【広辞苑第7版】辞書編纂者・飯間浩明さん「新加項目ばかりが注目されますが、既存項目の手入れ状況も興味深い」

まとめました。
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飯間浩明 @IIMA_Hiroaki

『広辞苑』第7版を購入しました。記念写真です。予約特典の三浦しをん『広辞苑をつくるひと』もゲット。簡単な小冊子かと思ったら、岩波文庫ふうの造りで150ページもある。これは貴重ですよ。『大辞林』なども、次の版では、辞書好き大興奮の予約特典をつけてはどうでしょうか。 pic.twitter.com/zI0ZMydjR8

2018-01-12 18:58:04
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飯間浩明 @IIMA_Hiroaki

1967年10月21日、香川県高松市生まれ。国語辞典編纂者(出版社社員ではありません)。『三省堂国語辞典』編集委員。著書『日本語はこわくない』PHP、『日本語をもっとつかまえろ!』毎日新聞出版、『知っておくと役立つ 街の変な日本語』朝日新書、『ことばハンター』ポプラ社 他。『気持ちを表すことばの辞典』ナツメ社 も監修。

asahi-net.or.jp/~QM4H-IIM/

飯間浩明 @IIMA_Hiroaki

一口に辞書の改訂版と言っても、新語が多少増えただけで、本質的に旧版と変わらない辞書もあります。一方、既存の項目を含めてガンガン手入れしてくる辞書もあります。私にとって、後者のような辞書は怖い。『広辞苑』は後者に当たります。だから、第7版を読むのは怖いし、楽しみでもあります。

2018-01-12 18:58:09
飯間浩明 @IIMA_Hiroaki

『広辞苑』は「新加項目」ばかりが注目されますが、私としては、既存項目の手入れ状況が興味深いです。たとえば「パソコン通信」では〈インターネットの普及により廃れた〉との説明を追加。「ニューミュージック」では〈欧米のポピュラー音楽の影響下に成立〉を削除。加除の理由を考えるのも楽しい。

2018-01-12 18:58:16
飯間浩明 @IIMA_Hiroaki

『広辞苑』旧版では「マゾヒスト」の項目に〈嗜虐的な性格の人〉と書いてありました。それはサディストやろ、と思っていたら、第7版では〈被虐趣味の性格の人〉と直っていました。不適切な説明にはどんどん朱が入っている模様です。

2018-01-12 18:58:22
飯間浩明 @IIMA_Hiroaki

『広辞苑』の「爆笑」の項目は、旧版〈大勢が大声でどっと笑うこと〉→第7版〈はじけるように大声で笑うこと〉と手入れされました。「大勢が」をやめたのは、ことばの意味が変化したからではありません。本来、笑う人数は何人でもよかったという歴史的事実を踏まえたものと見られます。

2018-01-12 18:58:29
飯間浩明 @IIMA_Hiroaki

『広辞苑』では第5版から「デジタルカメラ」が載り、〈静止画像を電子的に記録するビデオ‐カメラ〉と説明されています(第7版も同じ)。なるほどビデオも撮れるけど、「ビデオカメラ」の項には〈動画2を撮影するためのカメラ〉とあるので、形容矛盾という印象。説明に一考あってもいいのでは。

2018-01-12 18:58:37
飯間浩明 @IIMA_Hiroaki

『広辞苑』では、旧版から「植えぐよし」という農業用語の見出しが「植ゑぐよし」となっていますが、なぜ「ゑ」なのか分かりません。第7版も同じ。古い語だから旧仮名遣い、というのでもなさそうです。「万葉集」にある「ゑらゑら」(笑う様子)も『広辞苑』では「えらえら」なのです。

2018-01-12 18:58:45
飯間浩明 @IIMA_Hiroaki

『広辞苑』旧版では、同じ沖縄語でも「かりゆし」「ちゅらさん」などはひらがな、「シーサー」「テビチ」などはカタカナでした。習慣的な表記を重んじたとも言えますが、書き分けの規準が不明瞭でした。今回、「カリユシ」「チュラサン」を含め、カタカナで統一することになったようです。

2018-01-12 18:58:52
飯間浩明 @IIMA_Hiroaki

「お(居)る」は、『広辞苑』第4版まで、他人に蔑視の気持ちで使うと強調されていた。『広辞苑』を根拠に「『おられますか』は失礼」と書く本も。とはいえ、「おる」の用法はそう単純じゃない。第5版で「先生はそこにおられますか」の例文が入った。今回、西日本で普通に使うことも記されました。

2018-01-12 18:59:02
飯間浩明 @IIMA_Hiroaki

「手話」は、『広辞苑』旧版で〈聾者によって用いられる……〉とあった。今回の第7版では〈主に聾者によって用いられる……〉と改められました。ほとんど変わらないようですが、健常者が聾者との会話に使う言語でもあるからですね。多様な立場の人に配慮した記述になったと思います。

2018-01-12 18:59:10
飯間浩明 @IIMA_Hiroaki

「辞書の改訂」イコール「新語の追加」と考え、「自分には新語は必要ない、古きよき日本語が分かればいい」と、旧版の辞書をずっと使う人もいます。旧版も貴重ですが、新版では既存項目も含め説明が改善されています(ちゃんとした辞書ならば)。つまりは「ぜひ新版を買いましょう」という結論です。

2018-01-12 18:59:21

みんなの反応

いまいずみひとし @hitoshi_anx

広辞苑第7版を購入したけど飯間さんのツイート見てたら第6版も欲しくなるな…

2018-01-12 23:00:44
ゆか坊(Yuka Ikuro) @yuka_llcc

爆笑は大勢じゃなくてもいいのか?!一人でもいいのか?! >RT

2018-01-13 00:18:28
ひらたい @hiratai

なんとなく避けてた表現の「爆笑」が使いやすくなった。よかった。

2018-01-13 02:12:36
もす🎄 @mosukoke

沖縄方言をカタカナで表記するのは何となく外来語として捉えてるようなするな。他の方言をカタカナで書くことってあるかな?

2018-01-12 19:20:54
さめ @same_whitetip

かりゆしをカタカナ書きするの見たことないけどそれは正しいと言えるんだろうか

2018-01-12 19:45:21
スミ @nonkichi2013

ほー… お(居)るの歴史

2018-01-12 21:26:57
❄️⛸ •̥̑.̮•̥̑✧keiko @twi_tkmk

それでも、おられますか?と聞かれるのは違和感あるー RT

2018-01-12 22:20:23
風地@毎日音楽の話を(も)しています @huuchi

蔑視の気持ちについては知らなかった!>RT ただ存在するという意味で「居る」と使っていました。

2018-01-12 19:12:48
Cassie @dennou_cassie

「居る」に蔑視が含まれるとは知らなかった!「いらっしゃる」の意味で「おられる」って使うし!

2018-01-12 19:41:52
椿 @fuwafuwa_tumugi

今まで広辞苑で「おる」が蔑視の意味合いが強いとされていたという事実に驚愕。 >RT

2018-01-12 19:42:23
しろへび @Night_Tea_Party

おる、うーん普通に使うな。というか、口語だと「いる」は発音し辛いのじゃ。普通で「おる」「おらん」、丁寧になると「おって」「おってんない」です当方西日本。普段の会話で「い」を使うのは、ほんまによそ行きの標準語を使う時だけかもしれん。その分「おる」は方言、って感覚も強い。

2018-01-12 21:07:40
井口耕二 a.k.a. Buckeye @BuckeyeTechDoc

>RT え、西日本の方言だったんかい。こういう標準語にも同じ形があってびみょーに意味が違う言葉って方言であることに気づかないんだよな。

2018-01-12 19:52:16