12-14 07:22:05
やまたに @mw_snc

手を合わせる。指を絡める。これが幸福なんて、ただの刀であった頃の僕は知っていただろうか。青江は温度の違う肌に思う。切って、退けて、拒んで。それが役目だと誇っていたけれど。今も誇りはそのままに、切るためじゃない手のひらにも意味があると思えるなんて。石切丸、君の手は暖かいね。(石かり)

2018-01-04 06:56:01
やまたに @mw_snc

ぼくみたいに薄緑が本当は存在しなかったら、あなたはどうしますか。幼子の問いに髭切はころころと笑った。どうでもいいかな。本心を答えれば、むうと膨れる頬。あなたのおとうとのことなのに。そう、だから、どうでもいいよ。僕の対が、僕のために作られた対に変わったところで、僕のもの。(髭膝)

2018-01-04 07:01:50
やまたに @mw_snc

宗三、宗三。優しい声がする。己を一等甘やかしてくれる声だ。背中を押してくれる手だ。僕に、優しくしなくてもいいんですよ。俺がそうしたいんだ。薬研はそう言うけれど。この声が聞こえなくなったらどうしよう、そう思うのが嫌なんです。そりゃあ、本望だ。宗三、また、甘い声が降る。(薬宗)

2018-01-04 07:12:20
やまたに @mw_snc

弟の、意外と幼い寝顔を髭切は眺める。普段からこういう顔をしてたらいいのに。戯れに頬に触れると、ほにゃほにゃと寝言を言いながらすり寄ってくるところがまた、小動物みたいで。可愛いなぁ。口の端を緩めて思う。やっぱり、こういう顔は僕だけが見ていればいいや。(髭膝)

2018-01-05 06:58:50
やまたに @mw_snc

首筋に跡を付ける。俺のだって印だ。軽い調子で明かされる独占欲が可愛くて、どうぞお好きにと宗三は返した。鎖骨、腹、太腿まで花が散らされて。けれど。ここだけはできねぇなぁ。刻印の残るそこに触れて言うものだから。とっくにその下も、柄まで通されてますよ、なんて。(薬宗)

2018-01-05 07:13:10
やまたに @mw_snc

好きだよ、と素直に告げるのに、どらぼどの勇気が必要だったか君は知っているだろうか。物が恋愛感情を抱くこと。刀が誰かを慈しむこと。君に惹かれること。僕が、恋に溺れること。全て恐ろしくて。青江は震える声で告げる。君が、好きだよ。彼は、あっさりとそれを受け止めてしまうのだ。(石かり)

2018-01-05 07:26:10
やまたに @mw_snc

ちゅ、ちゅ、と音がする。触れては離れる唇は、色気よりもいとけなくて髭切はこそりと微笑んだ。そんなときばかり偵察を発揮する弟は、眉を寄せるけれど。それでも口付けをやめないのは、そういう気分なのだろう。甘えられてると思えば、受け入れるしか兄の役目はない。ただ、物足りないけれど。(髭膝)

2018-01-06 23:39:32
やまたに @mw_snc

結び目が取れそうだよ、と言って青江は萌黄の服に手を伸ばす。少し左に肩が落ちているなと思ったからそれも直して、ついでだからと他の身なりも確認して。よく出来た嫁だなぁ。三日月がからかうけれど。真夜中、彼が最後に浴衣を着せてくれたらしいからお互い様だ。多分ね。(石かり)

2018-01-06 23:43:04
やまたに @mw_snc

ずるい、と弟が呟いた。なにが。問えば、頬を膨らませて。俺もどけと言われてみたい。お前ねぇ。本当に言えば泣き出すだろうに。いや、言葉ではなく、多分、強く指示されたいだけなのだろうけれど。黙れ。要望通り、強い口調で。素直に結ばれた唇は、すぐにこちらから抉じ開けた。(髭膝)

2018-01-10 07:14:10
やまたに @mw_snc

ちゅ、と唇が触れた。頬に、額に、肩透かしに鼻の頭へと弟が口付ける。なあに、どうしたの。同じようにしながら問えば、この子はやたらとご機嫌に。好きだぞ、兄者。うん、それで、どえしたの。答えはついぞ唇に誤魔化されてしまった。(髭膝)

2018-01-13 01:22:48
やまたに @mw_snc

柔らかな髪が肩に触れる。うたた寝か、兄者。返事は穏やかな寝息だ。ならば、と頭を支える肩とは反対の腕を伸ばして頬に触れた。唇をつつく。前髪を耳にかける。そうやっていると、くすくす笑い声がして。狸寝入りか、兄者。お前がちょっかいをかけるから。兄者に触れたくなって、なにが悪い。(髭膝)

2018-01-13 01:42:15
やまたに @mw_snc

ぐちゃぐちゃのシーツの上に、自分の他に寝転がるひとがいる。その短い髪に寝癖を見つけて、青江はくすりと笑った。もにょもにょと動く唇に、なんの寝言かと首を傾げる。まだまだ彼は夢の住人だ。僕は腰が痛いのに、幸せそうな寝顔にぶうける文句は柔らかい。だって、この上なく幸せな朝だ。(石かり)

2018-01-13 01:55:40
やまたに @mw_snc

あ、と弟の声がしたから振り向いた。青江に用があった。そうなの。言って見送る。あ、と弟が呼ぶから振り向く。あいすも買うのだった。はあい。あ、の音だけで一々振り向いてたら大変だろう、と誰かが言うけれど、髭切は気にしない。あにじゃ、その音を紡ぐ弟の表情は、とても可愛いのだから。(髭膝)

2018-01-13 14:49:45
やまたに @mw_snc

君の生まれた「膝丸」。主を救った「蜘蛛切」。共に夜を過ごした「吠丸」。どれも、とても大切で選べないなぁと髭切は弟の前髪を弄びながら思う。この色だって、別に嫌いじゃないけれど。ねぇ、弟。膝丸だ。律儀に返してくれるから、意地悪したくなっちゃうなんて、お兄ちゃん失格だろうか。(髭膝)

2018-01-13 14:58:35
やまたに @mw_snc

名前をつけてなんの意味があるのだろう。兄の言葉に、膝丸は眉を寄せた。名を付けられなければ、存在が出来ぬだろう。そうかなぁ、と髭切は首を傾げる。なら、僕がお前を想っているのも、恋か、家族愛か、別のなにかか、決めなくてはいけないのかな。お前は決められるの。弟が、難しい顔をする。(髭膝)

2018-01-13 15:40:37
やまたに @mw_snc

悪い子、と弟を叱る。むぅ、と尖らせた唇に噛みついた。可愛くて。いやいや、ほだされてはいけない。髭切はこほんと咳払いして、話を戻す。ええと、なんだっけ。忘れるくらいなら、続きをしてくれ。それでもいいかなぁ、と思ってしまえばこちらの負けだ。白旗の代わりに、上着を畳に落とした。(髭膝)

2018-01-13 18:23:23
やまたに @mw_snc

とろとろと砂糖を煮詰めるように、弟の瞳が艶めく。兄者。吐息混じりに呼ばれて、髭切は肩を竦めた。その間にも弟は、距離を詰めて。蛇のとぐろか蜘蛛の巣か、どちらにしろ逃げられない気配に弟の性を思う。なら僕は、と言われれば。与えられた贄を食べぬ鬼も獅子もいるだろうか。(髭膝)

2018-01-15 11:53:00
やまたに @mw_snc

爪先、脹ら脛、太腿。俊敏なこの子を支える足は綺麗だ。くすぐったい。くすくす笑うこの子は可愛い。薄緑色の髪も綺麗。覗く金色も可愛い。兄者。呼ぶ声は、一等。もっと呼んで。ねだると、望み通り繰り返される音。お前しか呼ばない、人がつけたのでもない、特別な僕の名前に聞き入るのだ。(髭膝)

2018-01-16 07:06:42
やまたに @mw_snc

いけない子だ、と石切丸は大脇差を抱き締めた。畑仕事のあとなんだけどなぁ。文句を言う唇を塞いで。他の刀へ見せるなんてね。ジ、と開いた上着の中身は素肌しかなくて、それをわかっていて、探る。今日は、なにも入っていないよ。諭す声に。私の一番好きなものに触れているよ。肌をなぞる。(石かり)

2018-01-16 07:32:58
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