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異世界小話~親の命令でいやいや冒険者になってダンジョン通いしていたら入口がくずれて帰れなくなった話~

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異世界小話 帽子男 異世界
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帽子男 @alkali_acid
「親の命令でいやいや冒険者になってダンジョン通いしてたら入口がくずれて帰れなくなった話」
帽子男 @alkali_acid
親が冒険者だと「冒険のひとつもできなくてどうする」みたいな理屈で迷宮にいかされることがある。
帽子男 @alkali_acid
いい親なら、自分の装備とかくれて、戦い方とか迷宮の歩き方とかも教えてくれるかもしれないし、親子で冒険とかもあるかもしれない。 でもクソ親はなんもしてくれない。なんも助けてくれないくせに「冒険ぐらいできるだろ」みたいなこと言って迷宮にいかせる。
帽子男 @alkali_acid
冒険者の子供なんかに生まれるもんじゃない。まじで。
帽子男 @alkali_acid
「まじで?そんなところでもたついてんのか?俺が若いころは余裕だったけどな」 みたいな盛った話をするかと思えば 「俺が若いころは最初の回復の泉まで七時間かけて歩いていったのに、今は十五分で休憩所があって軟弱」 みたいな苦労話もする
帽子男 @alkali_acid
冒険者の親なんて持つもんじゃないまじで。
帽子男 @alkali_acid
そもそも昔はわざわざ迷宮の最深部までおりなくても上層とかにもけっこう財宝があったとかそういう背景は全部無視して 自分の苦労話と成功話だけがんがん色つけてしゃべるから、本当につらい。あと新年とかで昔の冒険者仲間が集まって子供に一斉説教するやつもまじうざい。
帽子男 @alkali_acid
逆にいろいろ評判悪くて冒険者仲間からはぶられて飲んだくれて子供にしかイキれない孤独な親ってのもきつい。
帽子男 @alkali_acid
とにかく冒険者の親は持つべきじゃなく、冒険者の子供には生まれるべきではない。 これは冒険者家庭の子供なら多くが抱いた感情。
帽子男 @alkali_acid
「賢い狐団」というのがその冒険者たちの名前だったそうな。 父親は、剛零という安酒を飲んだくれながら、よく話をした。鋼鉄紋章までいき、中層までおりて財宝を一つ持ち帰ったのが自慢。 だが腕のあるやつがほかへ移籍し、残りの雑魚ではうまくゆかず、父親は魔物に足をかじりとられて引退。
帽子男 @alkali_acid
迷宮でとれる秘薬には、なくした足を生やすようなすごいものもあるらしいが、貧乏な雑魚冒険者に買えるはずもなかった。 その後どういういきさつで所帯を持ったのかは謎。息子が物心ついたときには、母親はいなかった。 「お前はよお。偉大な冒険者だった俺の息子だ。だから冒険者になれよ」
帽子男 @alkali_acid
父親は、剛零をあおりながら、まだやっと立って歩けるようになったばかりの息子に言い聞かせた。 ろくに世話もせず、飯は僧院の炊き出しに頼り、息子が椀にかゆをもらってくると、たまに分捕って食うほどだった。 路上の孤児と何が違うのかよく分からない。
帽子男 @alkali_acid
すばしっこく動けるようになると、さっそく迷宮にやられた。父親が青銅紋章を渡して 「こいつはお前の命よりずっと価値があるんだ。失くしたらただじゃすまねえからな」 そう言って一発頬を叩いてから、送り出した。
帽子男 @alkali_acid
迷宮の入り口になってる寺院の門には衛士がいて 「みなしごの来るとこじゃねえ」 とおどしたけど、青銅紋章を出すとけげんそうになり 「まあ知ったこっちゃない」 みたいなぶつくさを言いながら通してくれた。
帽子男 @alkali_acid
昔は冒険者になろうとする新入りを鍛える訓練所とかいうのがあったと、噂に聞いたことがある。 迷宮がもっと財宝であふれ、にぎわっていた時代。 何年か前にわずかのあいだ復活したが、伝説の「地獄の猟犬団」を送り出すと閉鎖してしまった。
帽子男 @alkali_acid
父親がよっぱらてそういう難しい話をぶつくさ言っていたが、少年には半分も分からなかった。 いずれにしても、家にいると片足のない男のあれこれと世話をせねばならず、暴力を振るわれ、罵倒を浴びせれ、女房がわりの慰みものになる。 だったら迷宮に行く方がましだ。やることもおおまかに教わった。
帽子男 @alkali_acid
迷宮の上層にはもう財宝はないが、薬草は生えている。摘んでもすぐに伸びてくるので、最近は毒を撒いて枯らさないと邪魔になるほど、だそうだ。 「毒代をふっかけてるのさ。北のノーキョーどもが。その毒だって迷宮からとってきたキノコを育ててるだけじゃねえか」
帽子男 @alkali_acid
虫だらけの寝台で、へとへとになってうつらうつらする息子に、父親がまた愚痴ったものだった。 せめて眠らせてほしいのに、あとがしつこいのだった。 思い出して身震いしてから、少年は薬草摘みにゆく。競争相手はいなかった。いやしくも冒険者がするにはあまりに稼ぎの少ない仕事だ。
帽子男 @alkali_acid
青銅紋章だって、魔物にでくわす危険を犯して迷宮にもぐるなら、もう少し大きな獲物を狙う。 だから、ある意味穴場ではあった。とはいえ少年は最初の冒険で、カミソリエイに追いかけ回され、背中を浅く切られて、傷が腫れ上がり ほとんど薬草をもたずに、かろうじて生きて帰った。
帽子男 @alkali_acid
なんの知識もない子供がひとりで行ってひとりで生きて帰ったこと自体、奇跡に近かったが、父親は怒り狂い、革の腰帯で折檻をした。 そのあと寝台で痛む尻をかかえて抗議する相手をひきずりこんでうさをはらすと、今度はちゃんとやれ、さもないともっとひどくすると脅した。
帽子男 @alkali_acid
逃げ出すことも考えたが、僧院の青ざめた侍童や、野良犬のような孤児は、少年を毛色の違うよそものとして忌み嫌っていたし、 どの群も入れず、ひとりでうろついていれば色町の人さらいに見つかり、おそろしい運命を迎えるのは、街のものなら誰でも知っていた。
帽子男 @alkali_acid
少なくとも迷宮にいるあいだは、父親はいない。カミソリエイはうまく隠れれば逃げられる。多分。 まだ背中の腫れも引かない二度目の迷宮もぐりでは、なんとか薬草を獲って帰れた。父親はそれをじろりと一瞥して 「薬種屋に売ってこい」と命じた。
帽子男 @alkali_acid
薬種屋の窓口は女性で、少年からするとものすごい大人に見えたが、父親に比べればとても若かった。 「おつかい?ここは買い取りの口だから、薬の小売りはむこうの店に」 「やく…そう…」 「あら…迷宮のものですね?」 「おれ、ぼ、ぼうけんしゃです」
帽子男 @alkali_acid
「…うん…質のいいのとわるいのがまざってますね…いいのだけ買い取ります」 見たこともないほどの金額をわたされる。銅貨が十枚以上。 「こんなに!?」 「質のいいのだけ同じぐらい持ってきてくれれば、この三倍は出ますよ」 「しつのいいの…って?」 「うーん…」
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