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これまでに系統樹マンダラ制作のクラウドファンディング、現在40名のサポーターの方々から合計342,200円のご支援をいただいております。どうもありがとうございます。academist-cf.com/projects/?id=57 pic.twitter.com/4lARb9poar
2018-01-18 14:22:10

系統樹マンダラ制作の目的はこれまでに知られている代表的なカメ類、たとえばアルケロンやアノマロケリスなど約50種類を系統樹に表現していくことです。こうすることで現生種もふくめた多様なカメ類の歴史的なつながりを一目で示せるようになります。 pic.twitter.com/FwCIZmZIlo
2018-01-18 14:29:16



カメ類の起源はNatureやScienceなどの有名雑誌に掲載されるほど重要なテーマです。特にEunotosaurusというアフリカの古生代ペルム紀(約2億6千万年前)の小型爬虫類がはたしてカメの仲間かどうかが焦点になっています。画像はロンドンの自然史博物館に保管されているEunotosaurusの模式標本です。 pic.twitter.com/1PhenVi1is
2018-01-16 10:45:29

前の写真はEunotosaurusの骨格(ほとんど肋骨!)を岩から取り出した状態で並べたものです。2枚目の画像は岩に埋まった元の骨格の石膏模型です。これを見ると肋骨は良く発達しているが、お腹には何もないことがよくわかります。実はこれがEunotosaurusをカメと認められるかどうか大きな問題なのです。 pic.twitter.com/UcKpOqeoCy
2018-01-16 10:50:41

これは私の昨年の論文で使用した図でEunotosaurusと三畳紀の代表的なカメ類を並べて背中から並べた図です。三畳紀のカメに共通しているのはお腹にもちゃんと甲羅があるということ。しかしEunotosaurusのお腹には何もありません。 pic.twitter.com/eFGw6Q1U9F
2018-01-16 11:36:23

理化学研究所の倉谷滋さんらの発生学的研究によるとカメの甲羅はお腹と背中が連動して形成されたもので三畳紀のカメ類はこの仮説を支持していますが、お腹に何もないEunotosaurusはこの理論に合わないということになります。私もロンドンでEunotosaurusを実際に見て実に奇妙な動物だと思っています。
2018-01-16 11:41:16
Eunotosaurusの肋骨は全体に著しく分厚いだけでなく、下のほうでは前後に重なり合うという三畳紀のカメ類には見られない不思議な特徴を持っています。Eunotosaurusはお腹の甲羅を発達させることなく背中の肋骨のみで防御を進化させた非常に特殊な生き物であったというのが私の結論です。
2018-01-16 11:45:46
それではEunotosaurusは何に近い動物なのでしょうか?Eunotosaurusの完全な頭骨が見つかっているのですが、それを見ると外鼻孔(鼻の穴)や松果体孔(pineal foramen)が巨大であるなど、古生代に栄えた哺乳類型爬虫類の一種であるカセア科によく似ており、この仲間であると考えてよさそうです。
2018-01-16 11:52:53
カメの起源が古生代にまで遡ってしまうと別の問題も出てきます。遺伝子解析や三畳紀のカメ類(特にPappochelysの頭骨)はカメが双弓類、とりわけ恐竜や鳥類、ワニなど主竜類の仲間であることを示しています。主竜類の適応方散は中生代からなのでEunotosaurusがカメだとすると時代が合わないのです。
2018-01-16 15:03:09
Eunotosaurusの解釈などカメの起源をめぐる議論はまだまだ収束しているとは言えない状況です。きたる5月26、27日に早稲田大学で開催される「国際シンポジウム・カメの進化」では新進気鋭の研究者が一堂に会して熱い議論が繰り広げられることが予想されますので楽しみにしてください。
2018-01-16 20:07:22
皆さんの中には、私がなぜカメの化石の研究をしているのか、同じ化石なら恐竜のほうが派手で面白いのではないかと疑問に思う方も少なからずいらっしゃると思います。私も大学院で古生物学の勉強を始めた当初はまさかカメの研究をずっと続けることになるとは夢にも思いませんでした。
2018-01-17 16:45:51
私は大学院の研究テーマで先輩研究者とかぶらないということで爬虫類ならなんでもいいやという気持ちだったのですが、指導教官の亀井節夫教授の研究室に岡山県から見つかった約1600万年前のカメの化石があることからカメの研究を始めたというのが実情でした。
2018-01-17 16:58:27
私はカメについては何も知らないほとんど白紙の状態でした。亀井先生からは「カメは今も生きているのだから化石だけでなく現生種の解剖とかしてみなさい」といったアドバイスがありました。そこで京都市内のデパートでさっそくカメ(ニホンイシガメ)を買ってみたりしました。
2018-01-17 17:04:16
そのうち化石の分類をするためには、現生種の骨格をなるべく多く観察することが必要だと気付きました。そこで業者さんからカメの遺体をもらったり、大阪天王寺の池にカメを採りに行ったりして標本を集めては、骨格標本を作るようになったわけです。
2018-01-17 17:08:38
本当はカメの飼育観察もしたかったのですが、先輩研究者の中には動物嫌いの方もいて苦情を言われるので長期の飼育は断念しました。これと並行して化石の研究も大変でした。岡山県から見つかったカメの化石は長さ40センチ近くある立派な標本でしたが、甲羅の中に硬い岩が詰まった状態だったのです。
2018-01-17 17:12:57
化石カメの分類には甲羅の表面だけでなく、甲羅の中の情報が必要であることが分かってきました。化石を覆っている硬い岩を薬品(酢酸)を使って少しずつ溶かすことにしたのです。薬品に漬けっぱなしだと化石も痛んでしまうので、1日漬けては水洗いして乾燥させる、という作業を3ヶ月続けたのです。
2018-01-17 17:18:52
この薬品を使って岩から化石を取り出す方法は当時の日本で成功した例はなかったので最初は不安だらけでしたが、慎重な作業の繰り返しでついに写真のように甲羅や中に残っていた骨を見事に取り出すことに成功したのです。研究成果は日本地質学雑誌の短報として掲載されました。 pic.twitter.com/p4Hyzy7ix7
2018-01-17 17:22:29

この化石については所有者の方がいまだに手離したがらないので、新種として正式な報告ができないのがちょっと残念ですが、当時の大学院修論生だった私にとって本格的なカメの古生物学的研究に進むきっかけを作ってくれた記念すべき標本です。
2018-01-17 17:25:26