異世界小話~召喚された少年が幼い妹を守るために体を売る話~

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帽子男 @alkali_acid

異世界に召喚された少年が幼い妹を守るために体を売る話。

2017-12-15 23:59:59
帽子男 @alkali_acid

「やだ!ばっちい!」 とかいう妹の顔をよごしてボロを着せて、こぎたない男児の格好をさせる少年

2017-12-16 00:02:24
帽子男 @alkali_acid

「これまずい!食べられない!」 ってゴミみたいなパンを吐き戻す妹のために市場のしなびた果実をひとつ盗んでくる兄 「これなら甘いだろ」 「すっぱいよ…」

2017-12-16 00:04:04
帽子男 @alkali_acid

@alkali_acid 夜中に目がさめて 「お兄ちゃんごめんなさいごめんなさい」 と泣きつく妹 「うち帰ったら皿洗い当番百回やれよ」 「やるぅ…」 「ばかやんなくていいよ」 みたいな話をする兄妹

2017-12-16 00:07:38
帽子男 @alkali_acid

ある日、兄が僧院の炊き出しに並んでいるあいだに縄張り意識の強い孤児が喧嘩を売ってきて 路地裏にひきずりこみ叩きにする。 「おいおいそんくらいにしとけ」 と物陰から声をかける大人

2017-12-16 00:10:17
帽子男 @alkali_acid

派手な化粧と性別不詳のほっそりした容姿。胡粉の匂いがきつい。 優しげな物腰だが、目に冷たい光がある。 「あにき…」 「姐(あね)さんと呼べっていったろ…このよそものはお前等の仲間にすんのかい」 「冗談んじゃねえや。言葉もろくにしゃべれねえひょろひょろ」 「じゃ…もらってっていいね?」

2017-12-16 00:12:43
帽子男 @alkali_acid

孤児達は顔を見合わせてから神妙にうなずいて引き上げる。 「運がよかったじゃないか。見かけによらず凶暴なんだよあいつら。あたしも同じ生まれだから分かるけどねえ。割って入らなきゃ刃物が出てた」 「ことば…すこし…わからない」 「ああそうだったねえ。ふうん。いいとこの家の奴隷の子かい?」

2017-12-16 00:14:32
帽子男 @alkali_acid

「まあいいさ。路上に落ちてりゃうちの組のもんだ…」 「ぼく…かえる…かぞく…いる」 「家族う?そんな上等なもん持てる身分なのかあい?まだ分かっちゃいないようだねえ」 きれいに爪を塗った細長い指が宙でおどると、外科医の手術道具のような細身の短剣があらわれる。 「死にたい?」

2017-12-16 00:16:20
帽子男 @alkali_acid

歯を打ち鳴らしながら首を横に振る少年。しかし意味は通じない。あわてて手を組んでこの土地の神々への祈りのまねごとをする。 「ゆるして…かえらせて」 「なにか勘違いしてるようだねえ。あたしはあんたに仕事をくれてやろうてんだよ…金がもらえて…たらふく食えて…気持ちよくなれる…」

2017-12-16 00:18:37
帽子男 @alkali_acid

提案は、実際は命令だった。逆らう術がなかった。 先に立って歩く大人に従ってゆくと、道は石畳と煉瓦の市街を離れ、円状城壁の外、薄汚れた色とりどりの布が森の木の葉のごとく無数に重なって雨露をしのぐ城外地へ。

2017-12-16 00:22:13
帽子男 @alkali_acid

得体のしれぬ獣を煮る大鍋の匂い。粗末な仮小屋の中で屎尿を貪り食う蝦蟇に似た家畜の匂い。 何か国語もで喚き合う大人、子供、男、女。ただ年寄りはおどろくほどまばらだ。少年が召喚される前にいたそこそこ平和な国に比べると、皆が若く、殺気立ち、飢え、病んで、油断がならない。

2017-12-16 00:24:43
帽子男 @alkali_acid

たどりついたのはみみずののたくったような文字を縫い取った天幕。 もぐりの錬金術師が粗悪な原料から作った偽薬が、他を圧する異臭をさせている。 「新しく生きの良いのを連れてきたよ」 「ほう。健康そうだな。ちと小さいが、まあ逆にその方が死なんこともある」 「うまくやっとくれよ」

2017-12-16 00:26:18
帽子男 @alkali_acid

「ひひひ。まかしとけ、丈夫な便器にしてやるわい」 ふしくれだった指が少年の手首をつかむ。 「来い小僧。草原部族か?にしちゃ弓胼胝がないな。言葉が通じんか?どっかの奴隷の子だな…好都合だ。きつい薬にも耐えるだろ」 枯木のような四肢が怪力を発揮し、少年を煙を上げる囲炉裏に押しやる。

2017-12-16 00:28:58
帽子男 @alkali_acid

とっさに逃げようともがく少年を、天幕の外から、女とも男とも知れない例の大人が、短剣でお手玉をしながらじっと見つめている。 「さからえば殺される。まるで魚でも捌くように、確実に、正確に、余計な知恵を働かせたり、勇気を見せたりすれば、すぐ死ぬ」 それがはっきりとわかる。

2017-12-16 00:30:40
帽子男 @alkali_acid

煙を吸って朦朧とし、ぐったりとうつぶせた少年の服を、錬金術師くずれの奇怪な鋏刀が刻み そのまま肌に傷をつけて、上に薬をしみこませた湿布を張り付ける。 「ひひひ。ちと痒いがなあ。狂い死にしなきゃ、魔物相手にも立派に腰を振れる丈夫な便器になる」

2017-12-16 00:32:45
帽子男 @alkali_acid

少年の体に薬がなじむと、そこかしこに穴を空けて、まがい金の飾りをつけ、それぞれに涼やかな音をさせながら動き回ることになる。 逃げ出せばすぐにわかるし、客の気を引く役にも立つ。

2017-12-16 00:35:02
帽子男 @alkali_acid

心と体に手を加えられながら、気にかかるのはたった一つ。 「かぞく…いる…おねがい…」 「ああそうかい…居場所をいいな?面倒みてやろうじゃないか」 「…」 「あんたがまじめに働くって約束すれば、手を出しゃしないよ。あたしらにも信義があるからねえ」 信じられない。

2017-12-16 00:38:05
帽子男 @alkali_acid

「…」 ためらう。しかしほかに道がない。放っておけば妹はきっと食事も手に入らず死ぬ。その方がましか。 答えを言いよどむ時間はない。少年は一呼吸だけ狂うほど考えてから言う。 「おねがい…します」

2017-12-16 00:39:34
帽子男 @alkali_acid

しばらく経って 隠れ処にうずくまり、まずいパンのわずかな残りを何度も咬んでから飲み込んでいた妹のもとに孤児の群が押し寄せる。 「こいつだ」 「兄貴がいってたの」 「姐さんだろ」 「うるさいお前等」 親分らしき子供が一喝する。街で兄を殴った子だと妹は知らない。ただ怖いだけ。 「なに…」

2017-12-16 00:41:56
帽子男 @alkali_acid

「おいちび!俺達、地獄の猟犬団がきょうからお前の面倒をみてやる」 「炎の蠍団だぞ」 「このまえ変えたんだ。お前寝てたろ」 「うるさいってば!姐さんから頼まれたんだ。お前の兄貴がはたらくから、お前の面倒は俺達がみろって。分かるか?」 妹は茫然としてから返事をする 「わかんない」

2017-12-16 00:43:49
帽子男 @alkali_acid

孤児達はかまわず妹を連れてゆく。彼等の流儀でめんどうをみる。乞食の上前をはね、炊き出しの列をごまかし、街の外から迷い込む旅人からこそ泥し ほかの孤児達と出くわすと取っ組み合いのけんかをする。時々刃物が閃いて誰かがけがをするか、死ぬ。

2017-12-16 00:46:02
帽子男 @alkali_acid

「あんた達ってばかみたい」 妹の言葉はすぐ上達する。 「ばかって何がだよ」 「こんなことやってたって。みんな死んで終わりじゃない」 「うるせーなちび」 「そーだちび」 妹はやけっぱちに言い募る 「わた…僕だったらもっとうまくやる」 「なにをだよ」 「地獄の猟犬団をおおものにしてやる!」

2017-12-16 00:48:02
帽子男 @alkali_acid

「冒険者になればいい!迷宮にはいって宝物をいっぱいとってくる」 「なれるもんか」 「大人の仕事だぞ」 「田舎の百姓がやってきて死ぬんだ」 「迷宮から持って帰って来た宝物よりくれてやった人の肉のほうがおおいんだ」 「そんなの!あんたらのいう姐さんの受け売りでしょ!」

2017-12-16 00:49:54
帽子男 @alkali_acid

「僕!冒険者になってみせる!」 ひっこみがつかない妹は、表通りにある冒険者の酒場へ走ってゆく。よく武装した男女が吸い込まれていくので場所は知っていた。 途中で地回りが立ちふさがる。 「やめな。おめえは色町の連中の差配だろうが。あそこは縄張りが違う。ガキには分からんだろうが」

2017-12-16 00:53:18
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