- zeroyenlecture
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その昔、私は「意識の高い高校生」だった。いまでも「意識が高い学生」だと言われることがあるけれども、その当時は意識だけが高い高校生だった。
2011-04-02 22:26:32「意識の高い高校生」の多くがそうであるように、私もコンテストに出て賞を取り、活動をして新聞に取り上げられては、そのことを喜んでいた。そうした自分に違和感を感じるようになったのは、あるコンテストで次席をとったときのことだった。
2011-04-02 22:28:09なるほど、そのコンテストは、確かにすばらしいコンテストだった。主催者側はね。でも賞をとった側がどうも。彼らはどこのコンテストにもいる「常連」だった。お母様がおそばに控えていて、なるほどこれは苦手なタイプだ。
2011-04-02 22:29:11彼らは例外なく、書きたいことを書いて賞をとったというよりは、賞をとるためにものを書き、人にほめられるために活動をし、AO入試で勝つために動き回っていた。
2011-04-02 22:30:21彼らはそういう教育を受けていた。某W塾なり、名門の学校における落ちこぼれへのささやき「AO入試だったら楽に合格できるわよ」など、それを手助けする環境はとても多くあった。名門の看板を背負い、それなりの実績を残していれば、あの入試に合格することはさほど難しいことではないのだから。
2011-04-02 22:31:59なるほど、それなら私にも経験がある。面接のとき、忘れもしない、ある面接官から「あなたどこでコーチングうけたの?」と嘲笑された。当時の私にはコーチングの意味がわからなかった。
2011-04-02 22:38:23今にして思えば、その女教授の一言が私の人生を決めたと思う。結局二次試験の面接には落ちて、二ヶ月後の一般入試で私は合格した。田舎のさえない学生だった私が、その後、無料の予備校を作りたいとおもい続けたのは、ひとえにあのときの屈辱が忘れられなかったからだ。
2011-04-02 22:40:35バカにされたのだと思っていた。その後の二ヶ月で私はリンガメタリカを暗唱できるまでやり、えいひんを丸暗記した。これで学年でびりから七番目だったら成績が、英語に関してだけは学年で二十五位になった。東北地方ではトップの公立学校だった。そして、私は慶應SFCに合格した。
2011-04-02 22:42:00入学当時、素人童貞であった私は、先輩に「お前、童貞だろ?」とからかわれつつ、この性格なので仲間も大量に離れたりしつつ、しかし、その思いだけはいつだって忘れない童貞の執念深さ、どうにか春の講習をUstで配信するまでにこぎ着けた。
2011-04-02 22:43:49多分AO入試に合格した人よりも、私はあのときの初志を貫徹しつづけているんじゃないかと思う。人生なんてこんなもので、だから失敗してもなんてことない。あの時の失敗は私に必要なことだったと今でも思っている。あの時の失敗がなければ、いま彼女と同棲しながら塾を経営している自分はいない。
2011-04-02 22:44:55意識が高い高校生だったら彼らの末路をこの大学でたくさん見た。ずば抜けて優秀なAO入試の入学生はずばぬけて優秀なまま日銀に行ったり起業したりしたが、そうではない人もたくさんいた。慶應SFCは意識の高い高校生のあこがれのようで、意識が高い彼らともたくさんの話をした。本当にたくさんの話
2011-04-02 22:47:34意識の高さは確かにはたから見ていて「イタい」ものがある。ただ一方で、その意識の高さが社会にとってより有益な方向に働けば、彼らの存在は大きな変革をもたらす。
2011-04-02 22:51:24正直言って、いまの彼らの活動が、社会的意義をもっているもので、莫大な収益を上げることのできるものとは思えないことも多い。残念ながら。ただ彼らだって学ぶ。動いている分だけ学ぶ。最終的には、そうした七転八倒の一勝九敗が世界を変えていくんじゃないかと思えるようになった。
2011-04-02 22:52:41いまの意識が高い学生は、天才というよりはむしろ、成功したロールモデルを追って楽に慶應に入りたい人が多いような気もするのたけれど、天才というのはいつの時代も最初から認められるものではないのだから、そこには目をつむって、一人でも天才がSFCを目指してくれればと在校生としては思う。
2011-04-02 22:54:21そもそも私は、穴掘って埋める工事で日本の景気を良くしますというAO入試受験者がいれば、それを全力で止めるだけの見識はあるけれど、生物学のこととかはようわからん。そんな私に言えることは一つしかない。
2011-04-02 22:55:13わたしが両手をひろげても、 お空はちっともとべないが、 とべる小鳥はわたしのように、 地面(じべた)をはやくは走れない。 わたしがからだをゆすっても、 きれいな音はでないけど、 あの鳴るすずはわたしのように たくさんのうたは知らないよ。
2011-04-02 22:55:54