りゅうおうのおしごと!は竜王たる主人公の視点から将棋界全体を俯瞰して描いた稀有な作品である

7巻があまりにも最高すぎたので衝動的に書きました。
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MarineGuards @ryu_halfspin

#りゅうおうのおしごと!、7巻読了。いやはや凄まじい。もはやロリ萌えをどうこう言っている場合ではない。作品の持つ熱量を受け止めるのが大変だ。 ただここにきてようやく、白鳥士郎という作家がこの作品を通して何を書きたかったのか、理解できた気がする。

2018-01-18 00:25:32
MarineGuards @ryu_halfspin

白鳥が書きたかったのは、天才ロリが将棋で活躍する話でも、若くして将棋の頂点に立った少年の成長物語でもない。彼はこの作品で将棋界そのものを、将棋を題材とした既存の諸作品にはないスケールで描きたかったのだ。

2018-01-18 00:25:56
MarineGuards @ryu_halfspin

「将棋界」を描くことは、単に将棋を描くよりも場合によっては困難かもしれない。過去の作品すべてを把握しているわけではないが、既存の作品は将棋界の一部に焦点を当て、それ以外は切り捨てることを選んでいるように思う。

2018-01-18 00:26:12
MarineGuards @ryu_halfspin

例えば3月のライオンでは女流棋士がほとんど描写されていないが、もちろんこれは3月のライオンの欠点ではない。とにかく風呂敷を広げればいいというものでないのは当然のことだ。ただし白鳥はこの作品を書くにあたり違うアプローチを取ったのだろう。

2018-01-18 00:26:31
MarineGuards @ryu_halfspin

白鳥は将棋界に関わる事象すべてを、可能な限り取り入れることを選んだ。そしてそれらを、各巻ごとの主題として個別に扱う構成とした。すなわち1巻では新鋭棋士を、2巻ではアマチュア棋界を、3巻では研修会員を、4巻では女流棋士を、5巻ではタイトル保持者を、6巻では奨励会員を描いた。

2018-01-18 00:26:53
MarineGuards @ryu_halfspin

そして7巻ではベテラン棋士の苦悩を描いた。これらに加えてコンピュータ将棋、将棋におけるジェンダー、師弟関係といった将棋特有の要素を縦横無尽に組み合わせ、そのすべてを将棋界トップの竜王たる主人公の視点から俯瞰する作品、それが「りゅうおうのおしごと!」だ。

2018-01-18 00:27:08
MarineGuards @ryu_halfspin

この巧みな構成は、最初から予定していなければできることではないだろう。聞くところによると本作品は当初売れ行きが思わしくなく、5巻で終了する予定だったという。そうならなかったことを心から喜びたい。

2018-01-18 00:27:22
MarineGuards @ryu_halfspin

ではこの幸運な作品を誰に勧めるべきだろうか。空前の将棋ブームと呼ばれる昨今、やはり今まで将棋に触れる機会のなかった人に是非お勧めしたい。もちろんこの作品を何度読んでも将棋のルールは分からないだろう。ルールを知りたければ書店にたくさんある入門書を読むべきだ。

2018-01-18 00:27:34
MarineGuards @ryu_halfspin

しかしそれらの入門書に、「将棋界」そのものを何も知らない人のために描き出した本はまずないだろう。将棋のルールを覚えるのと、将棋界に生きる老若男女の有り様を、彼らの苦闘、挫折、矜持、本性を知るのはまったく別のことだ。

2018-01-18 00:28:00
MarineGuards @ryu_halfspin

白鳥はそれを読者に伝えたいと思っているはずだ。この作品を書き始めた時以上に今、そう思っているはずだ。5巻にはこうある。「将棋界は今、伝説の中にある。」これは現実の将棋界にも当てはまる。白鳥の描く伝説を受け止めた読者には、現実世界の伝説がさらに輝きを増して見えるだろう。

2018-01-18 00:28:19