日向倶楽部世界旅行編第31話「地図にない島」

那珂の過去、野分の旅立ち、トラック泊地はほんの僅かに揺れ動いた。 それはさておきブルネイ王国を満喫していた日向達は、ある日ブルネイ泊地司令部に呼び出されることとなる。
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三隈グループ @Mikuma_company

【前回の日向倶楽部】 ある人が太陽を見て言った、あんなに輝く太陽には一体何があるのだろう、と。 その人は太陽に向かった、その人は太陽の業火に灼かれたが、後悔はしなかった。 今、二人の人間が真実という太陽に向かい始めた、彼等は一体何に灼かれ、何を思うのか?

2018-01-23 21:30:28
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【前回の日向倶楽部その2】 扶桑です。 今週からまた私達のお話に戻るようですね、覚えていますか皆さん、私達は今ブルネイに居ます。 ここは良いところで、艦娘がいる事もあって居心地が良く、つい長居をしてしまいました。ですがそろそろ出発したいところですね、旅をするのが目的ですから、一箇

2018-01-23 21:31:27
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日向倶楽部 〜世界旅行編〜 第31話「地図にない島」

2018-01-23 21:31:53
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〜〜 ブルネイ泊地に滞在し観光を満喫していた日向達は、ある日司令部へと呼び出された。 「おはよう、主らとこうして顔を合わせるのも久々だな。」 扉の前で待ち受けていたのは戦艦娘武蔵、相変わらず長学ランを羽織り、サングラスをかけ、金属バットを手に携えていた。

2018-01-23 21:32:25
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「おはようございます、にして…今日は一体?」 日向が丁寧な口調で訊ねると彼女は頷く 「うむ、それに関しては我が提督を交えて話す。」 そう言って扉を叩いた 「入るぞ。」 言うが早いか大きな扉を開き、彼女は日向達を中へ招き入れた。

2018-01-23 21:33:15
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司令部の中はブルネイ泊地の絢爛な装飾とは裏腹に、無駄なものは無く極めて質素で落ち着いた部屋であった。 「なんかイメージと違うね」 「もっと金ピカだと思ってたわ」 最上と初霜はヒソヒソ話す、そう言っているとすぐ、武蔵が口を開いた。

2018-01-23 21:34:14
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「紹介しよう、このブルネイ泊地の司令、ファラ・ベント・サイード・アル・チャンドラ提督だ。」 彼女が指差す先には、黒い装束で全身を包んだ人間が座っていた。 …が、そんな事より最上と初霜は名前に困惑した 「えっと、アラブの名前ってのは確か…」 「ファラベントさん?」

2018-01-23 21:35:09
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戸惑う二人に日向は教える 「難しく考えなくても平気だ、ファラ提督と呼べば問題ない。」 「あっ、そうなんですね」 アラビア語圏は名前の付け方にローカルルールのようなものがあり、フルネームの呼び方はかなりバラツキがある。 だが名前が最初に来る、という点だけは大体が同じなのだ。

2018-01-23 21:36:03
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そんなこんなでファラ提督は立ち上がる、背が高く大柄であった。 「…貴方達が日向倶楽部ですね、武蔵から話は聞いています。」 「はっ、トラック泊地から参りました私は隊長の航空戦艦娘日向、後ろにいるのは私の仲間です。」 日向が頭を下げると、後ろにいた最上達も一礼する。

2018-01-23 21:37:05
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ファラはそんな彼等を見渡すと、三隈の存在に気付いて口を開いた 「おや、貴女は確か…ミクマの」 「まあ、存じ上げて頂けてるなんて光栄ですわ。三隈グループ専務取締役兼トラック泊地支部支部長、三隈倫子です。」 「やはりそうでしたか、遠いところをよくおいでになりました。」

2018-01-23 21:37:57
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三隈はにこにこして答える 「こちらこそ手厚い歓迎の数々に感謝の言葉もありません、王国とはこれからも良い未来を築いて行けると、お父様にお伝えしておきますわ。」 海外への投資を積極的に行うブルネイと、快進の海外進出を続ける三隈グループ、当然両者の間に繋がりはあった。

2018-01-23 21:38:48
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と、ひと段落したところで三隈が訊ねた 「ところで失礼ですけれど…ファラ提督は女性でよろしいのよね?」 「…ええ、間違いありません。」 「まあごめんなさい、やはりそうですよね。イスラム文化には疎くて、顔が見えないからつい気になってしまいましたの、申し訳ありませんわ。」

2018-01-23 21:39:42
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イスラム教徒の女性は文化圏にもよるが顔全体を覆い隠す習慣がある、ファラもそのようにしていた。 「お気になさらず、外国の方には些か見慣れぬ物でしょうから。」 「ありがとうございます、寛大な御心に感謝致しますわ。」 三隈は手を合わせて礼を述べ、にっこりと笑う。

2018-01-23 21:40:33
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そしてすぐさま口を開いた 「補給物資や丁寧なおもてなし、この度のお礼は我が社の方からしっかりさせていただきますから、良い知らせをお待ち下さいね。」 「ええ…ありがとうございます。」 「ふふっ、こちらこそ。」 彼女の柔らかな口調に、司令部はどこから穏やかな空気に包まれる

2018-01-23 21:41:23
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その流れに乗るように、三隈はやんわりと訊ねた。 「ところで…今日はどの様なご用件でしょう?」 彼女はほんのりと口角を上げて言う、ファラは目を細めたが、落ち着いた口調で応えた。 「…いえ、少し聞いていただきたいお話があるのです…武蔵。」

2018-01-23 21:42:14
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彼女が促すと武蔵は頷いて言った 「…実は最近、この近辺に深海棲艦が出現している。」 「それ倒すんです?」 「おっとそんな事は頼まない、ここにも優秀な艦娘は大勢いるからな。」 「ええ、このブルネイ泊地はそう簡単に遅れを取りません。」 ファラも武蔵に同調する。

2018-01-23 21:43:03
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「んじゃあなんでそんな話?」 鈴谷が訊くと、武蔵が答えた 「うむ、それに関わる興味深い話があるからだ、これを見てくれ。」 彼女は一枚の写真を取り出して日向達に渡した、それにはいくつかの深海棲艦と、一つの島が写っていた。 「この島に深海棲艦が?」

2018-01-23 21:43:55
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写真を見る最上達に武蔵は頷く 「ああ、連中はその島の近くに現れている。まあそれだけなら面白くもおかしくもない話だが、次はこいつを見てもらおう。」 次に彼女はタブレット端末を操作して日向達の方へ向ける、そこには赤い点々がいくつも描かれたこの近くの地図が表示されていた。

2018-01-23 21:45:07
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「これって深海棲艦の出現位置よね?」 「ああそうだ、結構広い範囲に展開している様に見えるだろう?」 「そうですね…これ全部だとしたら相当広いな…」 赤い点々は広範囲に拡がっており、これだけの範囲に陣を構えているとすればかなり厄介な状態といえるだろう。

2018-01-23 21:45:59
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「これマズいんじゃないですか?」 最上が怪訝そうな顔をして言うとファラは頷く、頷いたが、それは深刻そうなものではなかった。 「私も初めはそう思ったのです、しかし…」 彼女の言葉を武蔵が繋ぐ 「そこで戦った艦娘達はなぁ、口を揃えてこう言うんだ。」 武蔵は笑いながら言った

2018-01-23 21:46:45
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「"近くに島があった"ってな。」 その言葉を一瞬日向達は聞き流したが、すぐに顔をしかめた 「えっ待ってくださいよ、この地図見た限りじゃ島ってそんなに無いですよね…」 戸惑う最上に武蔵はニタニタと笑う 「そうだ、そんな島は地図に"ない"、でも確かに"ある"のさ。」

2018-01-23 21:47:27
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彼女はそう言って心底楽しそうに笑い、やがて日向達に訊ねた 「気にならないか?その島の事…」 「気になる」 即答する日向、地図にない島は彼女の好奇心をくすぐるのには十分すぎるものだった。 「調査は私達で行う予定でしたが、武蔵が貴女達を誘えないかと、そう言ったのです。どうでしょう?」

2018-01-23 21:48:30
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共同作戦を示すファラの言葉もあり、日向の心中は決まった。 「…良いか?」 念の為彼女は皆に確認する、おおむね賛成であったので、ブルネイ観光を締めくくる最後のスポットが確定した。 「…では我々も行かせてもらいましょう、その島に。」 日向が答えると、武蔵もファラも満足げに頷いた。

2018-01-23 21:49:35
三隈グループ @Mikuma_company

「では詳しい資料を後で渡そう、打ち合わせなども追追行うから、なるべくこの泊地に居てくれると助かる。」 「分かりました」 そんなこんなで色々決定し、日向達はひとまず司令部を後にした。 そして七人はぞろぞろと泊地を歩き、やがて各々の好きなように別れていった。

2018-01-23 21:50:25