フォビドゥンフォレスト６話「フォビドゥンフレイム」#2 「墜落する奇跡」

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「フォビドゥンフォレスト６話「フォビドゥンフレイム」#1 「降臨する奇跡」（歌あり）」をトゥギャりました。 togetter.com/li/1186517

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「フォビドゥンフォレスト６話挿入歌　「Forbidden Flame ～鳥姫の詩～」」をトゥギャりました。 togetter.com/li/1186520

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「フォビドゥンフォレスト６話「フォビドゥンフレイム」まとめ」をトゥギャりました。 togetter.com/li/1186521

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フォビドゥンフォレスト６話「フォビドゥンフレイム」 #2 「墜落する奇跡」

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―森の奥。桐葉たちの心配を余所に、涼平は全くの健在だった。消耗してはいたが、あと二十分は戦い続けられる程度の余力はあった。敵のオオムカデも残り一匹まで片付けた。だが三十メートル先のオトロシの元にすぐに駆けつけることはできない。新手の敵が睨みを効かせているからだ。 1

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新手たちが放った光弾を躱した涼平は、最期のムカデに止めを刺すべく鎖を肩の上に構えた。その眼前、ムカデの背後に六角形の扉が現れた。涼平は次に起こることを予見して、後ろに飛び退く。直後、炎弾がムカデを一撃の下に粉砕した。扉から出現した瑠梨は更に羽手裏剣を空へ向けて放つ。 2

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羽は各々別の軌道を描いて、ガイアを苛んでいた飛杭鳥たちを次々に殲滅していく。瑠梨は神楽鈴を打ち鳴らす。周囲の物陰や樹上から呻き声が上がり、何かが倒れ、あるいは落ちてくる。既に移動していた涼平はその中の、頭から真逆さまに落ちてきた一体を受け止め、地面に下ろした。 3

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＜そやつらは任せたぞ＞ 十メートル上空に浮いたまま瑠梨が呟く。耳元、あるいは頭に直接訴えるような声だった。涼平は無言で頷いた。瑠梨は新手の潜んでいた林と岩山の間を音もなく飛翔し、瞬時にオトロシの眼前に辿り着いた。左手の扇を前に突き出し……炎弾を放つことなく収めた。 4

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オトロシの体には無数のヒビが入っている。先日の姑獲蝶と同じだ。力を酷使したことで限界が来ているのだ。本来なら妖怪がこのような状態で無理に戦い続けることはない。姑獲蝶の時と違って子を守る為というような理由でもあるまい。瑠梨はそっと神楽鈴を鳴らす。オトロシは灰となって消えた。 5

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瑠梨は一度涼平の顔を見ると、即座に上空に昇る。煙を上げて墜落しつつあったガイアに向けて扇を突き出す。ガイアのすぐ下に六角形が出現し、ガイアを何処かへと転送する。扉が消えるが早いか、瑠梨は雪原中央へと瞬時に飛び、そこで翼がふっと掻き消えた。体が緩やかに落下していく。 6

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「瑠梨！」 片桐は北へ走った。障害物を残り僅かな刃を足場にして飛び越え、転びかけても気合で起き上がり、瑠梨が落下するであろう地点へと急いだ。そこはちょうど砦の敷設予定地だった。真下には久浦たちがいる。 「来い！」 南側を見ていた祥太は、片桐が声の届く距離に来ると叫んだ。 7

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「久浦！」 片桐は一気に距離を詰めると大きく跳躍した。祥太はデモンズデザイアを操り触腕を絡め合わせる。片桐が飛び乗った瞬間、触腕は大きく跳ね上がり、同時に片桐も跳躍する。片桐は更に剣を振るい、刃を飛ばす。残り全ての刃を梯子状に並べ、瑠梨の元へと駆け上がる。 8

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「瑠梨！」 瑠梨の体は最初、ゆっくりと落ちていたが、それは可視化された赤いオーラの浮力によるものだった。オーラが消え失せるに連れ、落下速度は増していき、今や自由落下の速度になりつつあった。飛び上がった直後、地上三十メートルの辺りで片桐は瑠梨を抱きとめた。 9

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「ぐっ…！づっ…！」 片桐は悲鳴を飲み込み、その顔が苦痛に歪む。衝撃は然程ではなかったが、瑠梨の体に残る熱が彼を焼いた。コートの焦げる匂いが鼻を突く。布越しに腕も火傷を負っただろう。一方で瑠梨の纏う巫女服には傷一つない。だが、その肌は、髪は…。片桐は目線を逸し、天を睨みつける。 10

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「そのまま来い！」 地上の祥太の叫び声が後ろから届いた。 「頼むぞ！」 片桐は可能な限り後ろに首を曲げて叫んだ。背泳ぎの飛び込みに似た姿勢で、瑠梨を抱えたまま重力に身を任せる。その間も瑠梨の熱が片桐を苛む。 11

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熱が下がっているらしい気配は感じられるが、まだ常温には程遠い。覚悟なしに触れれば、反射的に手離してしまう温度のままだ。片桐は歯を食いしばって耐える。せめてコートを脱いで被せるべきだったか？だがそんな暇は無かった。詮無い後悔だ。 12

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「３！２！１！…ゼロ！」 祥太のカウントに合わせて、片桐は衝撃を和らげるべく両脚と左腕を外側へと大きく開いた。同時にデモンズデザイアの触腕も二人をふわりと受け止めた。片桐が衝撃から回復する数秒を待って、触腕が二人を雪原へと降ろした。 13

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実のところ、デモンズデザイアだけでも瑠梨は無事に受け止められるのは分かっていた。『神が去った』直後の瑠梨が熱を持っていることも先刻承知だ。それでも片桐は駆け、祥太はそれを助けたのだ。 14

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触腕から降りると、片桐は表面を払った雪の上に、右腕で抱いていた瑠梨を寝かせる。雪から湯気が立ち上がる。これを手で払い、片桐は瑠梨の肩に手を載せて声を掛ける。 「瑠梨！しっかりしろ！」 遅れてやってきた佐祐里が瑠梨の頭に雪を掛ける。 「瑠梨ちゃん！瑠梨ちゃん！」 15

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瑠梨を取り囲む片桐たちの元へと、山小屋から担架を持った隊員がスノーバイクで急行してきた。すぐに片桐の火傷共々手当てが始まる。周囲の他の隊員たちは現状の把握と怪我人の手当、搬送に慌ただしく動いている。 16

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先程の祓いによって晴れたのは、オトロシが放ったジャミング効果の霧だけではなかったらしく、元々の瘴気濃度自体も一時的に下がっていた。笹田たちと涼平、ガイアとの通信も可能となり、無事が確認された彼らの元へも援軍が出発した。 17

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瑠梨たちの治療や敵の正体の解明、砦の敷設作業を予定通り行うのかの検討など懸案事項はいくつもあったが…ひとまず事態は収束したのだ。時刻は二時半過ぎ。砲撃が始まってから三十分と経たない間の激戦だった。戦い疲れた者たちは、待機部隊と入れ替わりで順番に休息に入っていった。 18

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フォビドゥンフォレスト６話「フォビドゥンフレイム」 #2「墜落する奇跡」終わり #3「ウォーロック」に続く