2018年1月10日

気象業務法は世界的にみて時代遅れになっていないか?―世界の新たな立法例と政策課題の簡単なまとめ

日本の気象業務法は、制定(1952年)当時は世界でも先進的な気象業務についての包括的な法律とされ、他国の立法の参考となったこともあります。しかし、アップデートを怠れば先頭に立ったままではいられないのは、技術でも法律でも同じです。 そこで、最近になって大規模な法整備を行った米中韓の事例や、気象業務に関する法制度に関連した政策研究に照らして、日本の気象業務法がまだ先進的だといえるのか否か、これからどうあるべきかを考えるための入門的な記事をまとめました。
5
気象業務法の解説 @LawS27165b

1月10日から、交通政策審議会気象分科会では「2030年の科学技術を見据えた気象業務のあり方について」の審議が始まります。この審議は、気象業務の基礎となる観測網、数値気象予測、予報作業システム、気象情報配信システム等の技術の開発や利用の方向性を中心としたものとなるようです。

2018-01-10 00:09:22
気象業務法の解説 @LawS27165b

国の気象業務の場合、技術の開発・設置・運用は、これらへの予算・人員の配分という国家の意思決定に従属します。その根拠となるのが、法律と、これに基づく下位法令です。

2018-01-10 00:09:22
気象業務法の解説 @LawS27165b

もし法律が社会的要請や技術のトレンドに乗り遅れたものであれば、その不備は毎年度の資源配分の誤りを通じて累積的に拡大し、いずれ致命的な技術の遅れをもたらします。

2018-01-10 00:09:22
気象業務法の解説 @LawS27165b

民間の気象業務に対する国の介入(規制又は振興)も、法律を根拠とします。その適用範囲や介入の方法・強さの設定が社会経済の実態に合っていなければ、民間の自立した発展を阻害し、多くの経済的な機会が失われます。

2018-01-10 00:09:23
気象業務法の解説 @LawS27165b

また、一般論として、例えば、実務において事業規制の運用が法律の文言より緩くなっていても、こうしたものは、担当者の異動等の民主的統制が及ばない予測困難な事情で覆ったり、適用の有無や程度が個々の事業者と行政機関との近しさに依存しがちで特に新規参入者に不利だったりします。

2018-01-10 00:09:23
気象業務法の解説 @LawS27165b

法制度の適時適切な更新は、こうした不安定さや不公平のない健全な市場を保証します。 そこで、気象分科会で、あるいはその後の気象庁でなされるであろう法制度の議論を国民として監視するための基礎知識として、米中韓3か国の新たな法整備の例と、国際的な観点からの報告書2件をご紹介します。

2018-01-10 00:09:23
気象業務法の解説 @LawS27165b

韓国で最初(1961年)に制定された「気象業務法」は、日本の気象業務法(1952年)の丸写しに近いものでした。しかし、予報精度の向上、気象操作技術の実用化、民間気象事業の育成といった課題に対応した体制作りや行政サービスの根拠としては不足が目立つようになり、独自の法制度が必要になりました。

2018-01-10 00:09:24
気象業務法の解説 @LawS27165b

2005年に「気象業務法」を全面的に見直した「気象法」と、新たな「気象観測標準化法」が制定されました。後者は、公的機関が行う気象観測の標準化とその成果の統合的な利用のために政府全体が協働する仕組を定めており、日本の気象業務法の第2章後半と第5章にはない施策と観点を含むものです。

2018-01-10 00:09:24
気象業務法の解説 @LawS27165b

2009年に制定された「気象産業振興法」は、「気象法」からさらに民間気象業務の規制及び振興に関する部分を独立させて拡充したものです。これもまた、日本の気象業務法第3章後半から第3章の3までよりも広範かつ詳細なものとなっています。

2018-01-10 00:09:24
気象業務法の解説 @LawS27165b

ただし、国による振興策が充実しているということは、民間事業が未発達で自律的性も低いということでもあり、必ずしも国全体としての先進性を意味しません。また、オープンデータ政策のほうが振興に有効と思われるのに登録制度や資格制度を設定された業種がある等、洗練されていない部分もみられます。

2018-01-10 00:09:25
気象業務法の解説 @LawS27165b

その後、これら3つの法律は、国の科学技術振興政策に対応した官民協力・助成制度の整備、東日本大震災に刺激された地震・火山・津波対策の強化、気象産業の海外進出に対する支援等のための改正を経て、現在に至っています。

2018-01-10 00:09:25
気象業務法の解説 @LawS27165b

「気象法」で注目されるのは、次の事項です。 ・他省庁をもカバーする基本計画の策定とその実施(第2章) ・国、自治体等も参加する気象情報システムの整備運用(第4章) ・気象操作の禁止(第18条) ・気候監視、気候変動予測等に関する業務の明文化(第6章) ・人工地震に関する業務(第28条)

2018-01-10 00:09:25
気象業務法の解説 @LawS27165b

研究開発に対する助成及び国際協力についての詳細な規定(第9章) ・南北朝鮮間の協力の特記(第33条第2項) ・他省庁・自治体の職員、民間事業者等も対象とする教育訓練の実施(第35条)

2018-01-10 00:09:26
気象業務法の解説 @LawS27165b

「気象観測標準化法」で注目されるのは、次の事項です。 ・適用対象となる観測の実施主体の範囲(第3条)…民間を含まない ・観測環境の標準化・保全(第2章、第5章) ・政府一体の観測網の確立と観測成果の共同利用(第3章) ・気象庁による他省庁の気象観測への支援(第9条、第17条、第19条)

2018-01-10 00:09:26
気象業務法の解説 @LawS27165b

気象観測標準化委員会の設置とその権限(第6章) 「気象産業振興法」で注目されるのは、次の事項です。 ・規制及び振興の対象となる業務の範囲(第2条) ・基本計画の作成及び実施(第2章) ・研究開発とその成果の商業化に対する支援(第9条・第10条)

2018-01-10 00:09:26
気象業務法の解説 @LawS27165b

気象産業の国際化・事業者の海外進出に対する支援(第11条・第11条の2) ・気象情報の情報源のクレジット義務付け(第14条) ・民間に対する気象資料提供の義務とcost of disseminationに基づく課金の明確化(第15条)…気象資料についてのオープンデータ政策は法律事項

2018-01-10 00:09:27
気象業務法の解説 @LawS27165b

・気象鑑定士資格制度(第6章) ・気象予想士及び気象鑑定士の身分犯及び罰則(第26条)

2018-01-10 00:09:27
気象業務法の解説 @LawS27165b

中国では、全国人民代表大会で制定される法律を最上位とし、これに基づく下位法令として、国務院が定める条例と各省庁・部局が定める弁法があります。ただし、中国では、条例や弁法でも地方政府に対する命令や人民に対する罰則を定めることができたり、

2018-01-10 00:09:27
気象業務法の解説 @LawS27165b

上位の機関が下位の機関に制定と運用を委任してきた法令の実績を踏まえて修正したものを上位法令として制定し直すことがあったりします。 中国の気象業務に関する法制度も、当初は欧米や日本の相当する法令を参考にしていました。

2018-01-10 00:09:28
気象業務法の解説 @LawS27165b

しかし、経済発展に伴う災害発生傾向の変化、観測所の設置と開発の両立、国際協力と国家体制の維持の両立、気象操作の事業化等の課題に対応した独自の法制度が必要になりました。そこで、1999年に従来の条例を法律に格上げするとともに全面的に見直した「中華人民共和国気象法」が制定されました。

2018-01-10 00:09:28
気象業務法の解説 @LawS27165b

これに付属する条例や弁法も順次整備されて、現在に至っています。特に「気象災害防御条例」は、日本では災害対策基本法や水防法に属するような内容を含むものとなっています。 「中華人民共和国気象法」で注目されるのは、次の事項です。 ・気象観測環境の維持における開発計画との調整(第2章)

2018-01-10 00:09:28
気象業務法の解説 @LawS27165b

気象施設の重複整備の回避(第9条第2項) ・気象観測環境の国による積極的な保護(第19条等) ・気象観測施設に対する電波干渉の禁止(第20条第1項第二号) ・気象操作の国家による管理(第30条) ・気候に関する業務の明文化(第6章)

2018-01-10 00:09:29
気象業務法の解説 @LawS27165b

「外国に関わる気象探測及び資料管理に関する弁法」で注目されるのは、次の事項です。 ・国内機関との協力関係がない外国人による気象観測の禁止(第2条第2項) ・国家の安全及び国家の秘密の保持(第3条等) ・外国人による気象観測施設の設立の管理(第2章)

2018-01-10 00:09:29
残りを読む(36)

コメント

気象業務法の解説 @LawS27165b 2018年2月22日
交通政策審議会第25回気象分科会の開催にあわせて「気象業務法は世界的にみて時代遅れになっていないか?」を更新しました。
0