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ツイートまとめ 異世界小話~異世界召喚ものに「ネクロテック」が出るのは流石におかしくない?という話~ 中編 ひきつづきハットマンズショー 他の小話は異世界小話タグで 2112 pv 2
帽子男 @alkali_acid
まじでさあ、異世界召喚ものに「ネクロテック」が出るのは流石におかしくない?という話
帽子男 @alkali_acid
ネクロテックって知ってる?ネクロテック。 少女屍体溶接。若く美しい娘のむくろを、機械や甲冑と溶接して、兵器、家具、重機あるいは芸術として仕上げる、そういうもの。
帽子男 @alkali_acid
遠い未来に今とはちょっと価値観の変わった技師と工房が始めるかもしれない。 あるいは、どこかよく分からない異世界で少女の屍体を神の化身とあがめる宗教が、権威をもたせ、飾り立てるために改造を施すかもしれない。
帽子男 @alkali_acid
さらには、 一見ネクロテックに似ているが、ネクロテックでないもの、 一見ネクロテックと思えないが、ネクロテックであるもの、 なんかもある。 技師や工房にはそれぞれ美学があり、まるで絵画や彫刻のように評論家もあれこれもったいをつけるが、詳しくない人間にはよく分からない。
帽子男 @alkali_acid
我々門外漢にとっては、そこに少女の屍体があり、かつ機械なり甲冑なり命なくも複雑な系に溶接し、組み込んであれば、ネクロテックでいいか、となる。 まあ想像してくれ。 遠い昔に自殺した女子高生の屍体。秘薬で防腐処理を施し、長い時間を耐えるように加工した冷たい肉と骨と皮。
帽子男 @alkali_acid
一見すると未熟で華奢な四肢は、すでに分解して熱と酸と塩とそのほかすべてのすばらしいもので一部をとろかし、青銅、鋼鉄、白銀、黄金、白金と融合を果たしている。 顎は外れ、まるで獣に似たかたちになるが、あくまで表情は穏やか。双眸は優しい曇り水晶のきらめき。
帽子男 @alkali_acid
だが、繊細な人型の輪郭は、金属とじょうぶな木材でできた怪異な甲殻の中心にすっぽり収まる。甲冑と馬車を一度ばらばらにし、発条や歯車、蝶番などの仕掛けとともに組み上げ直した、不可思議なからくりの祭壇。
帽子男 @alkali_acid
下半身には、足のかわりに馬車の車輪が一、二、三、四…合計八個ほど、斜めにかたむけてぐるりと取り囲むように取り付けてあり、スカートを思わせる。さらに腰のあたりから左右に、二頭の死んだ馬の頭が突き出し、いななくように宙を仰いでいる。
帽子男 @alkali_acid
上半身には本来の一組の腕のほかに、さらに二組の甲冑の腕があるがやけに大きく、関節が人間のものより多く、指の数もそれぞれ七本ある。 奇妙奇天烈な外見。しかし忘れないでほしいのは、このネクロテック、あるいはネクロテックもどきは、異世界の僧侶が女神を模して作り上げたものだという点だ。
帽子男 @alkali_acid
異世界の僧侶が暮らす街の地下、あるいは地下らしき場所にある迷宮から掘り起こしてきた、不思議な力を持つ財宝をふんだんに使い、さらに本来は異教である東方の錬金術師の技まで借りた。 おかげでただご神体として目を引くばかりではない。殺伐たる地では重要となる、戦う力においても優れていた。
帽子男 @alkali_acid
左右の死んだ馬の首が上下すると、"疾駆の車軸"という迷宮の財宝の力によって八つの車輪が高速で回転し始め、すさまじい早さで駆け出す。車輪には出し入れ自由な棘がついていて、壁も登れるほか、魔物だろうと人間だろうと刺し、引き裂き、轢き殺す。
帽子男 @alkali_acid
おまけに少女屍体溶接物は、機械の腕を伸ばして、車輪をいくつでも取り外し、フリスビーのごとく投げつけられる。車輪は円弧を描きながら標的を粉砕し、また持ち主に戻る。あるいは矢や礫を弾く盾としても役立つ。
帽子男 @alkali_acid
「少女の屍体をご神体として崇めるなんて頭がおかしいのでは?」 などと僧侶を侮辱する不心得な衆生は、すべからくしてミンチにしてしまうのだ。聖なる理(ことわり)である。
帽子男 @alkali_acid
どんな獲物が、偉大なる女神の山車の犠牲になるべきだろうか。 愚かしくも、寺院に盗みに入ったこそ泥、あるいは調べにかこつつけて秘密を暴こうとなだれこんできた官憲、尊き教えに疑いを抱き、卑劣な裏切りを犯した悪僧。 いずれも等しく踏み潰せばよい。屍体少女溶接物は無敵なのだから。
帽子男 @alkali_acid
◆◆◆◆ 「くっそ重てぇ…迷宮の財宝にもこんな厄介なもんなかったぜ」 少女の屍体を背負った男が、寺院の地下堂を進んでいた。 「さっさと終わらせて剛零が飲みてえ」 身軽ないでたちと猫のごとくしなやかな足運びからして盗賊らしいが、誰も聞いていないのに愚痴を垂れるさまは、やや冴えない。
帽子男 @alkali_acid
隠しきれない中年の気配。元はとある街で、地下にある迷宮にもぐって財宝をあさる冒険者だったが、今は引退してひねもす酒場でくすぶり、"剛零"なる安い銘柄を愛飲するだけの人物だ。 何の因果か、街で最大の寺院からご神体をかすめてくる破目になったのだ。 「まったく隊長さんもひでえや」
帽子男 @alkali_acid
「いやしくも街を守るおまわりさん、衛士隊の隊長ともあろうもんが、慈悲ぶかいお坊さんたちの大事にしてる女神様のうまれかわりだかなんだかを…くそ、本当に重てぇな…ああ、剛零が飲みてえ」 ぐちりながらも二言目には剛零の話をする、盗賊というよりもう単なる酒屑である。
帽子男 @alkali_acid
酒屑氏は、いったん息を切らせて立ち止まると、みためよりずっしりした獲物をおろし、腰に手をあてて背をそらす。しぐさがいちいち中年である。 「うーいてて。もう年だよ俺もさあ…それにしてもなんだってこう重いかねえ」 少女屍体をためすすがめつ、やがて思いきって異郷風の服の背をはぐる。
帽子男 @alkali_acid
「うへ、なんじゃこら」 本来、なめらかな肌があるべきところは、むき出しのからくりがうまっている。脊椎も環が一つごとに金属に置き換わって、薬か熱で本来の骨と溶接してあった。 「いかれてるぜ…へ、東の錬金術師の技か。おかしな因縁だ…」 妙にしんみりした声を出してから、また服を戻す。
帽子男 @alkali_acid
続いてふところから小瓶を取り出すと、栓を抜いて中身を頭からかける。 きらめく光の粒。妖精の粉という迷宮の秘宝だ。 まとったものの身ごなしを軽やかにし、気配を隠す不思議な効能がある。貴重な品だが、警戒厳重な寺院に忍び込むには欠かせない。
帽子男 @alkali_acid
「地獄だか女神様の園だかにいらっしゃる、紅蓮刃のあねさん。あんたの遺品、大事に使わせてもらってますよ…ま、酒代にしなかった分は」 昔の冒険者仲間にだいぶ失礼な感謝の言葉を捧げて、またありがたくもない獲物を背負いなおす。 「はー…しんど…んぉ?」 耳を澄ますと、かすかに鐘の音。
帽子男 @alkali_acid
打ち方からして危急を報せる半鐘だ。 「おいおい。ちょっと気が早いぜ…ま、しょうがねえか」 つぶやくがはやいか、酒屑氏は、まるで何もかついでなどいないかのように、脱兎の勢いで駆け始めた。ちょうど夜に吹くそよ風にも似て、見張りの僧のそばを通り過ぎても、相手は気づきもしなかった。
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