討論から築論へ 「討論=議論」からの脱却

議論のことを討論と同じだと考えている人は多い。しかし討論は相手をどんな手段を使ってでも言い負かすという「勝敗」にばかり重きをおいた、偏った手法だ。
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shinshinohara @ShinShinohara

日本人は長らく議論が下手だと言われてきた。「朝まで生テレビ」でも、昔は「日本は西洋と違って、白黒はっきりさせないグレーの決断をする特色があるんですよ」とか言って、意見を曖昧にする政治家が多かった。ところが最近は、日本人は意見をはっきり示して相手を論破することが増えてきた。

2018-01-03 21:53:13
shinshinohara @ShinShinohara

それでも私は、いまだに日本人は議論が下手だと考えている。実は多くの日本人が、議論と討論を混同している。討論は字のように、「相手の論を討つ」という戦闘的な姿勢。欧米はこの討論も巧い。恐らくはキリスト教の歴史と関係しているだろう。「異端」を討つ必要があったからだ。

2018-01-03 21:56:12
shinshinohara @ShinShinohara

キリスト教はかつて、色々な宗派に分かれていた。それを統合する重要な役割を果たしたのが聖アウグスティヌスだ。彼はゾロアスター教など様々な他宗教の影響を受けたキリスト教の分派と討論し、勝ち続けることで自らを正統派、負けた方を異端とした。

2018-01-03 21:59:16
shinshinohara @ShinShinohara

聖アウグスティヌス以降、西欧キリスト教は常に自らの教理とずれるとする集団に対して討論し、自らの正当性を主張することで相手を異端とし、勢力を拡大してきた。その伝統があるから、西欧は討論にめっぽう強いし、学校の授業でも討論は重要視されている。

2018-01-03 22:01:36
shinshinohara @ShinShinohara

西欧の学校では、2つのグループに分かれて討論することがあるという。一定のルールはあるが、この場合はともかく「言い負かした方が勝ち」。真実は負けた方にあったとしても、言い負かした方が勝ちなのだ。そのためには様々なテクニックを導入する。討論の目的は真理探求ではなく、勝敗だ。

2018-01-03 22:04:13
shinshinohara @ShinShinohara

しかし、科学の論文で論ぜられるDisucussionは、討論ではなく議論。持論だけでなく様々な意見も紹介し、それぞれのもっともな点と弱点を総合して論じ、真実はどこにあるのかを探る。議論は真理探求のために進められるものだ。

2018-01-03 22:06:04
shinshinohara @ShinShinohara

ファシリテーターをすえて行われるワークショップは、討論ではなく議論だ。相手の意見を否定せず、新しい視点を提供してくれたものと好意的に受けとめ、持論との違い、隔たりはなぜ生まれるのかを互いに意見しあい、間を埋めていく。討論とは全く異なる。

2018-01-03 22:07:53
shinshinohara @ShinShinohara

しかしどうも日本では「議論=討論」というイメージが強く、「議論は苦手」という人が多いのも、他人の意見を尊重せず、自らの意見をごり押ししようという討論をイメージしていることが多い。また、ごり押しする人間も、討論で勝利したものに真理真実があるのだという心得違いをしている者が多い。

2018-01-03 22:11:03
shinshinohara @ShinShinohara

確かに議論という概念には討論も含まれている。議論は広い概念なのだ。そこで私は、議論から討論の概念を抜いた、建設的議論に別の名を提唱したい。それが「築論」だ。多様な意見があることを喜びながら、どう組み合わせればより優れた意見へと昇華できるのかを共に探る議論のことだ。

2018-01-03 22:14:42
shinshinohara @ShinShinohara

インドの昔話でこんなのがある。目の見えない人たちが象を生まれて初めて触り、尻尾を握った人は呼び鈴のヒモ、足を触った人は柱、胴を触った人は壁、耳を触った人はカーテンと、思い思いの意見を述べあって、なかなか象だと分からなかったという話。

2018-01-03 22:17:13
shinshinohara @ShinShinohara

「討論」だと次のようになる。尻尾を握った人が口達者で、「柱?お前は柱をいつもナデナデしているのか?気色悪いやつだ!バカも休み休みに言え!」などと他人の意見を全部ボロクソに言って全否定し、いかに自分の「呼び鈴のヒモ」説が豊富な経験に裏付けられたものかを強弁し、言い負かそうとする。

2018-01-03 22:21:18
shinshinohara @ShinShinohara

「築論」だと次のようになる。「面白いねえ、みんな意見が違うね。同じものを触っているんだろ?」と問いかけ、みんなにさらに詳しく報告してもらう。他人の意見を踏まえた上で自分の触っているものをもう一度確かめ直し、ついに「これってもしかして、噂に聞く象じゃないか?」とたどり着く。

2018-01-03 22:24:53
shinshinohara @ShinShinohara

あるいは「討論」は、柱が板や釘、瓦などをバカにし、全否定し、いかに柱が素晴らしいかを主張するようなもの。討論に勝利しても家は建たない。しかし「築論」なら、礎石、柱、釘、板、瓦、すべての素材の特徴を見極め、活かしきり、家を建てるようなもの。

2018-01-03 22:28:55
shinshinohara @ShinShinohara

日本は「朝まで生テレビ」やネットの「2ちゃんねる」などのおかげで、ずいぶん「討論」が巧くなった。しかしそれでは夜郎自大の人間を増やすだけでちっとも生産的ではない。そろそろ日本人も「築論」の腕を磨いてほしい。

2018-01-03 22:30:53