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異世界小話~異世界でブラック宗教の僧侶をやってるがもうダメかもしれない~

転勤ばっかさせられるのは将来の幹部として期待されてるからなんだよ~多分な!潰れても誰も面倒みねえけど!
剛零 異世界小話 幻想通貨
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帽子男 @alkali_acid
異世界でブラック宗教の僧侶をやってるがもうダメかもしれない
帽子男 @alkali_acid
これは異世界でブラック宗教の僧侶をやっている男性のお話です。男性は、厳しい全国統一試験に合格して僧侶になり、名前は伏せますが某大手宗派の僧院に配属されました。 見習い時代は古文書の解読で優秀な成績だったので、ここでは古読(仮名)とさせていただきます。
帽子男 @alkali_acid
古読さんは研究職である学僧を希望していたのですが、そちらは割と年齢が高い先輩の人が多く、しばらくは各地の僧院に出向しながら現場で信徒の対応にあたる仕事内容になりました。
帽子男 @alkali_acid
古読さんは決して現場仕事がいやでたまらないという訳ではなかったのですが、やはり愛する古文書から遠ざかったのは悲しかったのと、あと出向先の僧院の環境がひどすぎました。 特に北では信徒からいわれのない誹謗中傷や暴力さえ受けました。
帽子男 @alkali_acid
あげく 「そもそも女神とか意味分からない。うちらは大地を信じてるから」 など僧院の教義内容にまで踏み込んだ文句を言ってくる人もおり、 さらには農協というよく分からない組織がごつい武器を持って、僧院の重要な収入源である荘園の事実上の没収などを要求してくることまでありました。
帽子男 @alkali_acid
古読さんはほとんど休みもなく、本来の業務外の交渉などに駆り出され、若干精神を病むまでにいたりました。 さらに問題解決の努力をする過程で、僧院が経営する荘園で、先輩僧侶が地元の子供にいやらしいことをしたり、女を囲ったり、規定より多めにお金をとったりしていることも明らかになり
帽子男 @alkali_acid
上に報告したところ、今度は東に飛ばされました。東の帝国というとても大きな国があり、立派な官僚機構があるのですが偉い人は皆、錬金術師とかいう意味不明な疑似科学を崇めており その国境の街への赴任でしたが、しょっちゅう僧院の学僧と学術論争をしかけてきました。それは割と楽しかったのですが
帽子男 @alkali_acid
錬金術師は論争で相手で負けると、日常の暮らしの中ですごい嫌がらせをしてくるという最悪の性格でした。 古読さんは、帝国代官という大変に高い立場の人を公開討論の場でやんわり論破したところ、その日から帝国兵が僧院の祈りの場に乱入したり、税を上げてきたり しかも上はまた守ってくれず。
帽子男 @alkali_acid
また飛ばされました。南の多島海域です。わりと僧院の勢力が強い土地で、汚職も少な目だったのでほっとしたのですが。幻想通貨という意味の分からないものが流行していました。これは謎の迷宮からとれた財宝の一種でしたが、真珠のような光沢のある長方形の紙で、お金として扱われていました。
帽子男 @alkali_acid
この幻想通貨が、「手にもって頭に浮かぶ数字を特定の数式で解くとなぜか増える」という不可解なしろもので、もともと算数が好きな南の僧院はみんなでこの幻想通貨を増やすのに夢中になっていました。 「これは本来の教えとなんも関係ないし、やめた方がいいのでは?」と忠告すると
帽子男 @alkali_acid
「そういうのはどうでもいい。とにかく素因数分解をするんだ」 と幻想通貨を手にねじこまれ 「幻想通貨は世界の未来。宇宙の真理。おおいなる女神のみもとへ通じる扉を開く」 など完全に頭のおかしい主張をされ心が折れました。
帽子男 @alkali_acid
なんとか通貨にはまってる人は本当にやべえな。いやしくも僧侶がとち狂ってんじゃねえよ。古読さんはそう思いましたが、もう余計なことを言わないだけの知恵はついておりました。 なお、増やした幻想通貨、地元の明らかにスジモノっぽい人達が回収していきました。
帽子男 @alkali_acid
あとで聞いたら多島海域に跋扈する海賊の元締が、幻想通貨を仕切っているそうです。海賊は昔はニセガネとかを流すせこい連中だったのですが、元締が交代して幻想通貨を扱うようになってからめちゃくちゃ強くなり、今では貿易組合という地元の支配者とほぼ対等の関係になっています。
帽子男 @alkali_acid
その海賊と僧院が癒着している。もう最悪の状況でしたが、ただ僧院全体の経営としては北方で荘園を失った分を、南方の商業で補っているというかたちでしたので あまりきつくも言えないのでした。
帽子男 @alkali_acid
古読さんはもう還俗しようかと思いました。ただほかに特技がある訳ではなく、勉強できるからという理由で鍛冶職人の家から僧職に進んだので 辞めても潰しが聞きません。また何くれとなく支援してくれた年の離れた兄などは、一族から僧侶が出たのをほこりに思っている最近珍しい篤信家でもあります。
帽子男 @alkali_acid
ようやく地方まわりが終わって戻ってくると、いきなり学僧の多い僧院の院主にされました。異例の若さでの昇進です。 苦労が報われたと、兄夫婦は喜んでくれましたが、内実は違いました。前の院主が魔物に食われて死んだのです。
帽子男 @alkali_acid
最近、僧院の本拠がある街では地下にある迷宮から魔物が漏洩(ろうえい)するようになってました。これは街を統治する参事会は公には認めてませんが、 もう魔物漏れは一部の人々の間では暗黙の事実。前の院主は色町といういかがわしい奉仕をしてくれるところから帰る途上、魔物に襲われ死亡しました。
帽子男 @alkali_acid
緊急事態なので、古読さんは、正式に新しい院主が決まるまでの代役として任命されたに過ぎないのです。 近所に魔物が出るような地域の院主はしんどいもの。ただ唯一の救いは院内に沢山古文書や研究の記録があることです。 忙しいさなかにも学僧たちのあいだに入って調べ物の話を聞くと幸せでした。
帽子男 @alkali_acid
「がんばれる…がんばろ」 古読さんは、治安を守る衛士隊、おまわりさんとも協力して、信徒の方の安全な訪院を守ったり、 弔いやお祭りの準備をしたり、寄付を集めたり、孤児や宿無しに炊き出しをしたり、施療所の医僧の「待遇悪すぎてやってられない」といった苦情に耳を傾けたりしていました。
帽子男 @alkali_acid
でも頑張れば頑張るほど、迷惑は無限に古読さんの肩にのしかかってきます。 「市外区から、むかし、おたくの僧院の収蔵品だったとおぼしき釜が見つかったので、確認をお願いできますか?」 おまわりさん、正式には衛士隊の人が連絡してきます。魔物対策で協力しているだけに断れません。
帽子男 @alkali_acid
市外区というのは街の本来の城壁の外に広がっためっちゃくちゃな区画で住んでいる人もばらばら。 僧院も枝院を設けて活動はしていますが、なぜか迷宮の魔物の親玉である龍をあがめる過激な狂信者が襲ってきたりしてとにかく恐ろしいのです。 でも古読さんは 「わかりました…」 と笑顔で応じます。
帽子男 @alkali_acid
この古読さんが厄介な頼みを断れないところが、ただでさえきつい仕事をさらにきつくしているのですが、でも誰かがやらねばならないと思うと仕方ありません。 それに頼んできた、おまわりさんのお偉いさんも同じような苦労人です。しんどうもの同士助け合わねばという思いもあります。
帽子男 @alkali_acid
ちなみに、おまわりさんのお偉いさん、ちまたでは顔の火傷から「火傷の隊長」と呼ばれているので、ここでは火傷さんと呼びます。 火傷さんは、火傷があってもとても怜悧で鋭い美貌をしているのですが本人はあまり気にしてない。 言葉遣いから還俗した元学僧と分かります。やめても苦労するのかと。
帽子男 @alkali_acid
古読さんはつらくなりますが、でも黙っています。一緒に馬車に乗ると、お酒のにおいのするおじさんが先にいて、だらしない笑みを浮かべています。 「よ、これまた坊さんにしとくにはもったいない色男で」 いきなり不快なからみをしてきます。 「こちらは?」 「牢屋に連れていく予定の男です」
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