#ダークエルフ王国見聞録 その23 ~オーガの治むる地にて~下編

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まとめ #ダークエルフ王国見聞録 その22 ~オーガの治むる地にて~上編 著者 へどばんさん pixiv版(https://www.pixiv.net/series.php?id=823771) オーク禍編(https://togetter.com/li/1133952) 5931 pv 55
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

翌朝、オーガ達の夜番の者と昼番の者が交代する声で私達は目覚めた。薄く氷の張る甕の冷水で顔を洗い、彼らの野竈を借りて朝食を作る。ダークエルフの砦で支給された、乾燥野菜や干肉を獣脂と塩で固め、麝香草で包んだものを湯に溶き、引き割り麦を炊いて粥とした #ダークエルフ王国見聞録

2018-02-01 00:15:04
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食事を終え、セラの煎じてくれた薬草の茶を飲んでいると、遠くから貝笛の音が響き渡った。次いでかすかに聞こえた野太い掛け声が次第に大きくなり、朝の冷気にも関わらず上半身が裸である二人のオーガが肩に何かを担ぎながらオーガ達の堡塁の後方、北の方角から現れた #ダークエルフ王国見聞録

2018-02-01 00:15:26
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

堡塁に詰める兵に出迎えられ、渡された水を呷る二人のオーガは、肌からは湯気を立ち上らせ、白い息を荒い息遣いで吐き出していたが、私達の姿を認めると、こちらに駆け寄ってくる。彼らの説明するところでは、彼らの部族長の命により、私達を迎えに来たそうである #ダークエルフ王国見聞録

2018-02-01 00:15:58
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彼らが担いでいるのは、長い棒の中央部に扉の付いた箱状のものが組み合わされた駕籠であり、肩に担ぐ柄と乗客が中に座る箱の表面は黒光りする塗料が塗られ、疾走する雪豹や毛犀の姿が黄金で象嵌された豪華なものであった。これは彼らの貴人が用いるものと後に聞いた #ダークエルフ王国見聞録

2018-02-01 00:16:23
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

オーガであれば一人が乗るものであるが、私とセラならば二人とも乗れるので、大角鹿は堡塁の者が面倒を見るので、ここに置いておくのがよろしかろう。二人と荷を載せた大角鹿の番より、我らの方が疾く走ることができると、駕籠者であるオーガの二人は口を揃える #ダークエルフ王国見聞録

2018-02-01 00:16:43
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「こやつらを疑う訳では無いが、いざという時を考えれば、敵地において自らの乗馬を手放すのは下策だ」 セラが私にそのように耳打ちするので、私は心遣いはありがたいが、これらの大角鹿は借り物なので、可能であれば常に傍に置いておきたいのだと彼らに伝えた #ダークエルフ王国見聞録

2018-02-01 00:17:08
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結局、駕籠には大角鹿を操れない私一人が乗り、一頭にはセラが騎乗し、もう一頭の荷物は駕籠者の片方が畚で背負うこととなった。また、事情を知るスパルガが同道すると言う。私は夜明け前に出発してこの堡塁まで来たという駕籠者の二人にしばらく休んではどうかと提案した #ダークエルフ王国見聞録

2018-02-01 00:17:41
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しかしながら、彼らは部族長の客人である我々を待たせるようなことをしては、彼らの面目が立たず、また部族長からも厳しく咎めを受けるであろうと言うので、私は朝食の片付けを出来るだけゆっくりとしてから、彼らの担ぐ駕籠に乗って堡塁を出発した #ダークエルフ王国見聞録

2018-02-01 00:18:06
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駕籠の中は、羽毛の詰められた柔らかい布団の上に毛氈が敷かれ、中央には結び目が付けられた革紐が釣り下がっていて、絹地の脇息が置かれていた。いずれもオーガの用いるものであり、脇息は私が用いるには高過ぎたが、床まで伸びる革紐には座りながら掴まることができた #ダークエルフ王国見聞録

2018-02-01 00:18:24
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彼ら“山を肩に担ぎ歩く者”の部族長が住まう集落までは大よそ五刻程を要すると言う。片手で長い杖を突きながら疾走する彼らは、セラの駆る大角鹿をしばしば振り返りながらその駆け足を緩めて追いつくのを待つほど速かったが、駕籠はほとんど揺れることがなかった #ダークエルフ王国見聞録

2018-02-01 00:19:00
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

駕籠と大角鹿の一行は山路へと差し掛かったようであり、駕籠の中に居ても傾斜を感じられた。それまで無言であった駕籠者の二人のオーガは力を込めるためであろうか、互いに声を掛けあい、数え歌のようなものを交互に歌う。それはこのようなものであった #ダークエルフ王国見聞録

2018-02-01 00:19:18
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「敵の盾を打ち破り、続く勇士の踏み越える」「盾を踏む音、幾たび鳴るか」「「一つ、二つ、三つなり」」 「敵の軍馬の首を折る」「骨の軋む音、幾たび鳴るか」「「四つ、五つ、六つなり」」 #ダークエルフ王国見聞録

2018-02-01 00:20:15
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

「大将首を討ち取って、此度の戦も大勝利」「勝鬨の音、幾たび響く」「「七つ、八つ、九つなり」」 「我ら疾く駆け、剛腕振い、天上行くは」「数多の勲上げたる戦士、それ迎えるは」「「戦乙女が十の戦列」」 #ダークエルフ王国見聞録

2018-02-01 00:20:54
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その他幾つか種類のある数え歌は、十までを歩調に併せて数え上げるものであり、その詞はいずれも戦場の武勇と、彼らの信奉する天上にあるという戦士の館に迎えられるという内容である勇ましいものであった。籠の中でそれを聞いていると、今度は坂を下る道となったようである #ダークエルフ王国見聞録

2018-02-01 00:21:18
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山路を下り終え、駆け足を緩めて後続の大角鹿をしばらく待ってから、木々の中にある平坦な道を進み続けると、担ぎ手のオーガから部族長の住まう集落へと近づいたと声を掛けられる。引き戸から顔を出すと、遠方に幾条もの煙が立ち上るのが見えた #ダークエルフ王国見聞録

2018-02-01 00:21:52
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立ち上る煙が徐々に近づいてくると、我々の進む先に尾根状に延びる岩を掘り抜いたのが見えてきた。その右側の岩肌には、門よりも高い位置が掘削されて見張り台が設けられており、皮鎧を身に付け、投槍を手にした見張りの兵と思しきオーガ達が数名立っていた #ダークエルフ王国見聞録

2018-02-03 01:24:00
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

駕籠者の二人は見張りの兵に合図を送ると、その岩の門を通り抜ける。扉のような構造物は無かったが、その門の内側には巨石が備えられており、戦となった時にはこの巨石を動かし、門を塞ぐそうである。この門を抜けると、私の目前にオーガ達の大きな集落が見えてきた #ダークエルフ王国見聞録

2018-02-03 01:24:27
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

集落は、南に向いた斜面にあって、斜面のなだらかなところに多数の家屋が見える。斜面の上部はより急になって半ば崖の様であるが、そこにも幾つかの建物が見え、また見張り台や回廊などに通じる穴が多数開いていた。これはおそらく城郭のような役割を持つものと思われた #ダークエルフ王国見聞録

2018-02-03 01:24:44
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

斜面にある家屋は、崖に近い上側にあるものほど大きく、斜面を下がるにしたがって小さくなった。一際大きな建物が崖の城と接するように存在していて、それが部族長の居館であると言う。また、斜面の中央部の脇にも大きな石造りの建物があり、それは聖堂であると聞いた #ダークエルフ王国見聞録

2018-02-03 01:25:07
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オーガ達の住居は、高く尖った円錐形の屋根を備えていたが、これは冬季の雪除けのためであって、春の雪解けまでの間建てられるのだそうだ。その雪囲いの下には、厚い毛氈で覆われた円筒の壁と円錐の屋根を有する天幕があって、その中にオーガ達は居住していた。 #ダークエルフ王国見聞録

2018-02-03 01:25:30
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この天幕は、地面に半分が埋められた巨石の上に置かれており、地中の水路を通じて冬は炎石で温められた湯を通し、夏は清水をそのまま通すことで、住居を床から温めたり冷やしたりすることができるそうである。集落から上る煙は、竈のものだけでなく、その湯気でもあった #ダークエルフ王国見聞録

2018-02-03 01:25:54
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規則正しく並んだ家屋の間を抜けて、部族長の居館の前に着くと、オーガ達の肩から駕籠が下ろされる。セラも大角鹿の手綱を引きながら、駕籠を出た私の傍に寄ってくる。すると、天幕に複数ある入り口の一つから、肩から腰にかけて幅広の飾帯を巻いた中年のオーガが出てきた #ダークエルフ王国見聞録

2018-02-03 01:26:09
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そのオーガは我々を丁重に出迎え、部族長がお会いになるが、しばらくこちらの一室で待って貰えないかと言う。その言葉に従うこととし、また部族長に酒と煙草の献上品があることを告げると、巨躯を折り畳んで礼を述べ、駕籠者の二人にそれらを運ぶように言いつけた #ダークエルフ王国見聞録

2018-02-03 01:26:29
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

控えの間と思われる部屋へと布の扉を上げて入ると、六尺ほどの背丈のオーガの女性が二人いて、角や耳に金銀や宝玉の装身具を下げ、細やかな刺繍が施されたゆったりとした衣装を身に付けた彼女達は、私とセラに毛氈を幾重にも重ねて床の上に置いたものに座るように促す #ダークエルフ王国見聞録

2018-02-03 01:26:56
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