くずとかみさま

暗殺専用鶴丸国永を盗んだ女性の話。
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人権ゾンビ@1日1,000字で人権 @ikami68

霧と間違うような小雨の中で湿ったフードを深く被って羽織に付いた血を雨に溶かしている鶴丸国永の瞳を運悪く覗き込んでしまってその空虚さえも無い金色に射竦められるやつ。

2018-01-08 22:48:48
人権ゾンビ@1日1,000字で人権 @ikami68

昨日のこれ、近代で人形のような違法製造の鶴丸国永と出会って世話をする話かな。歴史修正の攻撃の手が伸びていない現代にほど近い時代の一般人の女性がある雨の日、近くの神社の竹林で鶴丸国永と出会う。風に吹かれて纏わりつく雨で羽織を赤と白の階調に染めながら鶴丸国永は立っていた。

2018-01-09 10:18:53
人権ゾンビ@1日1,000字で人権 @ikami68

顔はフードに隠れている。足元には細切れになった肉の塊、手には鍔まで赤い刀を持っていた。普通に見れば、まごうことなき惨殺現場。悲鳴を上げて、逃げてしかるべきだと彼女にも分かっていた。けれど目の前に立つ鶴丸国永があまりにも微動だにしないので、彼女もまた、動くに動けず留まっていた。

2018-01-09 10:27:33
人権ゾンビ@1日1,000字で人権 @ikami68

何かを待っているようには見えなかった。何かを考えているようにも見えなかった。抱いた印象は「道具」だ。そう、まるで使い終わった道具が、作業台の上に放って置かれているようだった。その時点で、無視してしまえば良かったのだろう。「道具」であるということは、持ち主が居るのが当然なのだから。

2018-01-09 10:34:01
人権ゾンビ@1日1,000字で人権 @ikami68

けれど、今更考えても愚かとしか言いようのないことに。彼女はソレを放っておけなかったのだ。使われたばかりの道具とはいえ、まだ、使われるかもしれない道具とはいえ、真っ白な道具が、輝いている筈の道具が、汚れているままなことが見過ごせなかったのだ。馬鹿だった。馬鹿でしかなかった。

2018-01-09 11:32:13
人権ゾンビ@1日1,000字で人権 @ikami68

彼女は殺人犯に対する恐れ、というよりも他者の持ち物に手を触れる後ろめたさ、そしてその場を見られるかもしれない疑心暗鬼によって恐る恐る、鶴丸国永に近づいた。そんな彼女が見えている筈の鶴丸国永はピクリとも動かずにそこに在った。じりじりと距離を詰めて、残り数歩。身長差で顔が見えた。

2018-01-09 11:40:18
人権ゾンビ@1日1,000字で人権 @ikami68

全体像から浮かぶイメージ通りの、美しい顔があった。湿気を含んで薄く光る白髪に、透けるような白い肌。薄紅色の唇。そして、白縁に囲まれた透明な、瞳。――透明、だった。色として例えるならば、金であった。薄い黄色に涙の膜が光を散らしてそれはそれは美しくやわらかな金に見せていた。

2018-01-09 11:44:18
人権ゾンビ@1日1,000字で人権 @ikami68

しかし彼女には透明にしか見えなかった。空っぽ、伽藍洞、というだけの闇も虚もそこには無い。遠くを見ているわけじゃない、その瞳は確かに彼女に焦点を合わせている筈なのに、それに付随する情動や思考の一切が感じられないせいで、視線は奥の奥まで透き通る様に突き抜けて景色の一つになっていた。

2018-01-09 13:30:59
人権ゾンビ@1日1,000字で人権 @ikami68

そこで初めて彼女は、怖い、と思った。気軽に触れようとした物の本当の価値を知ったような、そんな、自分が鶴丸国永に触れていいのかという恐れだった。伸ばそうとした手を、一度胸元に抱えて、彼女は視線を彷徨わせる。気分は最早盗人だ。誰かに見られていやしまいか。誰かがここに来やしまいか。

2018-01-09 13:38:18
人権ゾンビ@1日1,000字で人権 @ikami68

見回した竹林は奥行に合わせて闇色を濃くしていた。時折風に揺られて葉擦れが聞こえる。それ以外は、彼女が吐き出す白い息の音だけだった。彼女は意を決して、鶴丸国永に手を伸ばす。赤く染まった刀を持つ手とは逆の手を取って、そろり、そろり、と歩み始めた。手を取った瞬間から、金槌の槌の部分を

2018-01-09 13:47:14
人権ゾンビ@1日1,000字で人権 @ikami68

握ったような、間違った持ち方をしている感覚がしていたが、そんなことに構ってはいられなかった。ただただ誰にも見つからぬように。今まさにその懐で罪を犯しながらのくせ、潜めた息と共に彼女は神に祈っていた。鶴丸国永は手を引かれるまま彼女についてきた。刀も身なりもそのまま、雨を被りながら。

2018-01-09 13:50:50
人権ゾンビ@1日1,000字で人権 @ikami68

神社から家が近くてよかった。と、彼女は思っていた。恐れの中にちょっとだけ楽観と安心があった。大通りから神社の竹林を抜ける、その裏道こそが現状の何よりの原因であるのに、目先の光に意識が捕らわれていた。力の無い手を握って引きながら、彼女の頭の中では鶴丸国永を洗う算段を付け始めていた。

2018-01-09 13:59:04
人権ゾンビ@1日1,000字で人権 @ikami68

今思い返せばその時には既に、彼女の中では鶴丸国永は「物」だった。何故なら薄暗い夜道で人の気配に過剰に怯えていようが、鶴丸国永が叫び助けを求めることなど一切考えてはいなかったのだから。

2018-01-09 14:01:21
人権ゾンビ@1日1,000字で人権 @ikami68

っていう感じにお仕事終わりの鶴丸国永を自宅にお持ち帰りしちゃった女性の話。家に付いたら鶴丸を浴室に突っこんで頭から爪先まで綺麗に洗う。男性体だから勿論裸は人間のものだし付いてるものも付いてるけど恥ずかしさも気まずさも全く無く洗う。なんならそのあと自分もお風呂に入る。

2018-01-09 14:04:52
人権ゾンビ@1日1,000字で人権 @ikami68

白い着物は血の赤が雨で滲んでまだら模様を作っていた。落とせる気が全くしないまま、とりあえず洗剤を付けて手洗いしてみたら綺麗に落ちたので絞って脱水して室内に干すことにした。そんなことをしていたらもう真夜中だったので、大きめの服を着せた鶴丸国永をベッドに入れてその隣で眠る。

2018-01-09 14:08:07
人権ゾンビ@1日1,000字で人権 @ikami68

女性に鶴丸国永が男だという意識はない。人型をしている罪悪感からベッドの半分を貸したが生物とすらも思っていない。生物と思ってないから自分が食べない食事も出さなかった。そうしてなれないことをした疲れとだるさで溶け落ちるように眠りについた翌日、彼女の元に政府の役人がやって来るのだった。

2018-01-09 14:11:08
人権ゾンビ@1日1,000字で人権 @ikami68

という話を読みたい。刀剣世界の現世に近い近代で歴史修正主義者の予備軍を暗殺している鶴丸国永の、その時代でのメンテナンス要員にされてしまった審神者に成れるほどじゃないけど霊力持ちの一般女性の話。

2018-01-09 14:13:45
人権ゾンビ@1日1,000字で人権 @ikami68

鶴丸国永は政府のテストケースとして、無作為に抽出した審神者たちから供出された霊力を濾過して純粋なエネルギーにした霊力で顕現されている。そのため人格や感情、思考が殆ど無い。けれど今回彼女が家に連れ込み風呂や洗濯で汚れ(穢れ)を落とした、落とせてしまったことが手入れと見なされ彼女の霊力

2018-01-09 14:16:13
人権ゾンビ@1日1,000字で人権 @ikami68

が入り混じってしまった。その時点でテストケースとしては不合格。なので今後暗殺担当として使い捨てられることになっている。その上で、不可抗力のような事態だとはいえ実験を失敗に追いやった彼女はその補填としてこの鶴丸国永のメンテナンス要員に利用されることになった。という話。ください。

2018-01-09 14:18:39
人権ゾンビ@1日1,000字で人権 @ikami68

人間関係の構築がへたくそで空気読みまくってなあなあに生きてて権力には弱い少市民な女の人が鶴丸国永を物扱いしてる話がよーーーーーーみーーーーーーーたーーーーーーいーーーーーーーーー!!!!!ねぇ!!!????屑が神様を下に見てる話って最高じゃない!!!!!????????

2018-01-09 14:23:33